警備を依頼するとき、1社の見積だけで決めてよいのか——答えは明確で、警備には定価がないからこそ、複数社の見積(相見積もり)を取るのが基本です。ところが「警備 相見積もり」で調べても、他業界の一般的なマナー記事ばかりで、警備に特化した相見積もりの手順をまとめた情報はほとんどありません。
警備の相見積もりには、他の業種と違う難しさがあります。警備は「モノ」ではなく体制とノウハウを買う役務なので、条件をそろえないと各社の見積がバラバラの前提で出てきて、比較にならないのです。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、条件のそろえ方(条件統一シート)→依頼→内訳での比較→円満な断り方まで、警備の相見積もりの実務を5ステップで解説します。
この記事でわかること
- 相見積もりを取るべき3つの理由と、適切な社数(2〜3社)
- 比較を成立させる「条件統一シート」【そのまま使える項目表】
- 総額ではなく内訳で比べる——見積比較チェックリスト10項目
- 安すぎる見積を疑うべき理由(公的単価という物差し)
- 失礼にならない相見積もりの作法と断り方
警備で相見積もりを取るべき3つの理由
- ① 適正価格が分かる:警備料金には定価がなく、同じ条件でも会社によって金額が変わります。複数の見積を並べてはじめて、地域の実勢と自社案件の適正水準が見えてきます。
- ② 警備計画を比較できる:見積には金額だけでなく「何人を、どこに、どう配置するか」という提案が含まれます。人数の根拠や欠員時の補充体制は会社ごとに差が出るポイントで、比較することで各社の実力が分かります。
- ③ 手配不能のリスクヘッジになる:警備業界は人手不足が続いており、1社に絞って進めると「直前に人が集まらない」というリスクを負います。複数社と並行して話すこと自体が保険になります。
なお、相見積もり自体は商取引の通常の慣行であり、失礼にはあたりません。警備会社側も相見積もりには慣れています。守るべき作法は後述します。
何社に頼む?——2〜3社が現実的
おすすめは2〜3社です。1社では比較にならず、4社以上は対応の手間が膨らむうえ、現地調査の日程調整だけで消耗します。警備の見積は現地調査を伴うことが多く、各社に相応の負担をかけるため、「本気で検討する会社に絞って依頼する」のが結果的に良い提案を引き出します。
候補選びの段階では、次の2点を必ず確認してください。
- 公安委員会の認定:警備業は都道府県公安委員会の認定制です(警備業法第4条)。「〇〇県公安委員会認定 第△△号」の表示を会社案内・Webサイトで確認しましょう(根拠:警備業法第4条(e-Gov法令検索))。
- 該当区分の実績:警備業務は1号(施設)〜4号(身辺)に分かれ、会社ごとに得意分野が異なります(警備業務の種類まるわかり参照)。依頼したい区分の実績がある会社を候補にしてください。地域と区分で絞り込むには都道府県から探すが便利です。
相見積もりの5ステップ
Step1|条件統一シートを作る(最重要)
相見積もりの成否は、依頼前の条件整理で決まります。各社に同じ条件を渡さないと、A社は2名・B社は3名前提など、前提の違う見積が返ってきて比較できません。次の項目を1枚にまとめて、全社に同じものを渡しましょう。
| 項目 | 記入する内容の例 |
|---|---|
| 依頼する業務 | 施設常駐/交通誘導/イベント雑踏 など(迷ったら【無料】警備依頼先診断で整理できます) |
| 場所 | 住所・会場名・現場の図面や地図 |
| 期間・日数 | 開始日〜終了日、継続契約か単発か |
| 時間帯 | 配置時間(例:8:00〜17:00)。深夜帯の有無は必ず明記 |
| 希望人数 | 「◯名希望」または「人数は提案してほしい」と明記(各社の提案人数を比べたい場合は後者で統一) |
| 業務範囲 | 出入管理・受付・巡回・駐車場誘導など、やってほしいことの一覧 |
| 資格者の要否 | 検定合格警備員の配置指定の有無(不明なら「必要性を教えてほしい」と記載) |
| 現場の特記事項 | 過去のトラブル、混雑箇所、立入制限区域など |
| 見積の提出期限・形式 | 期限日と、内訳(労務費・法定福利費・諸経費)を分けた見積を希望する旨 |
| 中止・変更時の条件 | キャンセル料・順延時の扱いの提示を依頼 |
Step2|候補2〜3社に同時に依頼する
- 相見積もりであることは最初に伝えます。隠す必要はなく、伝えたほうが各社とも競争を前提にした本気の提案を出してくれます。
- 現地調査はできるだけ受け入れましょう。図面だけの見積より精度が上がり、現地調査への姿勢そのものが会社の質の判断材料になります。
- 質問への回答内容・スピードも記録しておきます。契約後の対応品質を映す鏡です。
Step3|「総額」ではなく「内訳」で比較する
見積がそろったら、総額の安い順に並べるのではなく、内訳と提案内容で比較します。参考になるのが、業界団体の一般社団法人全国警備業協会が公表している「警備料金標準見積書」の様式(交通誘導警備業務用・施設警備業務用)です。労務費・法定福利費・諸経費を分けて示す構成になっており、この水準の内訳を開示できる会社は価格の透明性が高いと判断できます(出典:全国警備業協会「警備料金の基礎知識」)。
比較チェックリストはこちらです。
- □ 前提条件(人数・時間・日数)が条件統一シートどおりか(違う場合はどこが違うか)
- □ 1人1日あたりの単価が明示されているか
- □ 労務費と法定福利費・諸経費が区分して示されているか
- □ 提案人数の根拠(現地調査・リスク評価)が説明されているか
- □ 現場責任者(隊長)の配置と費用の扱い
- □ 深夜・延長・休日の割増率
- □ 欠員時・急病時の補充体制
- □ 損害賠償責任保険の加入状況と補償範囲
- □ キャンセル料・中止時の取り決め
- □ 契約書面(警備業法第19条の交付書面)の提示があるか
最後の項目は法令上の義務です。警備業法第19条により、警備会社は契約締結前に概要書面を、締結後に業務内容・対価・契約解除に関する事項等を記載した書面を依頼者に交付する義務があります(根拠:警備業法第19条(e-Gov法令検索))。この説明がない会社は候補から外して構いません(そのほかの見極め方は契約NGな警備会社の特徴にまとめています)。
Step4|安すぎる見積は理由を確認する
相見積もりで1社だけ極端に安いと魅力的に見えますが、警備料金には公的な物差しがあります。国土交通省の公共工事設計労務単価(令和8年3月適用)では、交通誘導警備員Bの賃金相当額だけで1日16,749円(全国加重平均・8時間)です。しかもこの単価には法定福利費の事業主負担分や管理費などの諸経費は含まれず、全国警備業協会の資料では必要経費は労務単価の48%程度とされています(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」/全国警備業協会「警備料金の基礎知識」)。
つまり、賃金相当額を大きく下回る見積は、警備員の賃金・社会保険・教育のどこかを削らないと成立しない計算になります。安い見積を排除する必要はありませんが、「なぜこの金額で可能なのか」の説明を求め、納得できる根拠(自社比での効率化など)があるかを確認してください。相場の詳しい水準は警備会社の料金相場まるわかりで解説しています。
Step5|決定と断りの連絡(作法)
依頼先を決めたら、選ばなかった会社にも必ず、早めに断りの連絡を入れます。各社は現地調査や警備計画の検討に工数をかけています。連絡はメールで簡潔に、検討への御礼と結果のみ伝えれば十分です。理由の詳細説明は不要ですが、聞かれた範囲で率直に伝えると次の機会につながります。
あわせて、やってはいけないのが次の2つです。
- 他社の見積金額を明かして値引きを迫る(「B社は◯円だった。それより下げたら契約する」)——見積情報は各社の営業秘密であり、こうした交渉は信頼を損ないます。無理な値下げは警備の質に跳ね返るおそれもあります。
- 会社ごとに条件を変える——比較が成立しなくなるだけでなく、不公平な扱いは業界内での評判にも関わります。
相見積もりが向かないケース
- 開催・着工まで日がない緊急手配:比較に時間を使うより、対応可能な会社を確保するのが先です。人手不足のなか、直前は1社見つかるかどうかの勝負になります。
- 現契約の一部変更・追加:既存の警備会社との調整で済む内容なら、まず現行会社に相談するのが早道です。不満があって切り替えを検討する場合の全体の段取りは警備会社の変更・乗り換え手順をご覧ください(乗り換え時の新会社選定では、本記事の相見積もり手順がそのまま使えます)。
よくある質問
Q. 相見積もりは警備会社に失礼ではありませんか?
A. 失礼にはあたりません。複数社比較は商取引の通常の慣行で、警備会社側も慣れています。最初に相見積もりである旨を伝え、条件を公平にそろえ、断る際は早めに連絡する——この3点を守れば誠実な進め方です。
Q. 見積は無料ですか?
A. 多くの会社は無料ですが、現地調査や警備計画書の作成を伴う場合の扱いは会社によって異なります。依頼時に「見積までの費用は発生しますか」と確認しておくとトラブルを避けられます。
Q. 金額以外では何を重視すべきですか?
A. 提案人数の根拠、欠員時の補充体制、損害賠償保険、書面交付(警備業法第19条)の4点です。警備は契約後に品質差が出る役務なので、「安いが説明が曖昧な会社」より「根拠を説明できる会社」を選ぶほうが総コストは下がる傾向にあります。
Q. 一括見積もりサービスを使うのと何が違いますか?
A. 一括サービスは手間が省ける一方、比較対象がそのサービスの提携先に限られる場合があります。本記事の手順は、自分で候補を選んで直接比較する方法です。当サイトでは地域と業務区分から候補を探し、見積依頼につなげられます。
まとめ|「同じ条件で2〜3社、内訳で比較」が鉄則
警備の相見積もりは、①条件統一シートで前提をそろえ、②2〜3社に同時依頼し、③総額ではなく内訳と提案根拠で比較し、④安すぎる見積は理由を確認し、⑤断りは早く丁寧に——この5ステップで進めれば、初めてでも適正価格で信頼できる会社にたどり着けます。決定後の契約から警備開始までの段取りは警備会社への依頼の流れで解説しています。
候補探しと見積依頼は、当サイトをご活用ください。
- 無料の一括相談・見積依頼はこちら|条件に合う地域の警備会社に相談できます
- 都道府県から警備会社を探す/施設警備・交通誘導・イベント警備の対応会社一覧
- 関連記事:警備会社の料金相場まるわかり/警備会社の変更・乗り換え手順
【出典・参考】
・警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条・第4条・第19条)
・国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(交通誘導警備員A・Bの単価、単価に諸経費が含まれない旨)
・一般社団法人全国警備業協会「警備料金の基礎知識」(警備料金標準見積書の様式、必要経費48%の構成)
※法令・単価は2026年7月時点で各一次情報と照合しています。本記事は一般的な情報提供であり、個別の契約に関する法的助言ではありません。
