祭り・展示会・セミナー・スポーツ大会——イベントの主催者になってはじめて、「警備員を1日頼むといくらかかるのか」という壁に突き当たります。警備会社のサイトを見ても「要見積」ばかりで、予算組みの段階で使える数字がなかなか見つかりません。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、警備員1人1日あたりの単価の目安とその根拠、来場者規模別の1日総額の早見表を主催者目線で整理しました。単なる相場の羅列ではなく、公的単価(国土交通省の労務単価)と計算式から「なぜその金額になるのか」まで分かる構成です。
本文中の料金はいずれも目安であり、実際の金額は会場・内容・時期・地域によって変わります。
この記事でわかること
- イベント警備員の1人1日あたり単価の目安と根拠
- 来場者規模別の1日総額早見表【計算式つき】
- 見積の内訳(警備員費用だけではない)
- 料金が上がる6つの条件(深夜・検定合格者・直前手配など)
- 見積依頼前に主催者が整理すべきチェックリスト
イベント警備の料金は「1人1日1.5万〜3万円」が目安
イベント警備(警備業法第2条第1項第2号の雑踏警備)の料金は、警備員1人1日(8時間程度)あたり1.5万〜3万円程度が実勢の目安です。編集部が複数の警備会社・業界メディアの公表情報を横断調査した幅で、日中・標準的な業務内容の場合の水準です。
この幅には公的な裏づけがあります。雑踏警備そのものの公的単価はありませんが、同じ2号警備である交通誘導警備員の賃金水準として、国土交通省の公共工事設計労務単価(令和8年3月適用・全国加重平均・1日8時間あたり)が交通誘導警備員B(検定資格なし)16,749円、A(検定1級・2級合格者)18,911円と公表されています(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。
重要なのは、この労務単価が警備員本人の賃金相当額であり、法定福利費(事業主負担分)や管理費などの諸経費を含まないと国土交通省が明記している点です。全国警備業協会の資料では、必要経費は労務単価の48%程度という構成が示されており(出典:全国警備業協会「警備料金の基礎知識」)、これを当てはめると1人1日あたり約2.5万〜2.8万円が積算上の水準になります。「1人1日2万円台」は決して高い金額ではなく、賃金と法令上必要なコストの積み上げなのです。
規模別早見表|1日あたりの総額の目安
警備員の人数はイベントの来場者数・会場構造・リスクで決まります。「来場者◯人につき警備員1人」という法定の一律基準はなく、実務では警備会社の現地調査と、必要に応じた警察署との事前協議を踏まえて決まります。以下は編集部が業界メディア・警備会社の公表情報を横断調査した目安です(1人1日2万〜3万円で計算)。
| イベント規模(来場者) | 例 | 警備員数の目安 | 1日総額の目安 |
|---|---|---|---|
| 〜100人程度 | セミナー・講演会・小規模展示 | 1〜2名 | 約2万〜6万円 |
| 〜500人程度 | 企業イベント・地域催事 | 3〜5名 | 約6万〜15万円 |
| 〜1,000人程度 | 中規模の展示会・大会 | 5〜10名 | 約10万〜30万円 |
| 〜5,000人程度 | 祭り・フェス・スポーツ大会 | 10〜30名 | 約20万〜90万円 |
| 5,000人超 | 花火大会・大型フェス | 数十名〜 | 個別見積(数百万円規模になることも) |
※人数・金額とも目安です。会場が複数に分かれる、駐車場誘導を含む、夜間開催などの条件で大きく変わります。大規模イベントでは警備計画の作成・警察協議への対応も含めた総合的な見積になります。
総額の計算式はシンプルです。
1日の警備費用 ≒ 警備員数 × 1人1日単価 + 現場責任者・諸経費(資機材・車両・深夜割増等)
見積の内訳|警備員の人件費だけではない
イベント警備の見積には、配置される警備員の費用以外に次の項目が含まれることがあります。内訳を確認することで、複数社の見積を正しく比較できます。
- 現場責任者(隊長)の費用:一定人数以上の配置では、全体を統括する責任者が立てられます。一般の隊員より単価が高くなります。
- 警備計画書の作成費:会場図をもとにした配置計画・緊急時対応計画の作成。大規模イベントでは重要な工程です。
- 資機材費:誘導灯・無線機・カラーコーン・拡声器など。
- 車両費・交通費:会場までの移動、機材搬送の費用。
- 深夜・延長の割増:後述のとおり、深夜帯は法令上の割増賃金を反映して単価が上がります。
料金が上がる6つの条件
- 夜間・深夜の開催:深夜労働(原則22時〜翌5時)には労働基準法第37条により25%以上の割増賃金が義務づけられており(出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」)、警備料金にも反映されます。前夜からの設営警備・徹夜警備は割増前提で予算を組みましょう。
- 検定合格警備員の配置:警備業法第18条は、国家公安委員会規則で定める種別の警備業務について検定合格警備員の配置を警備業者に義務づけており、雑踏警備には専用の「雑踏警備業務検定」(1級・2級)があります(根拠:警備業法第18条・第23条(e-Gov法令検索))。資格者の配置が必要な現場かどうかは見積時に警備会社へ確認してください。資格者は無資格者より単価が高くなります。
- 土日祝・繁忙期の開催:イベントは週末に集中するため、人員確保の競争が起き、割増や早期予約が必要になります。
- 直前の依頼:警備業界は人手不足が続いており、直前手配は割増どころか受託不可になることもあります。日程確定後すぐの相談が結果的にもっとも安く済みます。
- 会場の分散・動線の複雑さ:出入口が多い、最寄駅からの誘導が必要、駐車場誘導を含む(駐車場警備・車両誘導の料金相場)——といった条件は必要人数を押し上げます。
- 雨天中止・順延リスク:屋外イベントでは、中止時のキャンセル料や順延時の再手配費用の取り決めが総コストに影響します。契約前に必ず条件を確認しましょう。
主催者向け|見積依頼前のチェックリスト8項目
次の項目を整理してから問い合わせると、見積の精度が上がり、複数社の比較もしやすくなります。
- □ 開催日時(設営・撤収を含む警備が必要な時間帯)
- □ 会場名と会場図(出入口・ステージ・駐車場の位置)
- □ 想定来場者数(最大同時滞在数の見込み)
- □ 依頼したい業務の範囲(入場整理・場内巡回・駐車場誘導・金銭管理エリアの警戒など)
- □ 夜間・深夜帯の警備の有無
- □ 過去開催時のトラブル・混雑箇所(初開催ならその旨)
- □ 警察署・消防への届出状況(雑踏が見込まれる場合、警察署との事前相談が行われるのが通例です)
- □ 雨天時の開催判断の基準と、中止時の連絡期限
警備会社の選定では、公安委員会の認定番号(警備業法第4条)と雑踏警備の実績を必ず確認してください。契約時には、業務内容・対価等を記載した書面の交付が警備業法第19条で義務づけられています。
費用を抑える工夫|安全は削らずに
- 警備範囲にメリハリをつける:全域を警備員で埋めるのではなく、リスクの高い箇所(出入口・段差・交差動線)に重点配置し、案内業務はスタッフ・掲示物で補完する設計を警備会社と相談しましょう。ただし雑踏の整理・誘導そのものは訓練を受けた警備員に任せるべき業務です。
- 複数日をまとめて依頼する:連日開催は1日ごとの依頼より調整余地が生まれやすくなります。
- 早期に相談する:人員確保が容易な時期に押さえるほど、割増を避けられます。
- 相見積もりを取る:2〜3社に同一条件で依頼し、総額ではなく「人数の根拠」と「内訳」で比較します。手順は警備の相見積もりの取り方で解説しています。
なお、警備費用を抑えるために人数を過度に削るのは本末転倒です。雑踏事故は主催者の責任問題に直結します。警備会社が提案する人数には現地調査に基づく根拠がありますから、減らしたい場合は「どのリスクを許容するのか」を必ず確認してください。
よくある質問
Q. 警備員1名だけ、半日だけの依頼はできますか?
A. 依頼自体は可能な会社が多いですが、半日でも1日料金に近い金額になることがあります(移動・準備のコストは変わらないため)。最低受託時間・最低料金の設定を問い合わせ時に確認しましょう。
Q. 何日前までに依頼すればよいですか?
A. 規模によりますが、少なくとも数週間〜1か月以上前の相談をおすすめします。大規模イベントや警察協議が必要な場合は、数か月前から警備会社を交えて準備するのが通例です。
Q. イベント警備と交通誘導は同じ会社に頼めますか?
A. どちらも2号警備なので両方に対応する会社は多いですが、雑踏警備と交通誘導警備は検定種別もノウハウも異なります。駐車場・周辺道路の誘導を含む場合は、両方の実績がある会社を選ぶとまとめて依頼できます(警備業務の種類参照)。
Q. 雨で中止になったら警備料金は払うのですか?
A. 契約の取り決めによります。中止決定のタイミングに応じたキャンセル料の定めが置かれるのが一般的なので、契約前に「何日前・何時間前の中止で何%か」を必ず確認し、書面に残してください。
Q. 警備員を置けば事故は防げますか?
A. 警備員の配置は事故リスクを下げるための重要な手段ですが、事故を完全に防ぐことを保証するものではありません。警備員には特別な法的権限もありません(警備業法第15条)。会場設計・入場制限・警察との連携など、主催者側の安全対策と組み合わせることが大切です。
まとめ|1人1日2万円台は「安全のコスト」として妥当な水準
イベント警備の料金は、1人1日1.5万〜3万円程度、総額は「人数×単価+諸経費」で概算できます。公的な労務単価と必要経費の構造から見ても、1人1日2万円台は妥当な水準です。予算を組んだら、早めに複数社へ同一条件で見積を依頼し、人数の根拠と内訳で比較してください。会場規模別の内訳はコンサート・ライブの警備費用でも解説しています。
【出典・参考】
・国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(交通誘導警備員A・Bの単価、単価に諸経費が含まれない旨)
・一般社団法人全国警備業協会「警備料金の基礎知識」(必要経費48%の構成)
・警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条・第4条・第15条・第18条・第19条・第23条)
・厚生労働省「確かめよう労働条件」時間外・休日労働と割増賃金(労働基準法第37条・深夜割増25%以上)
※法令・単価は2026年7月時点で各一次情報と照合しています。本文中の料金・人数はいずれも目安であり、実際は個別の見積・警備計画によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する助言ではありません。
