「新しい現場が始まるので警備員を手配したい」「道路使用許可の条件で誘導員が必要になった」——建設会社・工務店・現場監督の方が「建設現場 警備」で検索すると、出てくるのは警備員の求人情報や警備会社の宣伝ページばかりで、手配する側(発注者)が知りたい「何を・いくらで・どう頼むか」がまとまった情報はほとんどありません。

この記事は、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、警備員を依頼する側の建設会社・元請・工務店向けに書いたガイドです(求職者向けの内容は含みません)。法令はe-Gov法令検索の現行条文、費用は国土交通省の公共工事設計労務単価という一次情報に基づいて解説します。

この記事でわかること

  • 建設現場で手配する警備の種類【場面別早見表】
  • 警備員の配置が必要になる4つのケース(法令・許可条件の整理)
  • 検定合格警備員(警備員A)の配置が義務になる現場とは
  • 費用の目安——国交省「公共工事設計労務単価」から読み解く単価の実態
  • 手配の流れ5ステップと、発注前チェックリスト

建設現場で手配する警備の種類|まず場面別早見表で

建設現場の警備は「交通誘導」だけではありません。警備業法第2条第1項は警備業務を1号〜4号の4区分に分けており(詳しくは警備業務の種類まるわかりを参照)、建設現場では主に次の2区分を使い分けます。

場面 手配する警備 法律上の区分 対応会社の探し方
搬出入車両の出入口誘導、片側交互通行、歩行者の動線確保 交通誘導警備 2号警備(警備業法第2条第1項第2号) 交通誘導警備に対応する警備会社一覧
夜間・休日の資材置き場や現場事務所の盗難・侵入対策 巡回警備・機械警備 1号警備(同項第1号) 施設警備に対応する会社機械警備に対応する会社
完成内覧会・地鎮祭など人が集まる催しの整理 雑踏警備 2号警備(同項第2号) 雑踏警備に対応する警備会社一覧

警察庁「令和6年における警備業の概況」によれば、令和6年(2024年)12月末現在、2号警備を実施する警備業者は8,800業者(全体の81.4%)、うち交通誘導は8,274業者(76.5%)と、警備業界でもっとも層の厚い分野です。一方で建設需要と人手不足が重なり、直前の手配が難しい状況も続いています(出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」)。

警備員の配置が必要になる4つのケース|法令と許可条件の整理

「そもそもうちの現場に警備員は必須なのか?」——配置が必要になる根拠は1つではありません。実務では次の4パターンに整理できます。

ケース1|道路使用許可の「条件」として求められる場合

道路上で工事・作業を行うときは、道路交通法第77条第1項第1号により、所轄警察署長の道路使用許可が必要です。同条第3項は、警察署長が許可にあたり「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要な条件」を付することができると定めており、この許可条件として交通誘導員(警備員)の配置が求められるケースが実務上もっとも多いパターンです(出典:道路交通法第77条(e-Gov法令検索))。許可申請時に警察署から示された条件は、そのまま警備会社に伝える必須情報になります。

ケース2|検定合格警備員の配置が法律で義務になる現場

警備業法第18条は、専門的知識・能力を要し事故時の危険が大きい種別の警備業務について、検定合格証明書の交付を受けた警備員に実施させることを警備業者に義務づけています。交通誘導警備業務でこの義務がかかるのは、警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)第2条により、次の2つの現場です。

  • 高速自動車国道・自動車専用道路で行う交通誘導警備業務:交通誘導警備業務に係る1級または2級の検定合格警備員を、業務を行う場所ごとに1人以上配置
  • 都道府県公安委員会が「道路における危険を防止するため必要」と認める場所(いわゆる検定合格警備員の配置路線。都道府県ごとに指定):同じく場所ごとに1人以上配置

(出典:警備業法第18条(e-Gov法令検索)警備員等の検定等に関する規則第2条(e-Gov法令検索)

配置路線は都道府県公安委員会ごとに異なるため、「この現場は指定路線に当たるか」を見積時に警備会社へ必ず確認してください。義務を負うのは警備業者ですが、直前に「資格者が手配できない」となれば工程に直撃します。なお、検定合格警備員には合格証明書の携帯・提示義務があり(同規則第3条)、発注者側から提示を求めることもできます。

ケース3|発注機関の仕様書・契約で定められる場合

公共工事では、発注機関の共通仕様書や特記仕様書で交通誘導警備員の配置・資格要件が定められることがあります。国土交通省の設計労務単価が「交通誘導警備員A(検定合格者)」と「交通誘導警備員B(それ以外)」を区別しているのはこのためで(後述)、設計図書でAが指定されている工区にBを配置すると契約不適合になりかねません。受注時に仕様書の警備員条項を確認しましょう。

ケース4|法的義務はなくても配置する場合

敷地内の誘導や近隣対策など、法令上の義務がなくても警備員を配置する現場は多くあります。重機と歩行者の動線が交錯する出入口、通学路に面した現場、近隣クレームが想定される現場などです。警備員の配置は事故防止の有効な手段のひとつですが、「配置すれば事故が必ず防げる」というものではなく、現場側の安全管理と組み合わせることが前提です。

費用の目安|国交省「公共工事設計労務単価」から読み解く

公的な単価データはこれだけ——令和8年3月適用の労務単価

警備員の費用について出典を示せる公的データは、国土交通省が毎年公表する公共工事設計労務単価です。令和8年3月から適用される単価(全国加重平均・1日8時間当たり)は次のとおりです。

職種 定義 全国加重平均(円/日・8時間) 前年比
交通誘導警備員A 交通誘導警備業務に係る1級・2級検定合格警備員 18,911円 +5.8%
交通誘導警備員B 交通誘導警備員A以外の交通誘導に従事する警備員 16,749円 +6.7%

出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」

「単価16,749円=支払額」ではない点に注意

この労務単価は警備員本人に支払われる賃金水準(所定労働時間内8時間当たり)を示すもので、国土交通省は「法定福利費(事業主負担分)、研修訓練等に要する費用等」や「現場管理費及び一般管理費等の諸経費」は含まれていないと明記しています。つまり、警備会社への支払額(請求単価)は労務単価より高くなるのが当然の構造です。同省は「下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為」とも注意喚起しており、労務単価ちょうどの金額で受けてくれる会社を探すのは、教育や保険を削った会社を引き当てるリスクと裏腹だと考えるべきです。

労務費ベースの試算例(あくまで目安)

想定ケース 労務費ベースの計算(全国加重平均) 労務費の目安
出入口誘導にB 1人×1日 16,749円×1人×1日 約1.7万円/日+諸経費
片側交互通行にB 2人×20日 16,749円×2人×20日 約67万円/月+諸経費
指定路線でA 1人+B 1人×1日 18,911円+16,749円 約3.6万円/日+諸経費

※上表は積算上の労務費の目安であり、実際の請求額には前述の諸経費が加算されます。また労務単価は「所定労働時間内8時間」の額のため、時間外や夜間(22時〜翌5時。労働基準法第37条第4項により25%以上の割増賃金が必要な時間帯)にかかる工事では料金が割増になるのが一般的です。地域差もあるため、正確な金額は必ず個別見積で確認してください(出典:労働基準法第37条(e-Gov法令検索))。

建設現場の警備手配の流れ|5ステップ

Step1|現場の条件を整理する

工事名・場所・工期・作業時間帯・想定人数・道路使用許可の有無と条件・指定路線該当の可能性——この情報が揃っているほど見積は早く正確になります(後述のチェックリスト参照)。

Step2|複数の警備会社に打診する(早いほど有利)

警備業界は慢性的な人手不足です。警察庁の統計では警備員数は58万7,848人(令和6年12月末現在)と横ばい圏が続いており、繁忙期の直前依頼は断られることが珍しくありません。着工の1か月以上前を目安に、2〜3社へ同時に打診しましょう。現場近くに営業所や隊員の多い地元の会社は、急な増員・欠員補充にも対応しやすい傾向があります。都道府県別の警備会社一覧から現場エリアの候補を探せます。

Step3|現地調査と警備計画・見積の比較

図面と口頭だけの見積より、現地を確認したうえでの配置提案・見積のほうが確実です。比較のポイントは金額だけでなく、①配置人数と位置の根拠、②欠員時の補充体制、③交通誘導の検定合格者の在籍状況、④損害賠償保険の内容、の4点です。提出された計画書の見方は警備計画書とはで解説しています。

Step4|契約する(書面交付は法律上の義務)

警備業法第19条により、警備会社は契約締結前に契約概要を記載した書面を、締結後に業務内容・対価・契約解除に関する事項等を記載した書面を依頼者へ交付する義務があります(電磁的方法による提供も可)。書面を出さない業者への発注は避けてください。雨天中止時の費用の扱い(キャンセル料の発生タイミング)もこの段階で必ず取り決めます。

Step5|業務開始後は「警備会社経由」で調整する

警備は労働者派遣ではなく業務委託(請負)です。労働者派遣法第4条第1項第3号により警備業務への労働者派遣は禁止されているため、現場で発注者が警備員へ直接細かく指揮命令する形は契約の建て付けに反するおそれがあります。配置変更や増員の依頼は、警備会社の隊長・管制担当を通じて行いましょう。

発注前チェックリスト|見積依頼の前に10項目

  • □ 工事の場所・工期・作業時間帯(夜間の有無)を整理した
  • □ 道路使用許可の要否と、許可条件(誘導員配置の指定)を確認した
  • □ 現場が検定合格警備員の配置路線(高速・公安委員会指定路線)に当たるか警備会社に確認した
  • □ 公共工事の場合、仕様書の警備員条項(A/Bの別・人数)を確認した
  • □ 必要な警備は交通誘導だけか、夜間の盗難対策(巡回・機械警備)も要るか検討した
  • □ 候補の警備会社の公安委員会の認定番号を確認した
  • □ 欠員時の補充体制と連絡窓口を確認した
  • □ 雨天中止・工程変更時の費用の取り決めを確認した
  • □ 損害賠償保険の有無と補償範囲の説明を受けた
  • □ 契約前後の書面交付(警備業法第19条)を受けた

警備員が手配できないときの現実的な対処

繁忙期や地方の現場では「どこに電話しても人がいない」という事態が起こり得ます。その場合の打ち手は次のとおりです。

  • 打診の範囲を広げる:1社ずつ順番に聞くのではなく、複数社へ同時に条件を伝えて確保できた会社と契約する(相見積のマナーとして、決まったら他社へ速やかに連絡を)。
  • 条件を調整する:作業時間帯をずらす、誘導計画を見直して必要人数を再検討する(道路使用許可の条件に関わる場合は警察署と要調整)。
  • 継続発注を見据えて関係を作る:単発より継続案件のほうが警備会社も人を確保しやすく、次回以降の優先度が変わります。
  • どの区分の警備を頼むべきか迷う場合は、【無料】警備依頼先診断で条件を整理してから探すと早道です。

よくある質問

Q. 警備員の手配は何日前までにすればよいですか?

A. 法律上の期限はありませんが、人手不足の現状では着工の1か月以上前の打診をおすすめします。指定路線などで検定合格者(警備員A)が必要な現場は、有資格者の頭数が限られるためさらに余裕を持ってください。

Q. 警備員1人1日いくらですか?

A. 一律の相場を断定することはできません。公的な参考水準として、令和8年3月適用の公共工事設計労務単価は交通誘導警備員B 16,749円・A 18,911円(全国加重平均・8時間)で、実際の請求額はこれに法定福利費・管理費等の諸経費が加わります。夜間・短期スポット・地域によっても変動するため、複数社の見積で比較してください。

Q. 警備員AとBはどう違うのですか?

A. 国交省の労務単価上の区分で、Aは交通誘導警備業務検定(1級・2級)の合格警備員、BはA以外の警備員です。高速道路・自動車専用道路や公安委員会の指定路線では検定合格者の配置が法律上の義務になります(警備業法第18条・検定規則第2条)。それ以外の現場はBでも法令上は問題ありません。

Q. 雨で工事が中止になったら警備料金はどうなりますか?

A. 契約の定めによります。前日夕方までの連絡なら無償、当日朝はキャンセル料発生、といった取り決めが一般的に見られますが、内容は会社ごとに異なります。警備業法第19条の交付書面(契約書面)で必ず事前に確認してください。

Q. 夜間の資材盗難対策も同じ会社に頼めますか?

A. 交通誘導(2号)と施設の巡回・機械警備(1号)は法律上の区分が異なり、会社ごとに得意分野があります。両方の認定・実績を持つ会社にまとめる方法と、分けて依頼する方法のどちらも可能です。警備業務の種類の解説で区分を整理したうえで相談するとスムーズです。

まとめ|「許可条件・指定路線・書面」の3点を押さえれば失敗しない

建設現場の警備手配は、①道路使用許可の条件(道路交通法第77条)、②検定合格警備員の配置義務の有無(警備業法第18条・検定規則第2条)、③契約書面の交付(警備業法第19条)——この3つの法令ポイントを押さえ、労務単価を物差しに複数社の見積を比較すれば、大きな失敗は避けられます。

現場のエリアと業務内容から、対応できる警備会社を探してみてください。


【出典・参考】
警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条・第18条・第19条)
警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)|e-Gov法令検索(第1条・第2条・第3条)
道路交通法(昭和35年法律第105号)|e-Gov法令検索(第77条)
労働基準法(昭和22年法律第49号)|e-Gov法令検索(第37条)
・労働者派遣法(昭和60年法律第88号)第4条第1項第3号
国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(交通誘導警備員A・Bの単価と定義、単価に含まれない経費の説明)
警察庁「令和6年における警備業の概況」(警備員数・区分別実施業者数)
※法令・統計・単価は2026年7月時点でe-Gov法令検索および各府省の公表資料と照合しています。本記事は一般的な情報提供であり、個別の案件に関する法的助言ではありません。