警備を頼もうとして、ふと迷うことがあります。「ガードマンと警備員って違うもの?」「見積の問い合わせで『ガードマンを1名』と言ったら通じる? 失礼にならない?」——呼び名ひとつですが、検索すると求人向けの仕事紹介記事が目立ち、依頼する側が知りたい「言葉の使い分けと契約上の正しい理解」は見つけにくいものです。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、発注者目線でガードマン・警備員をはじめとする呼び名を整理しました。結論はシンプルですが、「派遣」という言葉の扱いなど、契約実務に響くポイントもあわせて解説します。法令の記述はe-Gov法令検索の現行条文と照合しています。
この記事でわかること
- ガードマンと警備員は「同じ人」——法律上の正式名称は警備員(警備業法第2条第4項)
- 「ガードマン」という言葉の背景(和製英語)
- 守衛・交通誘導員・保安員など、混同しやすい呼び名の整理【一覧表】
- 「警備員を派遣して」と言ってはいけない契約上の理由(労働者派遣法第4条)
- 依頼時に呼び名より大事な「業務区分」の伝え方
結論|ガードマンと警備員に実体の違いはない。正式名称は「警備員」
まず結論から。ガードマンと警備員は、指している人に違いはありません。日本の法律に「ガードマン」という言葉は登場せず、法令上の正式名称は「警備員」です。警備業法第2条第4項は次のように定義しています。
この法律において「警備員」とは、警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事するものをいう。
つまり「警備員」とは、公安委員会の認定を受けた警備業者(警備会社)の従業者として警備業務に従事する人のこと。警察庁の解釈運用基準によれば、ここでいう「従業者」には雇用契約に基づく人のほか、雇用契約以外の契約に基づいて警備業務に従事する人も含まれます。ガードマンはその通称・俗称で、法律上の区別は存在しません。
したがって、問い合わせで「ガードマンをお願いしたい」と言ってもまったく問題なく通じます。ただし後述のとおり、呼び名よりも「どの業務区分の警備か」を伝えることのほうがはるかに重要です。
「ガードマン」は和製英語|言葉の背景
ガードマンは、英語の guard と man を組み合わせた和製英語です(出典:デジタル大辞泉「ガードマン」(コトバンク)。英語では security guard 等と表現します)。この言葉が日本で広く使われている背景には、警備業の歴史があります。
一般社団法人全国警備業協会によれば、警備業がその存在を広く認識される契機になったのは1964年の東京オリンピックにおける選手村の警備でした(出典:全国警備業協会「警備業とは?」)。警備業への注目が高まるなか、翌1965年にはテレビドラマ『ザ・ガードマン』(当初の題名は『東京警備指令 ザ・ガードマン』)の放映が始まり、6年9か月にわたる人気番組になりました(出典:J-CAST BOOKウォッチ「『ザ・ガードマン』と『東京五輪』、こんなにも深い関係」)。
その後1972年に警備業法が制定され、法律上は「警備員」という用語で定義されました。現在、警備業は業者数1万社超・警備員約59万人を擁する産業に成長しています(出典:前掲・全国警備業協会。警察庁「令和7年における警備業の概況」では令和7年12月末現在で1万949業者・59万6,985人)。
法律上の「警備員」の3つの特徴|依頼前に知っておく基礎
警備業法は、警備員について発注者も知っておくべきルールをいくつか定めています。
1. 18歳未満は警備員になれない
警備業法第14条により、18歳未満の者などは警備員となってはならず(第1項)、警備業者がこれらの者を警備業務に従事させることも禁止されています(第2項)。
2. 教育が義務づけられている
警備業者は、警備員に対する教育と、必要な指導・監督を行う義務を負います(警備業法第21条第2項)。アルバイト(臨時の警備員)も対象で、新たに警備業務に従事させようとする警備員には、原則として所定の時間数以上の教育を行う必要があります(警備業法施行規則第38条。検定合格者などは一部が免除・短縮されます)。「教育がきちんとした会社か」は警備会社選びの重要な軸です。
3. 特別な法的権限はない
警備業法第15条は、警備業者・警備員が「この法律により特別に権限を与えられているものでないこと」に留意し、他人の権利・自由を侵害してはならないと定めています。警備員(ガードマン)は警察官ではなく、一般人と同じ範囲でしか行動できません(現行犯逮捕や正当防衛など、一般人にも認められる行為はできます)。「ガードマンを置けばトラブルを必ず防げる」わけではない点は、発注者側も理解しておきましょう。
混同しやすい呼び名の整理【一覧表】
実務では「ガードマン」以外にもさまざまな呼び名が飛び交います。契約上の位置づけの違いで整理すると次のとおりです。
| 呼び名 | 法律上の位置づけ | 補足 |
|---|---|---|
| 警備員 | 警備業法第2条第4項の正式名称 | 警備業者の従業者で警備業務に従事する人 |
| ガードマン | 法令上の定義なし(通称) | 警備員を指す和製英語。使っても問題なく通じる |
| 交通誘導員・誘導員 | 通称 | 2号警備業務(交通誘導警備)に従事する警備員の呼び名 |
| 雑踏警備員・イベント警備員 | 通称 | 2号警備業務(雑踏警備)に従事する警備員の呼び名 |
| 保安員 | 通称 | 店舗で万引き等を警戒する1号警備(保安警備)に従事する警備員の呼び名 |
| 守衛 | 警備業法上の警備員ではない場合がある | 施設の所有者・企業が自社で直接雇用して自社施設を守らせる場合、「他人の需要に応じて」行う業務ではないため警備業法の適用外(同法第2条第1項柱書)。警備会社に委託して配置される場合は警備員。ビル管理会社などが他社の施設で契約に基づいて守衛業務を行う場合は、警備業務に当たり得る |
| セキュリティスタッフ | 通称 | 商業施設・イベント等での対外的な呼称として使われる |
ポイントは「守衛」だけ毛色が違うことです。自社雇用の守衛・保安要員は警備業法の規制(認定・教育義務・検定など)の枠外にあります。自社で警備してよい範囲は自主警備とは|自社スタッフで警備してよい範囲と依頼すべき境界、自社で雇うか委託するかの比較は警備員を自社で雇う?委託する?で整理しています。
「警備員を派遣してほしい」と言ってもいい?|契約形態の重要な注意点
日常会話で「ガードマンを派遣してもらう」という言い方をよく耳にしますが、契約の実態として押さえておきたい重要なルールがあります。労働者派遣法第4条第1項第3号により、警備業務への労働者派遣は禁止されています(出典:労働者派遣法第4条(e-Gov法令検索))。
つまり「警備員の派遣契約」は法律上存在せず、警備を頼むときの契約は警備会社への業務委託(請負)契約です。この違いは言葉遊びではなく、現場運用に直結します。
- 指揮命令は警備会社が行う:派遣と違い、発注者が警備員一人ひとりに直接細かく指揮命令する建て付けではありません。業務内容の指示・変更は、警備会社(隊長・管制担当)を通じて行うのが原則です。
- 問い合わせの言葉としては気にしすぎなくてOK:「警備員を派遣してほしい」と口頭で言っても意図は通じますし、失礼でもありません。ただし、まっとうな警備会社であれば契約書は「警備業務委託契約」になります。逆に「派遣契約」として警備員を出そうとする業者がいたら要注意です。
- 契約時は書面を確認:警備業法第19条により、警備会社は契約を締結するまでに概要書面を、締結後は遅滞なく業務内容・対価等を記載した書面を交付する義務があります(依頼者の承諾があれば電子メール等の電磁的方法でも可。同条第3項)。契約形態と業務範囲はここで確認できます。
依頼時は呼び名より「区分」で伝える
警備会社への問い合わせで大切なのは、ガードマン・警備員どちらで呼ぶかではなく、依頼したい業務がどの区分かを伝えることです。警備業務は警備業法第2条第1項で4区分に分かれており、区分によって対応できる会社・必要な資格者・料金が変わります。
- 建物・施設を守ってほしい → 1号警備(施設警備)
- 工事現場・駐車場で車や人を誘導してほしい → 2号警備(交通誘導警備)
- 祭り・イベントの混雑を整理してほしい → 2号警備(雑踏警備)
- 現金・貴重品の運搬を守ってほしい → 3号警備(貴重品運搬警備)
- 人の身辺を守ってほしい → 4号警備(身辺警備)
「〇〇(場所)で、△△(日時・期間)、□□をしてほしい」と伝えれば、区分名が分からなくても警備会社側で整理してくれます。区分の詳しい解説は警備業務の種類まるわかり|1号〜4号を発注者向けに解説をご覧ください。
よくある質問
Q. 問い合わせで「ガードマン」と言うのは失礼ですか?
A. 失礼ではありませんし、問題なく通じます。警備業界の公式な文書では「警備員」が使われますが、発注者が通称で呼んでも、意図は問題なく伝わります。
Q. 守衛さんとガードマンはどう違いますか?
A. 施設が自社で直接雇用している守衛は、「他人の需要に応じて」行う業務ではないため警備業法上の警備員には当たりません(同法第2条第1項)。警備会社と契約して配置される人は警備員です。なお、ビル管理会社などが他社の施設で契約に基づいて守衛業務を行う場合は「他人の需要に応じて」行うものとして警備業務に当たり得ます。見た目は似ていても、教育義務や検定などの法規制の適用が異なります。
Q. ガードマンには資格が必要ですか?
A. 警備員になること自体に資格試験はありません(18歳以上などの要件と法定教育はあります。警備業法第14条・第21条)。ただし、高速自動車国道・自動車専用道路や公安委員会が必要と認める道路での交通誘導、雑踏警備、空港の施設警備など、検定合格警備員の配置が法律上義務になる現場があります(同法第18条)。詳しくは検定合格警備員とは|資格の種類と発注時の指定方法で解説しています。
Q. 女性の警備員(ガードマン)もいますか?
A. います。警察庁「令和7年における警備業の概況」によれば、警備員59万6,985人のうち女性は4万5,304人(7.6%)です(令和7年12月末現在)。施設の女性用エリアの巡回やイベント対応などで、女性警備員の配置を相談できる会社もあります。
まとめ|呼び名は自由、契約は「警備業務委託」
ガードマンと警備員は同じ人を指し、法律上の正式名称は「警備員」(警備業法第2条第4項)、ガードマンは和製英語の通称です。依頼にあたって覚えておきたいのは、①警備員に特別な権限はないこと(同法第15条)、②「派遣」ではなく業務委託契約であること(労働者派遣法第4条第1項第3号)、③呼び名より業務の区分と条件を伝えることが大事——の3点です。
どの区分の警備を頼むべきか迷ったら、まず診断で条件を整理してみてください。
【出典・参考】
・警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条・第14条・第15条・第18条・第19条・第21条)
・警備業法施行規則(昭和58年総理府令第1号)|e-Gov法令検索(第38条)
・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)|e-Gov法令検索(第4条第1項第3号)
・一般社団法人全国警備業協会「警備業とは?」(警備業の歴史・産業規模)
・J-CAST BOOKウォッチ「『ザ・ガードマン』と『東京五輪』、こんなにも深い関係」(ドラマ『ザ・ガードマン』と東京五輪)
・デジタル大辞泉「ガードマン」(コトバンク)(和製英語)
・警察庁「警備業法等の解釈運用基準について(通達)」令和6年6月27日 丙生企発第240号(「他人の需要に応じて行う」「従業者」の解釈)
・警察庁「令和7年における警備業の概況」(警備業者数・警備員数・女性警備員数)
※法令・統計は2026年10月時点でe-Gov法令検索および各公表資料と照合しています。本記事は一般的な情報提供であり、個別の案件に関する法的助言ではありません。
