「工事現場に警備員を頼むといくらかかる?」「ビルの警備の見積が適正か判断できない」——警備の発注でまず困るのが料金の相場が分かりにくいことです。警備業務には定価がなく、警備会社の公表料金もまちまちで、比較の物差しを持たないまま見積を受け取ることになりがちです。

実は、警備料金には国土交通省が毎年公表している公的な単価(公共工事設計労務単価・建築保全業務労務単価)という確かな物差しがあります。この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、公的単価を柱に区分別の料金の目安・内訳・変動要因を発注者目線で整理しました。

本文中の料金はいずれも「目安」です。実際の金額は地域・業務内容・時期・契約条件によって変わるため、根拠とあわせてお読みください。

この記事でわかること

  • 警備料金の相場早見表(区分別・1人1日あたりの目安と根拠)
  • 国土交通省の公的単価(交通誘導警備員A/B・警備員A/B/C)の最新値と読み方
  • 警備料金の内訳——なぜ「警備員の日当」より高くなるのか
  • 料金が変動する7つの要因(深夜割増・資格者配置・地域差など)
  • 品質を落とさずに費用を抑える5つの方法

警備料金の相場早見表|区分別・1人1日あたりの目安

まず全体像です。警備業務は警備業法第2条第1項により1号(施設)〜4号(身辺)の4区分に分かれており(詳しくは警備業務の種類まるわかり)、区分ごとに料金の水準と決まり方が異なります。

業務の種類(区分) 1人1日(8時間)あたりの目安 公的な物差し 備考
交通誘導警備(2号) 約1.5万〜2.5万円 公共工事設計労務単価
交通誘導警備員B 16,749円/A 18,911円(賃金相当・全国加重平均)
公共工事の積算では単価に必要経費が加算される(後述)。検定合格者配置で上振れ
イベント・雑踏警備(2号) 約1.5万〜3万円 直接の公的単価はなし(同じ2号の交通誘導警備員単価が参考水準) 夜間・土日祝・繁忙期で上振れ。詳細はイベント警備の料金相場
施設警備(常駐)(1号) 約1.5万〜2.5万円(日勤) 建築保全業務労務単価
警備員C 14,810円〜A 19,590円(賃金相当・全国平均)
月額の試算は施設警備の費用相場で詳しく解説
巡回警備(1号) 時間・回数単位の契約が中心 巡回頻度・拠点数で決まるため一律の日額相場が示しにくい
貴重品運搬警備(3号) 個別見積 対応業者が全国662業者と少なく、定型的な相場が形成されにくい。料金の決まり方は現金輸送・貴重品運搬の費用相場
身辺警備(4号) 個別見積 対応業者は全国708業者。警護レベルにより大きく変動
機械警備(1号の一形態) 初期費用+月額の料金体系 機器構成・拠点規模により幅が大きく、各社見積での比較が前提

※「目安」欄は、上記の公的単価と、編集部が調査した警備会社・業界メディアの公表情報をもとにした実勢の幅です。地域・条件により、この幅を外れることもあります。3号・4号の業者数の出典は警察庁「令和6年における警備業の概況」(令和6年12月末現在)です。

この表の「目安」がどこから来るのか——次章で根拠となる公的単価を見ていきます。

警備料金の「物差し」になる2つの公的単価

警備料金の根拠としてもっとも信頼できるのが、国土交通省が毎年公表する2つの労務単価です。公共工事や官公庁施設の積算に使われる公的データで、民間の発注でも「適正価格の物差し」として使えます。

① 公共工事設計労務単価(交通誘導警備員A・B)

公共工事の予定価格の積算に用いる単価で、毎年2〜3月に改定されます。令和8年3月から適用される単価では、警備関係の職種は次のとおりです。

職種 定義 全国加重平均(1日8時間あたり) 前年比
交通誘導警備員A 交通誘導警備業務検定1級または2級の合格警備員 18,911円 +5.8%
交通誘導警備員B 上記以外(検定資格を持たない)の交通誘導警備員 16,749円 +6.7%

(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」

全職種の全国加重平均は25,834円(前年比+4.5%)で、賃金の引上げにより14年連続の上昇となっています。警備料金が年々上がっているのは、この賃金水準の上昇が背景にあります。

ここで重要な注意点があります。国土交通省は、この労務単価が警備員本人に支払われる賃金相当額(基本給・手当・賞与相当)であり、法定福利費の事業主負担分や現場管理費・一般管理費などの諸経費は含まれないことを明記しています。つまり「交通誘導警備員B=16,749円」は警備会社への支払額ではなく、警備会社への発注額はこれに諸経費を上乗せした金額になるのが正常です。

② 建築保全業務労務単価(警備員A・B・C)

官公庁施設の保全業務(清掃・設備管理・警備など)の積算のために国土交通省が毎年作成している参考単価で、施設警備の料金水準の物差しになります。令和8年度(令和8年4月適用)の警備員の全国平均は次のとおりです。

区分 定義(技術者区分) 全国平均(1日8時間あたり)
警備員A 施設警備業務検定1級合格者、またはこれと同程度の高度な技能を有する者(実務経験おおむね6年以上程度) 19,590円
警備員B 施設警備業務検定2級合格者、またはこれと同程度の技能を有する者(実務経験おおむね3〜6年程度) 16,720円
警備員C 警備員A・Bの指示に従って業務を行う者(実務経験3年未満程度) 14,810円

(出典:国土交通省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」。警備員全体の全国平均は17,040円・前年度比+9.1%)

こちらも全職種平均で前年度比+8.5%、14年連続の上昇です。そしてこの単価も、公共工事設計労務単価と同じく賃金相当額のみで、諸経費は含まれていません

労務単価に「約5割の必要経費」が乗って警備料金になる

では、諸経費はどのくらい乗るのでしょうか。業界団体の一般社団法人全国警備業協会は、発注者向け資料「警備料金の基礎知識」の中で、公共工事設計労務単価を100とした場合、法定福利費(労務単価の約16%)や労務管理費・一般管理費など、事業主(警備会社)が負担すべき必要経費は労務単価の48%程度という構成を示しています(出典:全国警備業協会「警備料金の基礎知識」)。

これを当てはめると、公共工事の積算水準は次のように計算できます(編集部試算)。

  • 交通誘導警備員B:16,749円 × 1.48 ≒ 約24,800円/1人1日
  • 交通誘導警備員A:18,911円 × 1.48 ≒ 約28,000円/1人1日

民間工事や民間施設の実勢見積は、地域や競争環境によってこの水準より低いことも珍しくありません。ただし「賃金相当額(労務単価)を大きく下回る見積」は、警備員の賃金・法定福利費・教育費のどこかを削らないと成立しない計算になります。安すぎる見積を選ぶ際は、この物差しを思い出してください。

警備料金の内訳|見積の中身はこうなっている

見積書の総額の内側は、おおむね次の要素で構成されます。全国警備業協会も、内訳を明示する「警備料金標準見積書」の様式(交通誘導警備業務用・施設警備業務用)を公表しています。

内訳項目 内容 発注者が見るポイント
労務費(賃金) 警備員本人に支払われる賃金相当額。労務単価に対応する部分 労務単価と比べて極端に低くないか
法定福利費 社会保険・労働保険の事業主負担分(労務単価の約16%が目安) 内訳に計上されているか(未計上は法令順守の姿勢に疑問)
教育・管理費 警備業法第21条で義務づけられた警備員教育、指導監督、管制(配置管理)の費用 削られると欠員時の補充力・隊員の質に影響
装備・資機材費 制服・無線機・誘導灯・カラーコード類・車両など 現場に必要な資機材が含まれているか
一般管理費・利益 会社運営の経費と適正利潤

「警備員の日当が1万円ちょっとなのに、なぜ会社への支払いは2万円を超えるのか」という疑問の答えがこの構造です。差額は中抜きではなく、法定福利費・教育・管制・装備といった、安全品質を支えるコストです。自社で警備員を雇う場合との比較は警備員を自社で雇う?委託する?で解説しています。

見積書を受け取ったら最低限確認する3点

  1. 前提条件が依頼内容と一致しているか:人数・時間帯・日数・業務範囲。前提が違えば金額比較は意味を持ちません。
  2. 単価と割増の扱いが明示されているか:1人1日(または1時間)あたりの単価、深夜・延長・休日の割増率、キャンセル時の取り決め。
  3. 契約書面の説明があるか:警備業法第19条により、警備会社には契約締結前の概要書面と締結後の詳細書面(業務内容・対価・契約解除に関する事項等)の交付が義務づけられています。書面の話が出ない業者は候補から外すのが賢明です。

機械警備の料金だけは構造が別

人が常駐しない機械警備(警備業法第2条第5項)は、人件費積み上げ型の上記とは料金構造が異なり、「初期費用(機器設置・工事)+月額(監視・駆けつけ)」の組み合わせで決まります。機器をレンタルにするか買い取るかで初期費用と月額のバランスが変わり、契約期間の縛りが設定されることも多いため、総額は「契約期間全体でいくらか」で比較するのが正解です。金額水準は施設の規模・機器構成による幅が大きく、各社見積での比較が前提になります(対応会社は機械警備に対応する警備会社一覧)。

警備料金が変動する7つの要因

  1. 時間帯(夜間・深夜):労働基準法第37条により、深夜労働(原則22時〜翌5時)には25%以上の割増賃金の支払いが義務づけられています(出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」)。警備員の賃金が上がる分、深夜帯の警備料金も昼間より高くなるのが通常です。
  2. 曜日・時期:土日祝や年末年始・お盆などの繁忙期は、人員確保が難しくなるため割増になる場合があります。
  3. 地域:労務単価は47都道府県別に設定されており、都市部と地方で水準が異なります。同じ業務でも県が変われば適正価格も変わります。
  4. 資格者(検定合格警備員)の配置:警備業法第18条により、公安委員会が指定する路線の交通誘導など一定の業務には検定合格警備員の配置が義務づけられています。資格者(交通誘導警備員A相当)は無資格者より単価が高くなります(根拠:警備業法第18条(e-Gov法令検索))。
  5. 人数と契約期間:長期・大口の契約は1日あたり単価の調整余地が生まれやすく、単発・少人数は割高になりがちです(単発の相場は警備を1日だけ頼む料金)。
  6. 依頼のタイミング:直前の依頼は人員確保コストが上がり、割増または受託不可となることがあります。警備業界は人手不足が続いており、早めの相談が価格面でも有利です。
  7. 天候・中止リスクの扱い:屋外の警備では、雨天中止時のキャンセル料や順延時の再手配費用の取り決めが総コストに影響します。契約前に必ず確認しましょう。

総額はいくら?簡単な計算式と試算例

概算予算は次の式で立てられます。

警備費用の総額 ≒ 人数 × 1人1日あたり単価 × 日数 + 諸経費(交通費・資機材費・深夜割増等)

たとえば、建築工事の現場に交通誘導警備員2名を20日間(日勤8時間)配置する場合——1人1日18,000円(目安の中間値)とすると、2名 × 18,000円 × 20日 = 72万円程度が概算のベースになります。ここに、検定合格者の配置が必要なら単価の上乗せ、延長が見込まれるなら時間外の割増を加味します。あくまで編集部試算による目安であり、実際は現地調査を踏まえた見積で確定します。

品質を落とさずに費用を抑える5つの方法

  • ① 仕様を見直す:警備時間帯の圧縮(例:終日→開場前後のピーク時間帯のみ)、配置箇所の優先順位づけは、単価を削らずに総額を下げる王道です。
  • ② 機械警備・防犯設備と組み合わせる:施設警備なら「無人時間帯は機械警備、日中は有人」の併用で有人コストを圧縮できます(機械警備に対応する警備会社一覧)。
  • ③ 早めに依頼する:日程が決まり次第すぐ相談することで、割増や手配不能のリスクを避けられます。
  • ④ 相見積もりを取る:2〜3社から同一条件で見積を取り、総額ではなく内訳と警備計画で比較します。取り方のコツは警備の相見積もりの取り方で詳しく解説しています。
  • ⑤ 複数現場・長期契約でまとめる:発注をまとめることで管理コストが下がり、価格交渉の余地が生まれます。

逆におすすめできないのが、単価の値切り一辺倒です。警備料金の大半は人件費と法令上必要なコストであり、無理な値下げは隊員の質・欠員時の補充力に跳ね返るおそれがあります。

よくある質問

Q. 警備員1人を1日頼むと、結局いくらですか?

A. 日勤8時間の交通誘導・施設警備であれば、おおむね1.5万〜2.5万円が目安です(地域・条件により変動)。公共工事の積算水準では、労務単価に必要経費48%を加えた約2.5万〜2.8万円が一つの基準になります。

Q. 地域によって料金はどのくらい違いますか?

A. 公共工事設計労務単価・建築保全業務労務単価はいずれも地域別(労務単価は47都道府県別)に設定されており、一般に都市部ほど高くなります。自県の水準は国土交通省の公表資料(本記事末尾の出典リンク)で確認できます。見積を比較する際は、同じ県内の会社同士で比べるのが基本です。

Q. 会社によって見積額に差が出るのはなぜですか?

A. 警備員の賃金水準・教育体制・管理体制・利益率が会社ごとに異なるためです。差が大きいときは内訳を確認し、労務費や法定福利費を不自然に削っていないかを見てください。

Q. 警備料金は毎年上がっているのですか?

A. 賃金の物差しである公共工事設計労務単価は14年連続で上昇しており、令和8年3月適用分でも交通誘導警備員Aが+5.8%、Bが+6.7%の引上げでした。人手不足も続いているため、当面は上昇基調が続くと見られます。

Q. 夜間の警備はどのくらい高くなりますか?

A. 深夜帯(原則22時〜翌5時)は労働基準法第37条により警備員へ25%以上の割増賃金が支払われるため、警備料金もそれを反映して昼間より高くなるのが一般的です。割増率の設定は会社によって異なるので、見積で確認しましょう。

Q. 見積は無料で取れますか?

A. 多くの警備会社は見積を無料で行っていますが、現地調査を伴う場合の扱いは会社によって異なります。依頼時に確認してください。なお警備業法第19条により、契約時には業務内容・対価等を記載した書面(電磁的方法を含む)の交付が義務づけられています。書面を出さない業者は避けましょう。

まとめ|「労務単価+必要経費」が適正価格の物差し

警備料金には定価がありませんが、国土交通省の労務単価(賃金相当額)に約5割の必要経費が乗るという構造を知っていれば、見積の妥当性は自分で判断できます。交通誘導・施設警備の日勤なら1人1日1.5万〜2.5万円程度がひとつの目安——ここから大きく外れる見積には、高い場合も安い場合も理由の説明を求めてください。

適正価格を見極める最良の方法は、複数社の見積を同じ条件で比べることです。


【出典・参考】
国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(交通誘導警備員A・Bの単価、全職種平均、労務単価に諸経費が含まれない旨の注記)
国土交通省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」(警備員A・B・Cの単価)
一般社団法人全国警備業協会「警備料金の基礎知識」(必要経費48%の構成、警備料金標準見積書)
警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条・第18条・第19条・第21条)
厚生労働省「確かめよう労働条件」時間外・休日労働と割増賃金(労働基準法第37条・深夜割増25%以上)
警察庁「令和6年における警備業の概況」(区分別実施業者数)
※法令・統計・単価は2026年7月時点で各一次情報と照合しています。本文中の料金はいずれも目安であり、実際の金額は個別の見積によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する助言ではありません。