「警備を頼みたいが、この会社に任せて大丈夫なのか」——建設現場・イベント・施設の管理者が発注先を選ぶとき、価格や対応の速さは比べやすくても、その会社がそもそも合法に営業しているのかは見落とされがちです。警備業には、誰でも自由に始めてよい仕事ではなく、都道府県公安委員会の「認定」を受けた会社しか営めないという決まりがあります。この認定を受けていない「無認定業者」に依頼してしまうと、思わぬリスクを背負うことになりかねません。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、発注する側の目線で警備業の認定制度を整理しました。制度の中身(何が審査されるのか・有効期間・2024年の改正)から、無認定業者に頼むと何がまずいのかまで、条文の番号を示しながら解説します。法令の記述はすべてe-Gov法令検索の警備業法現行条文と照合しています。認定番号の「確認手順」を知りたい方は、実務編の警備業の認定番号の確認方法もあわせてご覧ください(本記事は制度編、あちらが実務編という関係です)。
この記事でわかること
- 警備業の認定制度とは何か(公安委員会の認定なしに警備業は営めない=警備業法第4条)
- 認定で何が審査されるのか=欠格事由(第3条の11項目を発注者目線で要約)
- 認定の有効期間は5年・更新制であること(第5条・第7条)
- 2024年4月の改正で「認定証」が廃止され「標識」の掲示・ウェブ公表が義務化されたこと(第6条)
- 「認定」「検定」「認定番号」の違い【早見表】
- 無認定業者に依頼するリスク(罰則は業者側/発注者が負う実務上のリスク)
- 混同注意:主催者の「自主警備」は無認定でも違法ではない理由(第2条第1項)
警備業の認定制度とは|公安委員会の「認定」がなければ営めない
警備業の認定制度とは、警備業を営もうとする者は、あらかじめ都道府県公安委員会の認定を受けなければならないという仕組みです。根拠は警備業法第4条で、次のように定められています。
警備業を営もうとする者は、前条各号のいずれにも該当しないことについて、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の認定を受けなければならない。(警備業法第4条)
ここでいう「前条各号」とは、次章で説明する第3条の欠格事由のことです。つまり認定とは、「この会社(人)は欠格事由に当たらない=警備業を営むのにふさわしい」と公安委員会が確認する手続きだといえます。
この認定は形式的な届出ではなく、警備業を営むための大前提です。警備業法第2条第3項は「警備業者」を「第四条の認定を受けて警備業を営む者」と定義しています。裏を返せば、認定を受けずに警備業を営んでいる会社は、法律上の「警備業者」ですらなく、営業していること自体が違法状態ということになります(出典:警備業法第2条・第4条(e-Gov法令検索))。
なぜここまで厳しいのか。警備業務は他人の生命・身体・財産の安全に直結し、現場では人の制止や立入りの管理など、警察の権限とまぎらわしい実力行使を伴う場面もあります。だからこそ、警備業法第15条は「警備業者及び警備員は……この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意する」と定め、そのうえで、一定の欠格事由に当たらない者だけに営業を認める認定制を採っているのです。認定制は、発注者や利用者が「最低限の適格性を満たした相手」と取引できることを担保するための入口の仕組み、と理解しておくとよいでしょう。
認定で審査されること=欠格事由(警備業法第3条)
認定の可否を分けるのが、警備業法第3条の「欠格事由」です。次のいずれかに当たる者は警備業を営めません(第3条各号を発注者向けに要約したものです。正確な文言は条文をご確認ください)。
| 号 | 欠格事由(要約) |
|---|---|
| 第1号 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者 |
| 第2号 | 拘禁刑以上の刑、または警備業法違反による罰金刑を受け、その執行終了等から5年を経過しない者 |
| 第3号 | 最近5年間に、警備業法の規定・処分違反、または警備業務に関する重大な不正行為をした者 |
| 第4号 | 集団的・常習的に暴力的不法行為等を行うおそれがあると認められる者 |
| 第5号 | 暴力団関係の命令・指示を受け、その日から3年を経過しない者 |
| 第6号 | アルコール・麻薬・大麻・あへん・覚醒剤の中毒者 |
| 第7号 | 心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者(国家公安委員会規則で定めるもの) |
| 第8号 | 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者(一定の相続人の例外あり) |
| 第9号 | 営業所ごと・業務区分ごとに警備員指導教育責任者を選任すると認められない者 |
| 第10号 | 法人で、その役員のうちに第1号〜第7号のいずれかに当たる者がいるもの |
| 第11号 | 第4号該当者が、出資・融資・取引等を通じて事業活動に支配的影響力を持つ者 |
この一覧が、発注者にとっての認定制度の意味を端的に示しています。認定を受けているということは、反社会的勢力との関係、一定の前科、薬物中毒、そして「警備員を教育・指導する体制(指導教育責任者)が置けないこと」などのハードルをクリアしているということです。とりわけ第9号の指導教育責任者の選任は、その会社が警備員を放置せず適正に教育・監督する体制を持つことの担保になります。無認定業者では、これらが何ひとつ確認できません(出典:警備業法第3条(e-Gov法令検索))。
認定の有効期間は5年・更新が必要(第5条・第7条)
認定は一度受ければ永久に有効、というわけではありません。警備業法第5条第4項は、認定の有効期間を「認定を受けた日から起算して5年」と定めています。有効期間が満了した後も引き続き営業するには、第7条により更新の申請をして更新を受けなければならず、更新を受けなければ認定はその効力を失います(第7条第5項)。
つまり、認定を受けている会社は5年ごとに欠格事由に当たらないかを改めて確認されていることになります。発注者にとっては、認定番号だけでなくその有効期間が切れていないかも確認ポイントになる、ということです(更新申請をしないまま有効期間満了後も営業を続けると、後述の第57条第2号の罰則対象になります)。
2024年4月改正|「認定証」廃止→「標識」の掲示・ウェブ公表が義務に(第6条)
認定制度は2024年(令和6年)4月の改正で、確認方法が大きく変わりました。従来は公安委員会が発行する紙の「認定証」を営業所に掲示する仕組みでしたが、この認定証が廃止され、代わりに各警備業者が自ら「標識」を作成・掲示する制度になりました。
現行の警備業法第6条第1項は、警備業者に対し、認定を受けたことを示す標識を主たる営業所の見やすい場所に掲示すること、加えて(事業規模が著しく小さい場合等を除き)ウェブサイト等(電気通信回線に接続して行う自動公衆送信)で公衆の閲覧に供することを義務づけています。さらに同条第2項は、警備業者以外の者が標識やこれに類似する標識を掲示・公表することを禁止しています(出典:警備業法第6条(e-Gov法令検索))。
この改正は発注者にとって朗報です。以前は営業所に足を運ばないと認定証を確認しづらい面がありましたが、いまは会社のウェブサイトに掲示された標識で認定の有無と認定番号を確認できるのが原則になったからです。標識には公安委員会名・認定番号・有効期間・氏名(名称)・所在地が記載されます。標識を掲示せず、またはウェブ公表を怠った場合は第58条の罰則(30万円以下の罰金)の対象になります。具体的な確認手順は警備業の認定番号の確認方法で詳しく解説しています。
「認定」「検定」「認定番号」の違い【早見表】
発注者がよく混同するのが、「認定」「検定」「認定番号」という似た言葉です。対象も根拠も別物なので、ここで整理しておきましょう。
| 用語 | 対象 | 根拠 | 中身(誰の・何の資格か) |
|---|---|---|---|
| 認定 | 警備会社(業者) | 警備業法第4条 | 会社が警備業を営むための資格。公安委員会が付与。これがないと営業できない |
| 検定 | 警備員(個人) | 警備業法第23条(検定)・第18条(配置義務)・検定規則 | 個々の警備員が持つ技能資格(交通誘導警備2級など)。特定の業務では有資格者の配置が必要 |
| 認定番号 | —(認定の識別子) | 警備業法第6条(標識) | 会社が認定を受けたことを示す番号。「〇〇県公安委員会認定 第△△△△号」の形で標識に記載 |
ポイントは、認定は「会社」、検定は「警備員個人」の資格だということです。警備業法第18条は、専門的知識・能力を要し事故時に危険が大きい特定の種別(交通誘導警備・雑踏警備・貴重品運搬警備・空港保安警備・核燃料物質等危険物運搬警備・施設警備)について、検定合格警備員の配置を義務づけていますが、これは「会社の認定」とは別の話です。会社が認定を受けていることは大前提で、そのうえで現場ごとに検定合格者の配置が必要な業務がある、という二段構えで理解してください(検定の詳細は警備員の検定資格とはを参照。なお、検定合格者の配置義務は「場所ごとに1人以上」であり、現場の警備員全員が有資格でなければならないわけではありません)。認定番号については、名称は「認定番号」で統一されており、2024年4月以降は上記の標識に記載されます。
無認定業者に依頼するリスク|罰則は業者側、発注者は実務リスクを負う
ここが本題です。認定を受けずに警備業を営むこと(無認定営業)は、それ自体が犯罪です。警備業法第57条第1号は、認定の申請をしないで、または申請への通知を受ける前に警備業を営んだ者を「百万円以下の罰金」に処すると定めています。
次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。一 第五条第一項の規定による認定の申請をしないで、又はこれに係る同条第二項若しくは第三項の規定による通知を受ける前に警備業を営んだ者……(警備業法第57条)
まず正確に押さえておきたいのは、この罰則の対象は「警備業を営んだ業者側」であって、依頼した発注者を直接罰する規定は警備業法にはないという点です(法人がした場合は第59条の両罰規定で法人にも罰金が科されます)。とはいえ、発注者が罰せられないからといって安心はできません。無認定業者に頼むと、発注者は次のような実務上のリスクを負うことになります。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 違法状態の相手との契約 | 契約相手が第57条第1号違反という犯罪状態にある。摘発されれば警備が突然止まり、現場・イベントが立ち行かなくなる恐れ |
| 教育・指導体制の欠如 | 認定業者に課される指導教育責任者の選任(第22条)や警備員教育(第21条)の担保がない。未熟な警備員によるトラブルの温床になりやすい |
| 書面交付義務の不履行 | 認定業者は契約前の概要書面・契約後の書面交付が義務(第19条)だが、無認定業者はこの規律の外にあり、契約内容が不明確なまま進みやすい |
| 監督・行政処分が及ばない | 認定業者は公安委員会の指示(第48条)や営業停止・廃止命令(第49条)といった監督下にあるが、無認定業者はそもそも制度の外。問題が起きても是正させる公的な仕組みが働きにくい |
| 賠償・信頼性の不確実さ | 賠償体制や実績の裏づけを確認しづらく、事故・損害が生じたときの対応力が読めない |
もう一つ注意したいのが「名義貸し」です。警備業法第13条は、警備業者が自己の名義をもって他人に警備業を営ませることを禁止しています。認定業者の名前だけを借りて、実際には認定のない別の者が警備を行う——というケースも第57条第3号違反にあたります。看板(社名)と実際に現場に来る警備の担い手が一致しているかも、依頼時に意識しておきたいポイントです。
まとめると、認定業者を選ぶことは「法令違反の心配がない相手を選ぶ」だけでなく、教育・書面・監督といった発注者を守る仕組みが一通り働く相手を選ぶことを意味します。価格の安さだけで無認定業者を選ぶのは、これらの担保をすべて手放すことと引き換えになりかねません。
混同注意|主催者の「自主警備」は無認定でも違法ではない
ここで、よくある誤解を1つ解いておきます。「認定がないと警備をしてはいけない」と聞くと、自分のイベントを自分たちで警備すること(自主警備)も違法なのでは、と心配になるかもしれません。これは誤解です。
警備業法第2条第1項は、「警備業務」を各号の業務であって「他人の需要に応じて行うもの」と定義しています。この「他人の需要に応じて」という要件がカギで、主催者や施設管理者が、自分の催しや自分の施設を、自社の従業員で警戒・整理する行為は「他人の需要に応じて行うもの」に当たらず、そもそも警備業法の規制対象ではありません。したがって認定は不要です(出典:警備業法第2条第1項(e-Gov法令検索))。
整理すると、認定が必要になるのは「他人(発注者)から対価を得て警備業務を請け負う会社」です。自分のためにやる自主警備は対象外——この線引きは実務でしばしば混乱するため、詳しくは自主警備とは|警備業法との関係・自前警備が認められる範囲で解説しています。逆にいえば、あなたが外部の会社に警備を「発注」する場面では、相手は必ず認定を受けている必要があるということです。
認定業者かどうか確認する手順(発注者チェックリスト)
発注前に、依頼先が認定を受けた警備業者かを確認しておきましょう。最低限、次の項目を押さえれば大きな取り違えは防げます(詳しい確認方法は警備業の認定番号の確認方法を参照してください)。
- 会社のウェブサイトに標識があるか:2024年4月以降、原則としてウェブサイトで標識(認定番号を含む)を公表する義務があります(第6条)。まずはここを確認します
- 認定番号の形式が正しいか:「〇〇県公安委員会認定 第△△△△号」の形になっているかを見ます
- 有効期間が切れていないか:認定は5年ごとの更新制です(第5条・第7条)。標識に記載された有効期間を確認します
- 見積書・契約書面に認定番号の記載があるか:ウェブに見当たらないときは、見積書や契約書面での記載を求めます
- 依頼したい業務の区分に対応しているか:認定は営業所・業務区分ごとです。頼みたい業務(施設・交通誘導・雑踏など)を実際に扱っているかを確認します
「認定番号を尋ねたら答えを渋る」「標識をどこにも掲示していない」といった会社は、その時点で候補から外して構いません。認定の確認は、発注者が自分を守るための最初の一歩です。
よくある質問
Q. 認定を受けていない警備会社に頼むと、発注した側も罰せられますか?
A. 警備業法上、無認定営業を罰する対象は「警備業を営んだ業者側」(第57条第1号、法人の場合は第59条の両罰規定で法人にも罰金)であり、依頼した発注者を直接罰する規定はありません。ただし、契約相手が違法状態にあることで警備が突然止まる、教育・書面・監督といった発注者を守る仕組みが働かない、といった実務上のリスクは発注者が負うことになります。罰則の有無にかかわらず、認定業者を選ぶのが安全です。
Q. 「認定」と「検定」は同じものですか?
A. 別物です。認定は「会社」が警備業を営むための資格(警備業法第4条・公安委員会が付与)で、検定は「警備員個人」が持つ技能資格(第23条・第18条・検定規則)です。会社が認定を受けているのは大前提で、そのうえで交通誘導警備や雑踏警備など特定の業務では検定合格警備員の配置が別途必要になります。
Q. 認定に有効期限はありますか?
A. あります。認定の有効期間は認定を受けた日から5年です(警備業法第5条第4項)。引き続き営業するには更新を受ける必要があり(第7条)、更新しなければ認定は効力を失います。発注前には認定番号だけでなく、有効期間が切れていないかも確認しましょう。
Q. 認定証を見せてほしいと言えば確認できますか?
A. 2024年4月の改正で紙の「認定証」は廃止され、各業者が作成する「標識」の掲示・ウェブ公表制に変わりました(警備業法第6条)。現在は会社のウェブサイトに掲示された標識(認定番号を含む)で確認するのが原則です。ウェブに見当たらない場合は、営業所での掲示や、見積書・契約書面での認定番号の記載を確認してください。
Q. 自分のイベントを社員だけで警備する場合、認定は必要ですか?
A. 必要ありません。警備業法の規制対象になるのは「他人の需要に応じて」対価を得て行う警備業務です(第2条第1項)。主催者が自分のイベントを自社の従業員で警戒・整理する自主警備は、この要件に当たらないため認定は不要です。ただし外部の会社に警備を発注する場合は、その会社が認定を受けている必要があります。
まとめ|警備は「認定を受けた会社」に頼むのが大前提
警備業の認定制度とは、都道府県公安委員会の認定を受けた者しか警備業を営めないという仕組みです(警備業法第4条)。認定では欠格事由(第3条)が審査され、反社会的勢力との関係・一定の前科・薬物中毒・指導教育体制の欠如などがないことが確認されます。認定は5年ごとの更新制で(第5条・第7条)、2024年4月からは認定証に代わり標識の掲示・ウェブ公表が義務化されました(第6条)。
無認定で警備業を営むことは第57条第1号で百万円以下の罰金の対象となる犯罪であり、罰せられるのは業者側ですが、発注者も「警備が突然止まる」「教育・書面・監督の担保がない」といった実務リスクを背負います。価格だけで選ばず、まずは認定の有無と認定番号を確認する——これが発注者が自分を守る第一歩です。
認定を受けた警備会社は、お近くのエリアから探せます。
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- 関連記事:警備業の認定番号の確認方法(実務編)/警備員の検定資格とは/警備員と警察官の違い/自主警備とは/警備員の権限とできること・できないこと/警備業務の種類まるわかり
【出典・参考】
・警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条・第3条・第4条・第5条・第6条・第7条・第13条・第15条・第18条・第19条・第57条・第58条・第59条)
・警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)|e-Gov法令検索(検定の種別)
※法令は2026年7月時点でe-Gov法令検索の現行条文と照合しています。「認定証」の廃止・「標識」制への移行は2024年(令和6年)4月1日施行の改正によるものです。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する法的助言ではありません。認定番号の具体的な確認手順は警備業の認定番号の確認方法をご覧ください。
