「夜間の共用部で迷惑行為が続いている」「駐輪場のいたずらや不審者の目撃情報が増えた」——そんなとき管理組合の理事会で候補に挙がるのがマンションの巡回警備です。ところが調べてみると、管理員の「巡回管理」と混ざった情報や、肝心の費用にまったく触れない記事ばかりで、理事会に出せる材料が集まらないのが実情です。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、管理組合・賃貸オーナーの目線で、巡回警備の中身・費用の考え方・依頼の手順を整理しました。法令はe-Gov法令検索の現行条文、費用は出典を示せる公的単価を基礎に「目安」として解説します。
この記事でわかること
- 巡回警備とは何か——管理員の「巡回管理」との違い
- 常駐・巡回・機械警備の違い【比較表】と使い分け
- 費用の目安と料金の決まり方(公的単価ベースの試算つき)
- 管理会社経由で頼むか、管理組合が直接契約するか【比較表】
- 理事会での進め方と、警備会社選びのチェックポイント
マンションの巡回警備とは|「巡回管理」と混同しない
巡回警備は、警備業法第2条第1項第1号が定める1号警備業務(施設警備)の一形態で、公安委員会の認定を受けた警備会社の警備員が、契約で決めた頻度・時間帯にマンションを訪れ、共用部の異常の有無を点検する業務です(出典:警備業法第2条(e-Gov法令検索))。警察庁「令和6年における警備業の概況」によれば、巡回業務を実施する警備業者は全国に2,875業者(警備業者全体の26.6%)あります(令和6年12月末現在。出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」)。
注意したいのは、賃貸情報などに出てくる「巡回管理」は別物だという点です。巡回管理は管理員が週数回訪れて清掃・点検・受付などの管理業務を行う形態を指し、防犯を目的とした警備業務ではありません。「人が定期的に来る」点は似ていますが、盗難等の事故の発生を警戒・防止する警備業務を、他人の需要に応じて業として行えるのは、公安委員会の認定を受けた警備業者だけです(警備業法第2条・第4条)。理事会で検討する際は、いま契約している管理員業務と何が違うのかを最初に区別しておくと議論が噛み合います。
巡回警備で依頼できる業務の例
- 夜間・深夜の共用部(エントランス・廊下・階段・屋上出入口)の巡回と施錠確認
- 駐車場・駐輪場・ゴミ置き場など、いたずらや無断投棄が起きやすい箇所の重点確認
- 不審者・不審物を発見した際の対応と警察への通報、管理組合への報告
- 巡回結果の報告書(日報・月報)の提出
巡回警備は「その時間にいない時間帯」が必ず生じる方式です。迷惑行為や犯罪を確実に防げると保証するものではなく、警備員が定期的に来ているという抑止効果と、異常の早期発見を狙う位置づけだと理解しておきましょう。
常駐・巡回・機械警備の違い【比較表】
マンションの防犯体制は、巡回警備単独とは限りません。3方式の特徴を比べたうえで、組み合わせを検討するのが現実的です。
| 方式 | 仕組み | 強み | 弱み | 費用感 |
|---|---|---|---|---|
| 常駐警備 | 警備員がマンションに常駐(管理員とは別) | 即時対応・受付対応が可能 | 人件費が最も大きい | 高(人数×時間分の人件費) |
| 巡回警備 | 決めた頻度・時間帯に警備員が巡回 | 常駐よりコストを抑え「人の目」を入れられる | 巡回していない時間帯は空白になる | 中(回数・時間帯で調整可能) |
| 機械警備 | センサー等で監視し、異常時に警備員が駆けつける(警備業法第2条第5項) | 24時間監視・月額を抑えやすい | 異常検知後の到着まで時間差がある | 低〜中(初期費用+月額) |
機械警備の対象施設数は342万3,470施設(令和6年12月末現在・前年比5.9%増)と拡大が続いており、「共用部の機械警備+週数回の巡回警備」のように機械と人を組み合わせる設計は、コストと安心感のバランスを取りやすい選択肢です(出典:前掲・警察庁「令和6年における警備業の概況」)。方式選びに迷う場合は【無料】警備依頼先診断で条件を整理できます。
費用の目安と料金の決まり方|「回数×時間帯×滞在時間」
料金はこの3要素で決まる
巡回警備の料金体系は会社ごとに異なりますが、基本の構造は共通です(マンション以外も含めた目安は巡回警備の費用相場で解説しています)。
- 巡回の回数:週何回・1晩に何回か(毎日1回と週2回では単純に数倍の差になります)
- 時間帯:深夜帯(22時〜翌5時)は、労働基準法第37条第4項が25%以上の割増賃金を義務づける時間帯のため、料金も高くなるのが一般的です(出典:労働基準法第37条(e-Gov法令検索))
- 1回あたりの滞在時間と建物規模:棟数・階数・確認箇所の多さで1巡回の所要時間が変わります
公的単価を基礎にした机上の試算(目安)
マンション巡回警備そのものの公的な料金統計は存在しません。そこで、警備員の人件費水準を示す公的データである国土交通省「公共工事設計労務単価」(令和8年3月適用)を物差しにすると、警備員(交通誘導警備員B)の全国加重平均は1日8時間当たり16,749円=時間換算で約2,100円です(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。これは職種の異なる交通誘導の単価であり、かつ法定福利費(事業主負担分)や会社の管理費等は含まれない数字ですが、「警備員1人を1時間動かす労務費の水準感」の参考にはなります。
この水準を前提に、移動時間を含め1巡回に1時間程度かかると仮定すると、1巡回あたりの労務費はおおむね2,000円台からで、実際の料金はこれに諸経費・深夜割増が乗る——つまり1巡回数千円規模が出発点、というのが編集部の試算です。たとえば深夜帯に週2回(月8〜9回)の巡回なら、労務費ベースだけで月2万円前後+諸経費という計算になります。
ただし、これはあくまで机上の試算です。実際には最低受託料金の設定、営業所からの距離、報告書の仕様、複数棟の一括契約などで金額は大きく変わります。断定できる相場はないため、同じ条件を伝えて2〜3社から見積を取り、内訳で比較することを強くおすすめします。
管理会社経由か、管理組合の直接契約か【比較表】
分譲マンションでは、警備を管理会社経由(管理委託契約への追加・再委託)で頼む方法と、管理組合が警備会社と直接契約する方法があります。
| 管理会社経由 | 管理組合の直接契約 | |
|---|---|---|
| 窓口 | 管理会社に一本化できて楽 | 警備会社と直接やり取りする手間が増える |
| 費用の透明性 | 再委託の中間コストが乗る場合があり、内訳が見えにくいことも | 警備会社の見積がそのまま見える |
| 仕様の自由度 | 管理会社の提携先・標準仕様に沿いがち | 複数社を比較して仕様から設計できる |
| 責任関係 | 管理委託契約の中で整理される | 警備業法第19条の書面を組合が直接受け取り確認できる |
どちらが正解ということはありません。ただ、費用の見直しが目的なら、直接契約の見積を一度取ってみる価値はあります。管理会社経由の現行金額と比較するだけでも、適正水準の判断材料になります。なお、警備会社は契約締結前に契約概要の書面を、締結後に業務内容・対価・解除条件等を記載した書面を依頼者に交付する義務があり(警備業法第19条)、直接契約ならこの書面を理事会で直接確認できます。
依頼の流れ|理事会での進め方6ステップ
- 課題の整理:いつ・どこで・何が起きているか(時間帯・場所・頻度)を記録し、巡回してほしい重点箇所を洗い出す
- 方式の仮決め:常駐・巡回・機械警備のどれか、組み合わせるか(前掲の比較表を理事会資料に)
- 相見積:同じ条件(回数・時間帯・重点箇所・報告書の要否)で2〜3社に見積を依頼。都道府県別の警備会社一覧から候補を探せます
- 現地調査:候補社に建物を実際に見てもらい、巡回ルート・所要時間の提案を受ける
- 決議と契約:管理規約に沿って理事会・総会で決議し、警備業法第19条の書面を確認のうえ契約。公安委員会の認定番号の確認もこの段階で必ず行う
- 開始後の検証:巡回報告書を毎月確認し、巡回時間帯・重点箇所を実態に合わせて調整する
警備会社選びのチェックポイント
- □ 公安委員会の認定番号(標識)を掲示しているか(確認方法はこちら)
- □ 1号警備(施設・巡回)の実績があるか(交通誘導専業の会社もあります)
- □ 巡回報告書のサンプルを見せてもらえるか(報告の質は業務の質を映します)
- □ 異常発見時の対応フロー(警察・理事長・管理会社への連絡順序)が明確か
- □ 損害賠償保険の有無と補償範囲の説明があるか
- □ 契約前後の書面交付(警備業法第19条)があるか
すでに警備会社と契約していて品質や料金に不満がある場合は、いきなり解約せず、警備会社の変更・乗り換え手順で解説している「改善要求→比較→切替」の順で進めるのが安全です。
よくある質問
Q. 夜間だけ・週2回だけ、といった頼み方はできますか?
A. できます。巡回警備は回数・時間帯を絞れるのが最大の特徴で、「金・土の深夜だけ」「ゴミ収集日の早朝だけ」といった設計も可能です。ただし会社ごとに最低受託条件があるため、見積時に確認してください。
Q. 管理員(管理人)がいるのに警備は必要ですか?
A. 役割が異なります。管理員の業務は受付・清掃・点検などの管理業務で、防犯を目的とした警備業務ではありません。管理員が不在になる夜間・深夜の防犯を補うのが巡回警備や機械警備の役割です。必要かどうかは、起きている問題の時間帯と場所から判断しましょう。
Q. 機械警備とどちらを選ぶべきですか?
A. 一概には言えません。24時間の監視と費用を重視するなら機械警備、現に起きている迷惑行為への抑止として「人の目」を見せたいなら巡回警備が向きます。共用部は機械警備、問題の多い時間帯だけ巡回を追加する併用も一般的です。
Q. 巡回の時間は毎回同じですか?
A. 契約によります。防犯上は毎回同じ時刻より、時間帯の幅の中でランダムに巡回するほうが望ましいとされ、多くの会社が対応しています。見積時に「時刻固定かランダムか」を確認してください。
まとめ|「回数×時間帯」で設計し、複数社の見積で適正価格を掴む
マンションの巡回警備は、①管理員の巡回管理とは別物の、警備業の認定業者による1号警備業務であること、②料金は「回数×時間帯×滞在時間」で決まり、深夜は割増になること、③管理会社経由と直接契約で費用の見え方が変わること——この3点を押さえれば、理事会での検討は大きく前に進みます。公的単価から導ける労務費の水準を物差しに、同条件の相見積で比較してください。
【出典・参考】
・警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条第1項・第5項・第19条)
・労働基準法(昭和22年法律第49号)|e-Gov法令検索(第37条第4項)
・警察庁「令和6年における警備業の概況」(巡回業務実施業者数・機械警備対象施設数)
・国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(警備員の労務費水準の参考として引用)
※法令・統計・単価は2026年7月時点でe-Gov法令検索および各府省の公表資料と照合しています。費用の試算は編集部による机上の目安であり、実際の料金は建物の条件・地域・契約内容によって異なります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の契約に関する助言ではありません。
