道路の一部を使って上下水道・ガス・電気・通信・舗装などの工事を行うとき、施工者がまず確認しなければならないのが道路使用許可です。「許可の申請に交通誘導員の配置が関係すると聞いたが、何人頼めばいいのか」「そもそも誘導員の配置は法律で義務なのか」——建設会社や工事の元請・下請の担当者からよく寄せられる疑問です。ところが調べると、行政書士事務所の申請代行案内や、誘導員の人数を断定的に示すページが多く、法律のどこに何が書いてあるのかがはっきりしません。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、道路工事を発注・施工する側の目線で、道路使用許可の申請と交通誘導員の配置の関係を整理しました。法令の記述はe-Gov法令検索の現行条文(道路交通法・警備業法・検定規則)と照合し、条番号を明記しています。なお、名前のよく似た「道路占用許可」(道路法の制度)とは別物ですが、本記事は道路使用許可(道路交通法)と交通誘導員の配置に絞って解説します。
この記事でわかること
- 道路工事に道路使用許可が必要な理由と、申請するのは誰か(道路交通法第77条第1項第1号)
- 交通誘導員の配置は、警察署長が付す「許可の条件」として求められること(同条第2項・第3項)
- 交通誘導員は「何人必要」なのか——法律に一律の人数基準はないという事実
- 警備員の「交通誘導」と、警察官の「交通整理」がまったく別物である理由【比較表】
- 検定合格警備員の配置義務がかかる道路と、かからない道路(検定規則第2条)
- 施工者が押さえる、申請から警備手配までの流れ【手順フロー】
道路工事に道路使用許可が必要な理由|道路交通法第77条
道路は本来、人や車が「通行」するための場所です。その道路を、通行以外の目的で継続的に使う工事や作業は、交通の妨げになりかねません。そこで道路交通法は、一定の行為をしようとする者に、あらかじめ所轄警察署長の許可を受けるよう義務づけています。根拠は同法第77条第1項です。同項第1号は、許可を受けるべき者を次のように定めています(出典:道路交通法第77条(e-Gov法令検索))。
次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長(略)の許可(略)を受けなければならない。
一 道路において工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人(道路交通法第77条第1項第1号)
ポイントは、条文が許可を受ける者を「工事若しくは作業をしようとする者又はその請負人」としている点です。つまり、発注者本人が申請しても、工事を請け負った建設会社が申請しても構いません。実務では、実際に現場で工事を行う施工者(元請)が申請者になるのが一般的です。許可を受けるのは工事現場を管轄する警察署で、複数の警察署の管轄にまたがるときは、そのいずれかの署長の許可で足ります(同項本文)。
なお、道路の地下や上空に一定の施設(水道管・電柱・看板等)を継続的に設けて道路そのものを占有する場合は、道路交通法の使用許可とは別に、道路法にもとづく道路占用許可(道路管理者の許可)が必要になることがあります。両者は目的も根拠法も異なる別制度ですが、その詳しい違いは本記事では立ち入らず、道路使用許可と交通誘導員の関係に集中します。
交通誘導員の配置は「許可の条件」として付される
「道路工事には必ず交通誘導員を置かなければならない」と一律に定めた条文は、実は道路交通法にも警備業法にもありません。では、なぜ多くの道路工事で誘導員が配置されるのか。その法的な仕組みが、道路使用許可の「条件」です。
警察署長は、許可の申請があったとき、その行為が交通の妨害となるおそれの有無などに応じて許可の可否を判断します。第77条第2項は、次のいずれかに当たるときは許可をしなければならないと定めています。
- 第1号:現に交通の妨害となるおそれがないと認められるとき
- 第2号:許可に付された条件に従って行われることにより、交通の妨害となるおそれがなくなると認められるとき
- 第3号:現に交通の妨害となるおそれはあるが、公益上又は社会の慣習上やむを得ないものであると認められるとき
道路工事の多くは、車線の一部をふさぐなどして交通に影響を与えるため、上の第2号(条件に従えば妨害のおそれがなくなる)に当たる形で許可されます。その「条件」を付す根拠が第77条第3項です。
第一項の規定による許可をする場合において、必要があると認めるときは、所轄警察署長は、当該許可に係る行為が前項第一号に該当する場合を除き、当該許可に道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要な条件を付することができる。(道路交通法第77条第3項)
この「交通の安全と円滑を図るため必要な条件」の代表例が、交通誘導員(警備員)の配置です。ほかにも工事時間帯の指定、片側交互通行の方法、保安施設(カラーコーン・標識・照明等)の設置などが条件として付されます。つまり誘導員の配置は、「全ての道路工事に一律にかかる法定義務」ではなく、個々の許可に付される条件として求められるのが正確な理解です。署長は交通の状況の変化に応じて、付した条件を変更したり、新たに条件を付したりすることもできます(同条第4項)。
交通誘導員は「何人必要」なのか
「道路工事には誘導員を◯人」といった一律の人数基準は、道路交通法にも警備業法にも定められていません。実際の配置人数は、次の要素の組み合わせで、現場ごとに個別に決まります。
- 所轄警察署長が付す許可条件:申請内容と現場を踏まえ、必要な配置箇所が示されます
- 道路管理者との協議・仕様:国道・都道府県道・市町村道など、道路管理者の基準や工事仕様書
- 現場の交通状況:交差点の有無、車線数、歩行者や自転車の量、見通し、出入口の位置
- 工事の規模・工法:片側交互通行か全面通行止めか、掘削の範囲、工事車両の出入りの頻度
そのため、見積もり段階で「この工事は必ず◯人」と断定するのは適切ではありません。申請予定の現場図をもとに、所轄警察署の指導や道路管理者の協議内容を確認したうえで人数を固めるのが実務の流れです。人数の考え方は警備員の必要人数の決まり方もあわせてご覧ください。申請にあたっては、多くの警察署で、工事の方法や交通誘導員の配置を記した図面(道路使用状況図・現場付近の見取図など)の添付を求められます(出典:警視庁「道路使用許可申請手続について」)。
【重要】交通誘導と交通整理はまったく別物です
発注者・施工者がもっとも誤解しやすいのが、警備員が行う交通誘導と、警察官が行う交通整理の違いです。この2つは、法的な位置づけも、通行者が従う義務の有無も、根本的に異なります。
まず交通整理は、警察官等の権限です。道路交通法第6条第1項は「警察官又は(略)交通巡視員(略)は、手信号その他の信号(略)により交通整理を行なうことができる」と定めています。そして同法第7条は、道路を通行する歩行者や車両に対し、信号機の信号又は警察官等の手信号等に従わなければならないと義務づけており、これに違反すれば罰則の対象になり得ます(出典:道路交通法第6条・第7条(e-Gov法令検索))。
一方、工事現場の警備員が行う交通誘導には、このような法的な強制力はありません。警備業法第15条は、警備業者と警備員について「この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意する」ことを求めています(出典:警備業法第15条(e-Gov法令検索))。したがって、警備員の誘導は安全かつ円滑な通行のための「協力のお願い」という位置づけであり、ドライバーや歩行者に、警察官の手信号に従うような法律上の義務(第7条)が生じるわけではありません。
| 項目 | 交通整理(警察官等) | 交通誘導(警備員) |
|---|---|---|
| 行う人 | 警察官・交通巡視員 | 警備会社の警備員 |
| 根拠 | 道路交通法第6条第1項 | 警備業法にもとづく警備業務(第15条で特別な権限はないと明記) |
| 法的な強制力 | あり(第7条で従う義務・罰則あり) | なし(安全のための協力の依頼) |
| 信号と異なる指示 | できる(第6条第1項後段) | できない |
| 通行の禁止・制限 | できる(第6条第2項・第4項) | できない(お願いにとどまる) |
この違いは、単なる言葉の問題ではありません。誘導に法的な強制力がないからこそ、警備員には安全を確保しながら、通行者に無理なく協力してもらうための技能が求められます。過剰な制止や不適切な誘導は事故やトラブルの原因になり得ます。警備員に何ができて何ができないのかは警備員の権限とできること・できないことで詳しく解説しています。
検定合格警備員の配置義務がかかる道路・かからない道路
「交通誘導の警備員は、必ず検定(国家資格)の合格者でなければならないのか」という質問もよく受けます。結論は、一般の道路工事のすべてに検定合格者の配置が義務づけられているわけではない、です。
警備業法第18条は、専門的知識・能力を要し、事故時に危険が大きい特定の種別の警備業務について、検定合格者を配置して実施させることを義務づけています(出典:警備業法第18条(e-Gov法令検索))。その具体的な範囲は「警備員等の検定等に関する規則」第2条の表で定められており、交通誘導警備業務については次の道路に限って配置義務がかかります(出典:警備員等の検定等に関する規則第2条(e-Gov法令検索))。
- 高速自動車国道・自動車専用道路で行う交通誘導警備業務(同表五の項)
- 道路又は交通の状況により、都道府県公安委員会が道路における危険を防止するため必要と認めて指定した道路で行う交通誘導警備業務(同表六の項)
裏を返せば、これらに当たらない一般の市街地の道路工事などでは、検定合格警備員の配置は法律上の義務ではありません。どの道路が「公安委員会が指定した道路」に当たるかは都道府県ごとに公表されているため、該当するかどうかは所轄警察署で確認できます。
さらに重要なのが、配置義務がかかる場合でも、その現場の警備員全員が有資格者である必要はないという点です。検定規則第2条は、配置すべき人数を「交通誘導警備業務を行う場所ごとに、一人以上」と定めています。たとえば1つの現場に警備員を5人配置する場合でも、法が求めるのはその場所に検定合格者が1人以上いることであり、残りの4人が無資格でも配置義務の面では適法です。
| 工事を行う道路 | 検定合格警備員の配置 | 配置人数(義務がある場合) |
|---|---|---|
| 高速自動車国道・自動車専用道路 | 義務あり(検定規則第2条・五の項) | 場所ごとに1人以上 |
| 公安委員会が指定した道路 | 義務あり(同・六の項) | 場所ごとに1人以上 |
| 上記以外の一般の道路 | 法律上の義務なし | — |
ただし、法律上の義務がない現場でも、公共工事の仕様書や発注者の要求で「検定合格者を配置すること」が求められるケースは少なくありません。これは契約上・仕様上の要求であって、法律の配置義務とは別のものです。いずれにしても、資格者が交通誘導の安全と質を担保する目安になることは確かで、依頼先を選ぶ際の判断材料になります。検定合格警備員の制度全般は検定合格警備員とはで解説しています。
施工者が押さえる、申請から警備手配までの流れ
道路工事の道路使用許可と交通誘導員の手配は、次の順序で進めるとスムーズです。許可条件が固まる前に警備の人数を決め打ちしないことがポイントです。
- 道路使用許可の要否を確認:道路上で工事・作業を行うなら、原則として道路使用許可が必要です(道路交通法第77条第1項第1号)。あわせて道路占用許可(道路法)の要否も道路管理者に確認します。
- 現場図・工事計画を準備:工事の方法、規制の範囲、交通誘導員の配置予定を記した図面(道路使用状況図など)を用意します。
- 所轄警察署へ申請:工事現場を管轄する警察署に申請します。道路管理者の許可も要する場合は、その道路管理者を経由して申請できます(第78条第2項)。
- 許可条件を確認:許可時に付される条件(誘導員の配置箇所、規制方法、時間帯など)を確認します(第77条第3項)。この条件が、必要な警備の内容と人数を決める基礎になります。
- 警備会社に依頼・手配:許可条件と現場状況に合わせて、認定を受けた警備会社に交通誘導を依頼します。工事期間・時間帯・配置箇所を伝えて見積もりを取ります。
- 着工・運用の見直し:許可証を現場に備え、条件に沿って施工します。交通状況の変化で条件が変わることもあるため、警察・道路管理者の指導に随時対応します。
警備を依頼する相手は、都道府県公安委員会の認定を受けた警備業者であることが大前提です(警備業法第4条)。契約にあたっては、警備会社に契約締結前の概要書面と締結後の契約書面の交付が義務づけられています(同法第19条。書面は依頼者の承諾があれば電子メール等の電磁的方法での提供も認められています)。建設現場の警備全般は建設現場の警備を依頼する基礎知識、交通誘導の業務区分は交通誘導警備(2号)に対応する警備会社を探すから確認できます。費用の考え方はガードマンの単価の考え方も参考になります。
よくある質問
Q. 道路使用許可の申請は、発注者と施工会社のどちらが行いますか?
A. 道路交通法第77条第1項第1号は、許可を受ける者を「工事若しくは作業をしようとする者又はその請負人」と定めているため、どちらでも申請できます。実務では、実際に現場で工事を行う施工者(元請)が申請するのが一般的です。誰が申請者になるかは、発注時の契約で取り決めておくと混乱がありません。
Q. 交通誘導員を置けば、道路使用許可は必ず下りますか?
A. 誘導員の配置は、警察署長が付す許可条件の一つにすぎません。許可の可否は、交通の妨害となるおそれの有無や公益上の必要性などを総合して判断されます(道路交通法第77条第2項)。誘導員の配置だけで許可が保証されるわけではなく、規制方法や時間帯など、付された条件をすべて満たす必要があります。
Q. 警備員は、車を止めたり信号と違う指示を出したりできますか?
A. できません。信号と異なる手信号や通行の禁止・制限は、警察官等の交通整理の権限です(道路交通法第6条)。警備員の交通誘導は、警備業法第15条のとおり特別な権限を伴わない「協力のお願い」であり、法的な強制力はありません。だからこそ、安全に配慮した的確な誘導技能が重要になります。
Q. 交通誘導には必ず検定資格者が必要ですか?
A. すべての道路工事で必要なわけではありません。検定合格警備員の配置が義務づけられるのは、高速自動車国道・自動車専用道路と、都道府県公安委員会が指定した道路で行う交通誘導警備業務に限られます(警備員等の検定等に関する規則第2条)。その場合も義務は「場所ごとに1人以上」で、現場の警備員全員が有資格者である必要はありません。一般の道路工事では、公共工事の仕様などで求められない限り、法律上の配置義務はありません。
まとめ|「許可の条件」と「誘導と整理の違い」を押さえる
道路工事で道路の一部を使うときは、原則として所轄警察署長の道路使用許可が必要です(道路交通法第77条第1項第1号)。交通誘導員の配置は、すべての工事に一律でかかる法定義務ではなく、許可に付される条件として求められるものです(同条第3項)。人数に一律の基準はなく、許可条件・道路管理者との協議・現場状況で個別に決まります。また、警備員の交通誘導は警察官の交通整理と違って法的な強制力を持たない協力の依頼であり(警備業法第15条)、検定合格者の配置義務も高速道路・自動車専用道路や公安委員会の指定道路に限られます(検定規則第2条)。この構造を押さえておけば、許可申請と警備手配の段取りで迷いません。
交通誘導を含む道路工事の警備は、工事現場のあるエリアの警備会社に依頼するのが基本です。まずはお近くの地域から探してみてください。
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- 業務区分から探す:交通誘導警備(2号)に対応する警備会社
- 関連記事:道路占用許可と道路使用許可の違い/建設現場の警備を依頼する基礎知識/検定合格警備員とは/警備員の権限とできること・できないこと/警備員の必要人数の決まり方
【出典・参考】
・道路交通法(昭和35年法律第105号)|e-Gov法令検索(第6条・第7条・第77条・第78条)
・警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第4条・第15条・第18条・第19条)
・警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)|e-Gov法令検索(第2条)
・警察庁「道路使用許可の概要、申請手続等」
・警視庁「道路使用許可申請手続について」(申請書類・道路使用状況図)
※法令は2026年7月時点でe-Gov法令検索の現行条文と照合しています。道路使用許可の申請書類・運用の細部は都道府県警察により異なる場合があるため、実際の申請は所轄警察署にご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する法的助言ではありません。
