「常駐警備を置くほどの予算はない。でも無人のままでは不安」——事務所ビル・店舗・工場・マンションの管理でこの悩みに直面したとき、選択肢に挙がるのが巡回警備です。警備員が施設に常駐せず、決められた頻度で施設を訪れて点検する方式で、常駐よりコストを抑えつつ「人の目」を確保できるのが特徴です。

ところが検索して出てくる記事は、警備員の仕事内容を紹介する求職者向けの内容や、自社サービスの紹介が中心で、発注者が知りたい「常駐・機械警備とどう使い分けるのか」「巡回頻度はどう決めるのか」「料金はどういう構造か」への答えは断片的です。

この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、依頼する側の目線で巡回警備を整理しました。法令の記述はe-Gov法令検索の現行条文と照合しています。

この記事でわかること

  • 巡回警備の法律上の位置づけ(警備業法第2条第1項第1号=1号警備)
  • 常駐警備・機械警備との違い【比較表】と使い分けの考え方
  • 巡回頻度・時間帯を決めるときの設計ポイント
  • 料金の組み立て方(何で金額が決まるか)
  • 巡回警備が向いている施設・向かない施設と、依頼の流れ

巡回警備とは|1号警備(施設警備)の一形態

巡回警備とは、警備員が施設に常駐せず、定期または不定期に施設を訪れて(あるいは車両で複数施設を回りながら)、盗難等の事故の発生を警戒・防止する業務です。法律上は、警備業法第2条第1項第1号が定める「事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務」——いわゆる1号警備(施設警備)の一形態に当たります(出典:警備業法第2条(e-Gov法令検索))。

「巡回警備」という言葉自体は法律の条文にある区分名ではなく、常駐警備・機械警備と並ぶ契約形態(サービス提供の方式)の呼び名です。ただし警察庁の統計では1号警備業務の内訳として「巡回」が独立に集計されており、その定義は「複数の警備業務対象施設を車両等で巡回するなど、警備業務対象施設に常駐せずに盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務」とされています。巡回業務を実施する警備業者は全国2,875業者(警備業者全体の26.6%・令和6年12月末現在)で、1号警備業務全体の6,974業者(64.5%)と比べるとおおむね4社に1社という規模感です。施設警備を扱う会社が必ず巡回にも対応するとは限らないため、依頼先を選ぶ際は「巡回の実績があるか」を確認してください(出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」)。

常駐警備・機械警備との違い【比較表】

施設を守る方式は、大きく「常駐」「巡回」「機械」の3つです。発注者目線で違いを整理すると次のとおりです。

項目 常駐警備 巡回警備 機械警備
人の目 配置時間中は常にある 巡回時のみ なし(センサーによる24時間監視+異常時に駆けつけ)
異常への対応速度 即時 巡回時に発見(巡回間の異常は発見が遅れる) 検知は即時・対応は警備員の到着後
受付・出入管理などの付帯業務 可能 常時の受付・入退管理は不可(訪問時点の開閉館・施錠確認は契約により可) 不可
費用感 高い(人件費が配置時間分かかる) 中(巡回した時間・回数分だけ) 低〜中(月額制・初期費用あり)
向くケース 来訪者対応や即時対応が必要な施設 無人時間帯の点検を人の目で行いたい施設 完全無人の時間帯が長い施設

実務でよくあるのは「機械警備+巡回警備」「日中は常駐+夜間は巡回」といった組み合わせです。機械警備(警備業法第2条第5項に定める1号警備の一形態)はセンサーで異常を検知できますが、火の始末や施錠忘れ、設備の異音、敷地内の不審な痕跡といった「異常一歩手前」の状態は、人が現地を見なければ気づけません。巡回警備はこの隙間を埋める役割を担います。方式全体の整理は警備業務の種類まるわかりもご覧ください。

巡回警備で依頼できる業務内容

契約で定める内容によりますが、代表的な業務は次のとおりです。

  • 外周・敷地内の点検:不審者・不審物・侵入痕跡の有無、フェンスや出入口の状態確認
  • 施錠・開錠の確認と代行:閉店・退勤後の施錠確認、開閉館業務(鍵の預託を伴う場合は管理方法を契約で明確に)
  • 建物内の点検:火気・水漏れ・消灯・窓の閉め忘れ・設備異常の確認
  • 駐車場・共用部の確認:不正駐車、たまり場化・いたずらの抑止
  • 異常発見時の初動対応:状況確認、契約先・警察・消防への通報、応急措置と報告

巡回の形態には、決まった時刻に回る定時巡回と、時刻をあえて変える不定期(ランダム)巡回があります。防犯目的では「毎晩◯時に来る」と外部から予測されにくいランダム巡回を組み合わせるのが一般的です。

巡回頻度・時間帯の設計|「何回」より「何のために」から決める

巡回警備の効果と費用は、頻度×時間帯×1回あたりの点検内容でほぼ決まります。頻度に法律上の基準はなく、施設のリスクに合わせて設計します。次のチェックで考えを整理してみてください。

  • 守りたいリスクは何か:侵入・盗難か、火災・水漏れ等の設備事故か、たまり場・いたずら防止か(リスクによって適切な時間帯が変わります)
  • 無人になる時間帯はいつからいつまでか:夜間のみか、休日終日か、長期休暇期間か
  • 過去のヒヤリハット:不審者・車上荒らし・落書き等が起きた曜日・時間帯はあるか(その時間帯に巡回を厚く)
  • 機械警備との役割分担:侵入検知は機械に任せ、巡回は施錠・火気・設備の「目視でしか分からない点検」に絞れないか
  • 報告の要否:巡回報告書をどの頻度・様式で受け取るか(異常なしの記録も、管理責任の説明資料として価値があります)

「夜間に1回でいいのか、3回必要か」は、この整理を持って警備会社に相談すると、根拠のある提案を受けやすくなります。

料金の考え方|「巡回1回あたり×回数」または月額パッケージ

巡回警備の料金は、一般に「巡回1回あたりの単価×月の巡回回数」または月額固定で組み立てられ、金額は次の要素で変わります(回数・時間帯別の目安は巡回警備の費用相場で解説しています)。

  • 巡回回数と時間帯:回数が多いほど、また深夜帯(原則として22時〜翌5時。労働基準法第37条第4項により25%以上の割増賃金が必要な時間帯)ほど高くなります
  • 1回あたりの滞在時間・点検項目数:外周のみか、建物内の点検まで含むか
  • 施設の規模と立地:面積・棟数、警備会社の拠点からの距離(巡回ルートに組み込みやすい立地は有利です)
  • 鍵の預託・緊急対応の有無:開錠を伴う建物内点検や、異常時の駆けつけ対応を含めるか

常駐警備が「配置時間の人件費」をまるごと負担する方式(日勤のみの常駐でも月額35万円前後からが目安)なのに対し、巡回警備は必要な時間だけを買う方式のため、無人時間帯の見守りをずっと低い月額から組めるのが利点です。常駐の具体的な試算は施設警備の費用相場|月額いくら?日勤・24時間体制別に試算で解説しています。なお、巡回警備の公的な料金統計はなく、実際の金額は上記の条件で大きく変わるため、同一条件で複数社から見積を取って比較することをおすすめします(手順は警備の相見積もりの取り方)。

巡回警備が向いている施設・向かない施設

向いている施設

  • 夜間・休日が無人になる事務所ビル・店舗・工場・倉庫
  • 複数の物件を持つオーナー・管理会社(複数施設をまとめて巡回契約にできる場合があります)
  • マンション・駐車場など、共用部の防犯・秩序維持が目的の施設
  • 機械警備を導入済みで、目視点検だけ人に任せたい施設
  • 長期休暇・閉鎖期間中の施設、使用頻度の低い施設

向かない(他方式を検討すべき)施設

  • 来訪者の受付・出入管理が必要 → 常駐警備
  • 侵入をリアルタイムに検知したい・無人時間が非常に長い → 機械警備(+巡回の併用)
  • 現金や高額商品を扱い、即時対応が必須 → 常駐警備+機械警備

依頼の流れ|問い合わせから巡回開始まで

  1. 問い合わせ・ヒアリング:施設の種類・所在地・無人になる時間帯・心配している事柄を伝えます
  2. 現地調査:警備会社が施設を確認し、巡回ルート・点検項目・頻度を提案します
  3. 見積・比較:頻度・時間帯・点検項目が同一条件になるよう揃えて複数社を比較します
  4. 契約:警備業法第19条により、警備会社には契約締結前の概要書面と締結後の契約書面の交付が義務づけられています。巡回頻度・報告方法・鍵の管理・異常時の対応範囲が書面に明記されているか確認しましょう
  5. 巡回開始・報告確認:開始後は巡回報告書に目を通し、点検項目の過不足を定期的に見直します

なお、依頼先は都道府県公安委員会の認定を受けた警備業者であることが大前提です(警備業法第4条)。認定を受けた業者は、認定を示す標識を主たる営業所の見やすい場所に掲示するほか、事業規模が著しく小さい場合等を除きウェブサイト等で公衆の閲覧に供することが義務づけられています(同法第6条第1項)。巡回先の現場に標識があるとは限らないので、確認は会社のウェブサイトや見積書・契約書面に記載された認定証番号で行いましょう。手順は警備業の認定番号の確認方法で解説しています。

よくある質問

Q. 巡回と巡回の間に侵入されたら意味がないのでは?

A. 巡回警備は「常時監視」ではないため、巡回間の異常をリアルタイムに検知することはできません。侵入検知が主目的なら機械警備を軸にし、巡回警備は施錠・火気・設備など目視点検の役割で併用するのが合理的です。巡回の存在自体(警備会社のステッカー・巡回車両・記録)が侵入をためらわせる抑止効果を狙う面もありますが、効果を保証するものではありません。

Q. 鍵を預けるのが不安です。

A. 鍵の預託は建物内点検に必要な一方、管理方法は必ず契約で確認すべきポイントです。鍵の保管方法・持ち出し記録・紛失時の責任と保険の扱いが書面(警備業法第19条の交付書面)に明記されているかを確認しましょう。外周巡回のみなら鍵を預けない契約も可能です。

Q. 毎日でなく、週2〜3回だけ頼めますか?

A. 多くの警備会社で可能です。巡回警備は頻度を柔軟に設計できるのが利点で、「平日の夜間のみ」「休日のみ」「長期休暇期間のみ」といった契約も相談できます。

Q. 巡回警備に資格者の配置義務はありますか?

A. 一般的な事務所ビルや店舗の巡回警備に、検定合格警備員の配置義務はありません。配置義務がかかるのは警備業法第18条と「警備員等の検定等に関する規則」第2条が定める特定の業務に限られ、施設警備業務では原子力関連施設(防護対象特定核燃料物質取扱施設)と空港の2つだけが対象です。ただし警備業者には、その警備員に対して警備業務を適正に実施させるための教育を行う義務があり(警備業法第21条第2項)、施設警備業務検定の合格者の在籍状況は会社の質を見る目安になります。

まとめ|「常駐は重い、無人は不安」の中間解

巡回警備は、警備業法第2条第1項第1号の1号警備(施設警備)を「必要な時間だけ」提供する方式で、常駐警備よりコストを抑えながら、機械警備では拾えない目視の点検を任せられるのが本質です。頻度・時間帯・点検項目の設計次第で費用対効果が大きく変わるため、守りたいリスクを整理したうえで、複数社の提案を比較して決めましょう。

巡回警備に対応する警備会社は、お近くのエリアから探せます。


【出典・参考】
警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条・第4条・第6条・第18条・第19条・第21条)
警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)|e-Gov法令検索(第2条)
警察庁「令和6年における警備業の概況」(1号警備・巡回の実施業者数)
労働基準法(昭和22年法律第49号)|e-Gov法令検索(第37条第4項・深夜割増)
※法令・統計は2026年7月時点でe-Gov法令検索および警察庁公表資料と照合しています。本文中の費用に関する記述はいずれも目安であり、実際は個別の見積によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する助言ではありません。