「来週から工事が始まるのに、交通誘導の警備をまだ手配していない」「イベントの日程は決まったが、警備会社にいつ声をかければ間に合うのか分からない」——発注者からよく聞かれるのが、この警備手配のタイミングの悩みです。早すぎて損はないと分かっていても、他の段取りに追われて後回しになりがちなのが警備です。

ところが警備の手配は、「電話一本で明日には人が来る」とは限りません。警備会社の側には現地調査・警備計画の作成・人員の確保・教育という工程があり、交通誘導なら道路使用許可の日数とも連動します。繁忙期には人員の取り合いも起きます。ここを知らずに直前で動くと、割増になったり、そもそも受けてもらえなかったりします。

この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、依頼種別ごとの推奨リードタイム逆算スケジュールのチェックリストを用意しました。法令の記述はe-Gov法令検索の現行条文、統計は警察庁の公表資料と照合しています。なお、警備は「必ず手配できる」「必ず間に合う」と保証できる性質のものではないため、本記事の日数はいずれも余裕をもった目安として示します。

この記事でわかること

  • 依頼種別(工事/イベント/施設常駐/スポット)別の推奨リードタイム目安【一覧表】
  • リードタイムを決める4つの要因(標準フロー・道路使用許可・繁忙期・検定合格警備員)
  • 道路使用許可(道路交通法第77条)が交通誘導の手配日数に与える影響
  • 緊急・直前手配の現実(受託不可・割増のリスクと、人手不足という背景)
  • 早く動くほど得をする理由と、逆算スケジュールのチェックリスト

結論|依頼種別ごとの推奨リードタイム目安

まず全体像です。下表は、現地調査から人員確保までの各工程にかかる時間を逆算した編集部の目安です。公的な基準ではなく、会社・地域・時期・現場の規模によって前後します。特に繁忙期は、下限側ではなく上限側で見積もっておくと安全です。

依頼種別 推奨リードタイム(目安) 時間がかかる主な理由
工事の交通誘導(建設・道路・電気・ガス等) 2〜3週間前〜(大規模・長期は1か月前〜) 道路使用許可の日数、現地調査、必要人数の確保
イベント警備(雑踏・駐車場整理・祭り等) 1〜2か月前〜(大型・週末集中は3か月前〜) 大人数の確保、検定合格警備員、警備計画の作成
施設の常駐警備(継続契約) 1〜2か月前 シフト構築、教育、制服・機材の準備
スポット警備(単発・短時間) 1週間前〜(繁忙期を外せば数日前も相談可) その日に空いている警備員の確保

共通して言えるのは、「日程が決まった時点で問い合わせる」のが最も確実だということです。日数に余裕があれば、複数社を比較して条件の良い会社を選べます(比較のコツは警備の相見積もりの取り方)。以下では、なぜこれだけの日数が必要になるのか、その要因を分解します。

リードタイムを決める4つの要因

要因①|現地調査→警備計画→契約という標準フロー

警備は「人を送るだけ」ではなく、事前準備の工程があります。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 問い合わせ・ヒアリング:日時・場所・業務内容・想定人数を伝える
  2. 現地調査(下見):現場の状況、交通量、危険箇所、配置ポイントを確認する
  3. 警備計画・見積の提示:配置人数・時間・単価を組み立てて提案する
  4. 契約:内容に合意し、書面を取り交わす
  5. 人員の割り当て・準備:担当する警備員を確保し、業務内容を教育する

この各工程に日数がかかります。特に③④は、規模が大きいほど時間を要します。契約について、警備業者には契約締結前の概要書面と締結後の契約書面の交付が義務づけられており(警備業法第19条)、この書面のやり取りにも時間を見ておく必要があります。急ぐあまり現地調査を省くと、当日の配置ミスや人数不足につながりかねません。

要因②|道路使用許可に連動する交通誘導(道路交通法第77条)

工事の交通誘導で見落とされがちなのが、道路使用許可です。道路交通法第77条第1項は、道路において工事もしくは作業をしようとする者(またはその請負人)などは、その場所を管轄する警察署長(所轄警察署長)の許可を受けなければならないと定めています(出典:道路交通法第77条(e-Gov法令検索))。祭礼行事やロケーション等で道路を使う場合(同項第4号)も同様に許可が必要です。

この許可申請から交付までには日数がかかります。標準処理期間は各警察署が定めており、土曜・日曜・祝日を除いて、おおむね中3日〜1週間程度が一般的な目安です(申請書類に不備がない前提で、所轄警察署や内容により異なります)。警察庁も、大規模工事やイベントについては「十分な時間的余裕をもって事前相談をするように」と案内しています(出典:警察庁「道路使用許可の概要、申請手続等」)。

許可の内容(作業日時・区間・保安設備・配置人員など)は警備計画と表裏一体です。許可の見込みが立ってから警備の詳細が固まるケースも多いため、交通誘導は「許可の日数+警備会社の準備」の両方を織り込んで逆算する必要があります。建設現場での警備の考え方は建設現場の警備を依頼するときのポイントも参考にしてください。

要因③|繁忙期は人員の取り合いになる(年度末・週末)

警備は人が資源のため、需要が集中する時期は手配が難しくなります。代表的な繁忙期は次のとおりです。

  • 年度末(おおむね1〜3月):年度内完了を目指す公共工事などが集中し、交通誘導の需要が高まります
  • 週末・連休・行楽シーズン:イベント・祭り・興行が集中し、雑踏警備や駐車場整理の需要が高まります
  • 大型連休前後や悪天候の復旧時期:一時的に需要が跳ね上がることがあります

こうした時期は、同じ日に多くの現場が警備員を必要とするため、直前だと「その日に動ける人がいない」という事態が起きやすくなります。日程が繁忙期に重なると分かっているなら、目安表よりさらに前倒しで動くのが安全です。イベントの料金や設計はイベント警備の料金の考え方、祭りの警備は祭り・縁日の警備を依頼するポイントで解説しています。

要因④|検定合格警備員が必要な現場は、確保にさらに時間

一定の業務では、法律で検定合格警備員(国家公安委員会規則で定める種別の検定に合格した警備員)の配置が義務づけられています。警備業法第18条は、専門的知識・能力を要し事故時に危険が大きいものとして規則で定める種別の警備業務を行うときは、その種別ごとに、合格証明書の交付を受けている警備員に業務を実施させなければならないと定めています(出典:警備業法第18条(e-Gov法令検索))。具体的には、公安委員会が指定した道路での交通誘導警備業務や、一定の雑踏警備業務などが対象です。

ここで誤解しやすいのが、配置義務は「現場の警備員が全員、検定合格者でなければならない」という意味ではない点です。義務がかかる場所でも、法令が求めるのはその指定された場所ごとに合格者を配置することであり、同じ現場の他の警備員まで全員が合格者である必要はありません。とはいえ、検定合格者は限られた人材で、合格者を確保できるかどうかで手配できる日程が左右されます。指定区間の交通誘導や大規模な雑踏警備を予定しているなら、早めの相談が特に重要です。

緊急・直前手配の現実|受託不可・割増のリスク

「明日、急に警備が必要になった」というとき、対応できる会社もあります。最短即日や数日で受ける警備会社は実在しますが、以下のリスクは理解しておく必要があります。

  • 受託されない可能性:現地調査の時間がない、指定日に空いている警備員がいない等の理由で、断られることがあります。「必ず手配できる」とは限りません
  • 割増になる可能性:会社によっては短納期・緊急の手配に特急料金(割増)を設定している場合があります。割増の有無や率は会社・地域・時期で異なります
  • 深夜帯の単価上昇:深夜(22時〜翌5時)を含む作業では、労働基準法第37条第4項により25%以上の割増賃金が必要になるため、単価が上がる傾向があります(出典:労働基準法第37条第4項(e-Gov法令検索))。なお警備料金の基礎になる労務単価は都道府県ごとに異なるため、地域によって水準が変わります
  • 選べない:時間がないと相見積もりが取れず、条件の比較なしで決めることになります

背景にある人手不足と高齢化

直前手配が難しい構造的な背景に、警備業界の人手不足があります。警察庁の統計によると、警備員数は令和6年12月末で58万7,848人(前年より0.5%増)と横ばい圏にある一方、60歳以上が全体の47.0%(27万6,030人)、70歳以上だけで20.9%(12万2,919人)を占め、高齢化が進んでいます(出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」)。需要に対して人員に余裕があるわけではないため、「頼めば必ず埋まる」前提で直前まで動かないのは危険です。早く声をかけることが、そのまま確実な手配につながります。

早く動くと何が得か

リードタイムに余裕をもたせるメリットは、単に「間に合う」ことだけではありません。

  • 複数社を比較できる:条件(料金・対応範囲・実績)をそろえて相見積もりを取り、納得して選べます
  • 希望どおりの人数・時間帯を確保しやすい:繁忙期でも枠を押さえられます
  • 現地調査に基づく的確な計画になる:配置ミスや人数不足を防げます
  • 割増や特急料金を避けやすい:短納期のコスト増を回避できます
  • 許可手続きと足並みをそろえられる:道路使用許可などの行政手続きと警備計画を並行して進められます

逆算スケジュールのチェックリスト

実施日から逆算して、いつ何を動かせばよいかを整理しました。現場の規模や地域で前後するため、目安として活用してください。

工事の交通誘導を頼む場合

  • 3〜4週間前:工事日程が固まったら警備会社に問い合わせ、現地調査を依頼。道路使用許可の要否と申請スケジュールを確認
  • 2〜3週間前:警備計画・見積を受け取り、内容を比較・確定。道路使用許可を申請(土日祝を除く標準処理期間を織り込む)
  • 1週間前:契約書面を取り交わし、配置人数・時間・連絡体制を最終確認
  • 前日:集合場所・開始時刻・当日連絡先の再確認

イベント警備を頼む場合

  • 2〜3か月前(大型は早いほど良い):開催概要が決まったら問い合わせ。想定来場者数・会場図を共有し、必要人数の見立てを受ける
  • 1〜2か月前:警備計画(動線・配置・雑踏対策)と見積を確定。検定合格警備員が必要な規模なら人員確保を依頼
  • 2〜3週間前:契約、当日の指揮系統・緊急時対応の打ち合わせ
  • 前日〜当日:最終人数・タイムテーブル・悪天候時の対応を確認

単発・短時間の依頼であれば、上記より短い日程でも相談できます。スポットで頼むときの費用や進め方はスポット警備(単発・1日)の依頼と費用をご覧ください。

よくある質問

Q. 警備は何日前までに依頼すればいいですか?

A. 依頼種別によります。目安として、工事の交通誘導は2〜3週間前〜、イベント警備や施設の常駐警備は1〜2か月前〜、スポット警備は1週間前〜が安全です。繁忙期(年度末の工事集中、週末のイベント集中)は、さらに前倒しで動くことをおすすめします。日程が決まった時点で問い合わせるのが最も確実です。

Q. 明日や当日など、直前・緊急でも頼めますか?

A. 最短即日や数日で対応する警備会社は実在しますが、必ず手配できるとは限りません。現地調査の時間が取れない、指定日に空いている警備員がいないといった理由で受託されないことがあり、特急料金(割増)が発生する場合もあります。まずは近くの警備会社に、日時・場所・業務内容を伝えて可否を相談してください。

Q. 交通誘導は、道路使用許可の分も見て早めに動くべきですか?

A. はい。道路交通法第77条により、道路での工事・作業には所轄警察署長の許可が必要で、申請から交付まで土日祝を除いて中3日〜1週間程度の日数がかかるのが一般的です(所轄・内容により異なります)。許可の内容と警備計画は連動するため、「許可の日数+警備会社の準備日数」を合算して逆算してください。

Q. 繁忙期はどのくらい前に動けばいいですか?

A. 年度末や週末など需要が集中する時期は、通常の目安より前倒しが安全です。同じ日に多くの現場が警備員を求めるため、直前だと確保が難しくなります。日程が繁忙期に重なると分かった段階で、早めに複数社へ問い合わせておくと安心です。

Q. 早く動くと料金は安くなりますか?

A. 早さそのものが割引になるとは限りませんが、時間に余裕があれば相見積もりで条件を比較でき、短納期の割増を避けやすくなります。結果として、無理のない条件で契約できる可能性が高まります。料金は配置時間・人数・時間帯・地域の労務単価で決まるため、条件をそろえて比較することが大切です。

まとめ|「日程が決まったら、すぐ問い合わせる」

警備の手配には、現地調査・警備計画・人員確保・教育という工程があり、交通誘導なら道路使用許可(道路交通法第77条)の日数とも連動します。目安は、工事の交通誘導で2〜3週間前〜、イベントや施設常駐で1〜2か月前〜、スポットで1週間前〜。繁忙期はさらに前倒しが安全です。直前・緊急でも対応する会社はありますが、受託不可や割増のリスクがあり、警備員の高齢化・人手不足という背景もあって「必ず手配できる」わけではありません。早く動くほど、比較して選べて、確実に確保でき、割増も避けやすくなります。

まずは、依頼したい地域の警備会社を探すところから始めましょう。


【出典・参考】
道路交通法(昭和35年法律第105号)|e-Gov法令検索(第77条第1項・道路の使用の許可)
警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第18条・検定合格警備員の配置/第19条・書面の交付)
労働基準法(昭和22年法律第49号)|e-Gov法令検索(第37条第4項・深夜割増)
警察庁「道路使用許可の概要、申請手続等」(許可対象行為・所轄警察署長・事前相談の推奨)
警察庁「令和6年における警備業の概況」(警備員数・年齢別構成)
※法令・統計は2026年7月時点でe-Gov法令検索および警察庁公表資料と照合しています。道路使用許可の標準処理期間は各都道府県公安委員会が定めるもので、所轄警察署・申請内容により異なります。本文中のリードタイム・費用に関する記述はいずれも目安であり、実際の可否・日数・金額は個別の相談・見積によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する法的助言ではありません。