「料金が上がったのに品質が伴わない」「欠員や遅刻が続く」「担当者と連絡がつきにくい」——いま契約している警備会社への不満から、別の警備会社への変更(乗り換え)を考える施設管理者・建設会社・イベント主催者の方は少なくありません。
ところが「警備会社 変更」と検索すると、出てくるのは警備業者側の行政手続(役員変更届など)の情報ばかりで、依頼する側がどう乗り換えればよいかをまとめた情報はほとんどありません。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、発注者の目線で警備会社変更の手順を5ステップに整理しました。切り替え時に警備の空白期間を作らないための段取りと、引き継ぎで漏れやすい項目のチェックリストも用意しています。
この記事でわかること
- 変更に踏み切る前に確認したいこと(まず改善要求が先の理由)
- 警備会社変更の標準スケジュール【一覧表】
- 解約→選定→引き継ぎ→切替の5ステップ
- 引き継ぎで漏れやすい項目チェックリスト(鍵・暗証番号・警備計画など)
- 費用面・機械警備の場合の注意点
変更の前に|まず「改善要求」を試すべき理由
不満があってもすぐに解約通知を出すのは得策ではありません。理由は3つあります。
- 切り替えには手間とコストがかかる:新会社の選定・現地調査・引き継ぎには通常1〜3か月程度を見込む必要があり、契約内容によっては解約に伴う費用が発生する場合もあります。
- 改善で解決するケースがある:隊員の交代や巡回ルートの見直しなど、運用レベルの不満は現行会社への申し入れで解決することがあります。不満点を日時・事実ベースで記録し、書面(メール可)で改善を求めましょう。
- 「比較の物差し」ができる:改善要求への対応スピードと誠実さは、現行会社を続けるか変えるかの判断材料そのものです。対応が不誠実であれば、自信を持って変更に進めます。
改善要求をしても状況が変わらない、あるいは値上げ幅や対応にどうしても納得できない——そうなってから変更に着手しても遅くありません。以降は、変更を決めた後の実務です。
警備会社変更の全体像|標準スケジュール
人的警備(施設常駐・巡回・交通誘導など)の場合の目安です。契約内容や施設の規模によって前後します。
| 時期の目安 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 3か月前〜 | 現行契約書の確認 | 解約予告期間・解約に関する条項・契約期間(自動更新の有無)を確認 |
| 2〜3か月前 | 新会社の情報収集・相見積もり | 2〜3社に現地調査を依頼し、警備計画と見積を比較。認定番号も確認 |
| 1〜2か月前 | 新会社と契約・現行会社へ解約通知 | 新会社の受託が確定してから解約通知(順番が重要)。通知は書面で |
| 2週間〜1か月前 | 引き継ぎ | 鍵・警備計画・緊急連絡網など(後述のチェックリスト参照) |
| 切替日 | 旧会社の業務終了・新会社の業務開始 | 空白時間を作らない。可能なら立ち会い、暗証番号等は切替日に変更 |
| 切替後1か月 | 新体制の検証 | 報告書・巡回記録を確認し、警備計画とのずれを早期に是正 |
警備会社を変更する5ステップ
Step1|現行契約書の「解約条項」を確認する
最初にやることは、新会社探しではなく手元の契約書面の確認です。確認するのは次の3点です。
- 解約予告期間:「解約の◯か月前までに書面で通知」といった定めが一般的です。この期間が切替スケジュール全体を決めます。
- 契約期間と自動更新:契約満了のタイミングに合わせて切り替えられれば、中途解約の論点自体を避けられます。
- 中途解約時の費用に関する条項:中途解約の場合の違約金・精算方法の定めがあるか確認します。金額や有無は契約によって異なるため、必ず自社の契約書で確認してください。
なお、警備業法第19条第2項により、警備会社は契約締結時に警備業務の内容・対価・契約の解除に関する事項等を記載した書面を依頼者に交付する義務があります(出典:警備業法第19条(e-Gov法令検索))。契約書が見当たらない場合は、現行会社に交付書面の再確認を求めましょう。
Step2|新しい警備会社を選ぶ(相見積もり)
解約予告期間を把握したら、並行して新会社の選定を進めます。乗り換えの場合は、初回発注と違って「現行体制の不満点」という明確な比較軸があるのが強みです。初回発注時の一般的な段取りは警備会社への依頼の流れで解説しています。
- 2〜3社に現地調査を依頼する:図面や口頭だけで出てくる見積より、現地を見たうえでの警備計画・見積のほうが確実です。現地調査への姿勢自体が会社の質の判断材料になります。
- 不満点を最初に伝える:「欠員時の補充体制」「報告の頻度と形式」「夜間の連絡窓口」など、現行会社への不満をそのまま要件として提示し、どう解決するかを提案させましょう。
- 認定番号を確認する:警備業は都道府県公安委員会の認定制です(警備業法第4条・認定の有効期間は5年=同法第5条第4項)。「〇〇県公安委員会認定 第△△号」の表示を必ず確認してください。
- 金額だけで選ばない:警備業界は人手不足が続いており、極端に安い見積は教育・補充体制のコストを削っている可能性があります。警備計画の中身と価格をセットで比較しましょう。
Step3|解約を通知する(順番に注意)
もっとも重要なのは順番です。新会社の受託が確実になってから、現行会社へ解約通知を出してください。先に解約してしまうと、新会社の手配が間に合わなかった場合に警備の空白期間が生まれます。とくに近年は警備員の確保が難しく、「頼めばすぐ来てもらえる」とは限りません。
- 解約通知は書面で行い、控えを保管します(契約書指定の様式・宛先があればそれに従います)。
- 解約理由は詳細に述べる義務はありませんが、感情的な対立は引き継ぎの協力を得にくくします。事務的・円満に進めるのが実利的です。
- 最終業務日と精算方法(日割りの有無など)を書面またはメールで確認しておきます。
Step4|新旧会社の引き継ぎを段取りする
警備の引き継ぎは、不動産管理の変更などと違い旧会社→新会社へ直接引き継がれる慣行が確立していません。発注者が間に立って、次の3点を段取りする必要があります。
- 貸与物の返却:鍵・カードキー・入館証・制服着用者用の駐車許可証など、旧会社への貸与物をリスト化し、最終日に一括返却を受けます。
- 情報の引き継ぎ:警備計画書・巡回ルート・緊急連絡網・過去のトラブル記録など。旧会社の警備計画書は同社のノウハウを含むためそのまま渡せない場合がありますが、発注者自身が把握している運用ルール(開閉時間、立入制限区域、過去のトラブル箇所など)を要件書として新会社に渡すだけでも立ち上がりが大きく変わります。
- 新会社の準備期間の確保:新会社は業務開始までに現地調査・警備計画書の作成・隊員の教育と配置計画を行います。引き継ぎ期間は最低でも2週間、規模の大きい施設では1か月程度を見込みましょう。
Step5|切替日を迎える(空白を作らない)
- 「旧会社の最終業務終了時刻」と「新会社の業務開始時刻」を連続させるのが原則です。例えば月末24時まで旧会社、翌月1日0時から新会社、と時刻単位で揃えます。
- 可能であれば切替日に発注者側の担当者が立ち会い、貸与物の返却・受け渡しを確認します。
- 暗証番号・パスワード類は切替日に変更します(旧会社に悪意がなくても、情報管理の原則として実施すべき事項です)。
- 切替後1か月は報告書や巡回記録を通常より丁寧に確認し、警備計画とのずれを早期に是正します。
引き継ぎチェックリスト|漏れやすい12項目
切替時にそのまま使えるチェックリストです。該当しない項目は読み飛ばしてください。
- □ 鍵・マスターキーの返却(本数を貸与時の記録と突合)
- □ カードキー・入館証の返却と権限の無効化
- □ 警備システム・金庫等の暗証番号の変更
- □ 防災センター・警備室の備品の区別(施設所有品と旧会社持込品の仕分け)
- □ 緊急連絡網の更新(新会社の連絡先を自社・テナント・関係先に周知)
- □ 警察・消防への届出や連絡先に警備会社名が入っている場合の更新
- □ 巡回ルート・開閉時間・立入制限区域など運用ルールの文書化と新会社への提供
- □ 過去のトラブル・要注意事項の共有(不審者情報、事故履歴など)
- □ テナント・従業員への切替日周知(「見慣れない制服の警備員」への問い合わせ防止)
- □ 旧会社発行の報告書・記録類の保管(契約期間中の記録は受け取っておく)
- □ 最終月の精算条件の確認(日割り・立替金など)
- □ 機械警備がある場合:機器の撤去日程と原状回復の範囲(下記参照)
機械警備の乗り換えは注意点が別にある
センサーや通報装置を使う機械警備(警備業法第2条第5項に定める、機械装置を使った施設警備)を切り替える場合は、人的警備とは別の論点が加わります。
- 機器の所有区分:レンタル方式なら解約時に撤去されます。撤去工事の日程と、配線跡などの原状回復の扱いを事前に確認しましょう。
- 契約期間の縛り:機械警備は機器設置コストの回収を前提に契約期間が長めに設定されていることがあり、中途解約の条件は契約書での確認が必須です。
- 監視の空白:旧機器の撤去と新機器の設置の間に監視の空白が生じないよう、設置→切替→撤去の順で日程を組むのが基本です。
機械警備特有の手順の詳細は、別記事で解説予定です。
費用面で確認しておきたい3点
- 中途解約に伴う費用:有無・金額は契約によって異なります。一般的な相場として断定できる数字はないため、必ず自社の契約書(警備業法第19条の交付書面)で確認してください。
- 新会社の初期費用:警備計画の作成や機器設置に費用がかかる場合があります。見積の内訳で確認しましょう。
- 切替月の二重払い:引き継ぎ期間の設定によっては、旧・新両社への支払いが重なる期間が生じ得ます。トータルの切替コストで比較検討するのが現実的です。
よくある質問
Q. 契約期間の途中でも警備会社を変更できますか?
A. 契約書の解約条項によります。中途解約の可否・予告期間・費用の定めを確認してください。条項の解釈に不安がある場合や高額な違約金を求められた場合は、弁護士など専門家への相談をおすすめします。
Q. 変更にはどれくらいの期間がかかりますか?
A. 解約予告期間(契約によりますが1〜3か月程度の定めが多く見られます)と、新会社の準備期間(現地調査〜警備計画作成〜隊員配置で2週間〜1か月程度)が目安です。全体では2〜3か月程度を見込んでおくと余裕を持って進められます。
Q. 旧会社から新会社へ直接引き継ぎをしてもらえますか?
A. 会社同士の直接引き継ぎは一般的な慣行ではなく、警備計画書などは各社のノウハウを含むため引き渡されないことが普通です。発注者が運用ルールや注意事項を整理して新会社へ伝える形が現実的です。
Q. 解約を伝えたら嫌がらせや手抜きをされないか不安です。
A. 警備業者は公安委員会の認定を受けて営業しており(警備業法第4条)、契約期間中の業務は最後まで契約に基づいて履行される必要があります。万一、契約不履行にあたる状態が生じた場合は、事実を記録したうえで契約に基づいて対応を求めてください。だからこそ、解約は感情的にならず事務的・円満に進めることが実利的です。
まとめ|「新会社の確保」が先、「解約」は後
警備会社の変更は、①契約書の解約条項の確認 → ②新会社の選定・相見積もり → ③解約通知 → ④引き継ぎ → ⑤切替日、の5ステップで進めます。鉄則は新会社の受託を確定させてから解約すること、そして切替日に警備の空白と情報管理の穴(鍵・暗証番号)を残さないことです。
乗り換え先の候補探しには、地域と業務内容で警備会社を絞り込める当サイトをご活用ください。
【出典・参考】
・警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条第5項・第4条・第5条第4項・第19条)
※法令は2026年7月時点でe-Gov法令検索の現行条文と照合しています。解約条件・違約金等は個別の契約によって異なります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の契約に関する法的助言ではありません。重要な判断の際は契約書の確認と専門家への相談をおすすめします。
