「ガードマンを1人頼むと、結局いくらかかるのか」——答えを先に言うと、日勤8時間でおおむね1.5万〜2.5万円/1人1日が目安です。ただ、この金額を見て「警備員の日当ってそんなに高いの?」と感じた方にこそ読んでほしいのがこの記事です。

警備員本人が受け取る日当と、警備会社に支払う請求単価はまったくの別物です。この差額の正体(カラクリ)を知らないまま「安い会社」を選ぶと、法定コストを削った警備を買ってしまうリスクがあります。全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、国土交通省・全国警備業協会の一次資料をもとに、1人あたり単価の構造を分解します。

この記事でわかること

  • ガードマン1人1日あたりの費用目安(業務別・時間帯別)
  • 「日当」と「請求単価」が違う理由——価格の3層構造
  • 労務単価×1.48で計算する適正水準の目安(全国警備業協会の資料に基づく)
  • 安すぎる見積で削られやすいコストと発注者側のリスク
  • 見積を受け取ったときのチェックリスト

ガードマン1人あたりの費用目安|まず早見表

そもそも「ガードマン」は通称で、法律上は警備業法に基づく警備員を指します(区分の全体像は警備業務の種類まるわかり)。1人1日あたりの目安は次のとおりです。

依頼内容 1人1日(8時間)の目安 備考
交通誘導(一般警備員) 約1.5万〜2.2万円 公的単価(後述)は賃金相当で16,749円
交通誘導(検定合格警備員) 約1.8万〜2.8万円 高速自動車国道・自動車専用道路と、公安委員会が指定した道路では配置が義務。ただし義務は「場所ごとに1人以上」で、全員が検定合格者である必要はない(警備業法第18条・検定規則第2条)
施設警備(日勤) 約1.5万〜2.5万円 月額契約が中心。月額の試算はこちら
イベント警備 約1.5万〜3万円 土日祝・繁忙期は上振れ。規模別の目安はこちら
夜間・深夜帯 昼間の約1.25〜1.5倍 22時〜5時の賃金に深夜割増(労働基準法第37条第4項・25%以上)がかかることに加え、夜勤の人員確保が難しいことが上乗せ要因

※編集部が公的単価と警備会社・業界メディアの公表情報を基に整理した実勢の幅です。地域・時期・契約条件により変動します。時間貸し(1時間単位)に対応する会社もあり、実勢では時給換算2,000〜3,000円程度が中心帯です。

「日当」と「請求単価」は別物|価格の3層構造を分解する

「警備員の求人は日給1万円前後なのに、なぜ会社に払うと2万円を超えるのか」。この疑問に、業界団体の一般社団法人全国警備業協会が発注者向け資料「警備料金の基礎知識」で明確な答えを示しています。警備料金は次の3層で構成されます(出典:全国警備業協会「警備料金の基礎知識」(解説集2026年5月・第3版))。

内容 水準
① 労務費(賃金) 警備員本人が受け取るべき賃金相当額。公共工事設計労務単価に対応する部分 100%(基準)
② 事業主が負担すべき必要経費 法定福利費(社会保険・労働保険の会社負担分)=労務単価の約16%、警備員の募集費・制服装備品費・法定教育費などの労務管理費等、現場作業経費 労務単価の48%
③ 一般管理費等 本社機能の維持費(管制・事務・営業)と適正利潤 会社により異なる

つまり、請求単価と日当の差額は「中抜き」ではなく、社会保険料・教育・装備・管制といった、まともな警備会社なら必ずかかるコストです。警備業法は警備員への教育を義務づけており(警備業法第21条)、教育費は法律上削れない性質のお金です。

公的単価で「適正水準」を計算してみる

①の賃金部分には公的な物差しがあります。国土交通省が毎年公表する公共工事設計労務単価で、令和8年3月適用分の全国加重平均は次のとおりです(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。

  • 交通誘導警備員B(検定資格なし):16,749円(前年比+6.7%)
  • 交通誘導警備員A(1級・2級検定合格者):18,911円(前年比+5.8%)

国土交通省はこの単価について「事業主が負担すべき人件費(必要経費分)は含まれていません」と明記しています。そこで②の必要経費48%を乗せると、公共工事の積算水準は次のようになります(編集部試算)。

  • 一般警備員:16,749円 × 1.48 ≒ 約24,800円/1人1日
  • 検定合格警備員:18,911円 × 1.48 ≒ 約28,000円/1人1日

ここにさらに③一般管理費等が加わったものが本来の請負価格です。民間の実勢見積は競争によりこれより低いことも多いのですが、価格の妥当性を見るときは「全国平均」ではなく「自県の労務単価」を物差しにしてください。労務単価は都道府県別に設定されており、交通誘導警備員Bは高知県13,800円から東京都18,700円まで、Aは高知県16,200円から愛知県22,400円までと開きがあります(令和8年3月適用)。つまり全国平均を下回る金額が、その県では適正水準ということもあります。自県の労務単価(=賃金相当額)そのものを大きく下回る1人1日単価が提示された場合に、①〜③のどこを削って成立させているのかを確認する——という読み方が実態に合います。自県の水準は警備会社の料金相場まるわかりとあわせてご確認ください。

安すぎる見積では何が削られるのか

安い見積が一概に悪いわけではありません(仕様の工夫・効率化・地域差など正当な理由もあります)。問題は、理由の説明がつかない安さです。構造上、削られやすいのは次の項目です。

  • 法定福利費:社会保険・労働保険の会社負担分です。全国警備業協会は「警備料金標準見積書の策定について」で、法定福利費を「競争上変動費として扱うべきではなく、固定費として見積から契約まで必要な労務費と合わせて適正に確保する必要がある」経費と位置づけ、見積時に内訳として明示することを推進しています。見積書で内訳が確認できるかは、ひとつの目安になります。
  • 教育・訓練費:警備業法第21条の法定教育に加えた現場訓練の費用。削られると隊員の質・事故対応力に直結します。
  • 管制・欠員補充体制:急な欠員時に代わりの警備員を手配する体制のコスト。ここが弱い会社は「当日人が来ない」リスクが上がります。
  • 警備員の賃金そのもの:賃金が相場より低い会社は人が集まらず、経験の浅い隊員に偏りがちです。

発注者側のリスクは「品質の低い警備を買うこと」だけではありません。極端な低価格での発注は、警備員の処遇悪化を通じて業界全体の人手不足を深刻化させ、次に頼みたいときに手配できないという形で返ってきます。なお、建設会社が元請として警備会社へ下請発注する場合について、国土交通省は「下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為です」と明記しています。

見積を受け取ったら|1人単価チェックリスト

  1. 単価の前提を確認:1人1日か1時間か。8時間を超えた場合の延長単価はいくらか。
  2. 資格者の区分:検定合格警備員と一般警備員で単価が分かれているか。高速自動車国道・自動車専用道路および公安委員会指定道路では、場所ごとに1人以上の検定合格者配置が必要ですが、全員分を検定合格者単価で計上する必要はありません。人数の内訳を確認しましょう(相場記事参照)。
  3. 割増条件:深夜(原則22時〜翌5時)・休日・残業の割増率が明示されているか。深夜は労働基準法第37条第4項により警備員へ25%以上の割増賃金支払いが義務のため、深夜料金が昼間と同額の見積はむしろ不自然です。
  4. 法定福利費の扱い:内訳に計上されているか、または含む旨が明記されているか。
  5. 労務単価との比較:自県の公共工事設計労務単価と比べて極端に低くないか。
  6. キャンセル・中止時の取り決め:雨天中止時の費用負担が決まっているか。
  7. 契約書面:警備業法第19条により、警備会社には契約前の概要書面と契約時の詳細書面の交付が義務づけられています。書面の話が出ない会社は避けましょう。

2〜3社から同一条件で見積を取り、総額ではなく内訳で比較するのが確実です。進め方は警備の相見積もりの取り方で解説しています。

よくある質問

Q. ガードマン1人を1日だけ頼めますか?

A. 単発(スポット)対応の可否は会社によります。対応する場合も、単発は管理コストの割合が大きくなるため、長期契約より1日あたり単価は高めになるのが一般的です。

Q. 1時間だけならいくらですか?

A. 時間貸しに対応する会社では時給換算2,000〜3,000円程度が実勢の中心帯ですが、最低稼働時間(例:4時間〜)が設定されていることが多く、「1時間分の料金」だけで頼めるケースは限られます。

Q. 警備員本人にはいくら渡っているのですか?

A. 各社の雇用契約によるため一概には言えませんが、公的な賃金の物差しである公共工事設計労務単価(交通誘導警備員B 16,749円/日)が「本人が受け取るべき賃金相当額」の基準です。請求単価との差は法定福利費・教育費・管理費等に充てられる構造です。

Q. 検定合格警備員を指定すると、いくら高くなりますか?

A. 公的単価上の差はA・Bで1日あたり2,162円(18,911円−16,749円)。必要経費(労務単価の48%)を含めた請求ベースでは1日約3,200円の差になるのが計算上の目安です(編集部試算・地域や会社により異なります)。

Q. 個人でもガードマンを頼めますか?

A. 多くの警備会社は法人・個人を問わず契約可能です(引っ越し時の車両誘導、住宅工事など)。ただし個人向けの単発依頼は割高になりやすく、対応可否も会社によります。

まとめ|「安さの理由」を説明できる会社を選ぶ

ガードマン1人の費用は日勤8時間で1.5万〜2.5万円が目安。その内側は「賃金100+必要経費48+一般管理費」という3層構造で、日当との差額は警備の品質と法令順守を支えるコストです。相場より大きく安い見積には理由の説明を求め、説明できない会社は候補から外す——これが1人あたり単価で失敗しない最短ルートです。

適正な単価かどうかは、複数社を同じ条件で比べるのがいちばん確実です。


【出典・参考】
国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(交通誘導警備員A・B単価、必要経費が含まれない旨、不当行為の注記)
一般社団法人全国警備業協会「警備料金の基礎知識」(本編2024年11月/解説集2026年5月・第3版)(必要経費48%・法定福利費約16%の構成、法定福利費の内訳明示)
警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第18条・第19条・第21条)
・労働基準法(昭和22年法律第49号)第37条第4項(深夜割増25%以上)
※法令・単価は2026年7月時点で各一次情報と照合しています。本文中の料金はいずれも目安であり、実際の金額は個別の見積によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する助言ではありません。