警備会社の見積が適正かどうかを判断するとき、いちばん確かな物差しになるのが「労務単価」——国が毎年公表している警備員の公的な賃金単価です。「交通誘導警備員A・B」「警備員A・B・C」という区分を理解すると、見積書の単価が高いのか安いのか、根拠を持って読めるようになります。

この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、令和8年3月から適用されている最新の公共工事設計労務単価を中心に、労務単価の意味・47都道府県別の単価・見積額への換算方法を発注者目線で解説します。数値はすべて国土交通省の公表資料(一次情報)と照合しています。

この記事でわかること

  • 警備員の労務単価とは何か(公共工事設計労務単価と建築保全業務労務単価の違い)
  • 交通誘導警備員A・Bの定義と最新単価(令和8年3月適用・前年比)
  • 47都道府県別の交通誘導警備員A・B単価一覧【この記事の独自資産】
  • 労務単価から警備会社への発注額(請求単価)を逆算する計算式
  • 民間工事の見積で労務単価をどう使うか・注意点

警備員の労務単価とは|国が毎年公表する「賃金の物差し」

警備員に関する公的な労務単価は2種類あります。どちらも国土交通省が毎年公表しており、公共工事・官公庁施設の積算に使われる単価です。

名称 対象となる警備 職種区分 改定時期
公共工事設計労務単価 工事現場の交通誘導(2号警備) 交通誘導警備員A/B 毎年3月適用(2月頃公表)
建築保全業務労務単価 官庁施設の施設警備(1号警備) 警備員A/B/C 毎年4月適用

公共工事設計労務単価は、農林水産省と国土交通省が毎年実施する公共事業労務費調査の結果に基づいて決定され、47都道府県別・51職種別に設定されます。単価は「所定労働時間内8時間あたりの賃金」で、警備業では交通誘導警備員A・Bの2職種が該当します(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。

警備業務の区分(1号〜4号)について確認したい方は警備業務の種類まるわかりをご覧ください。

最新の交通誘導警備員A・B単価|令和8年3月適用

AとBの違いは「検定資格の有無」

国土交通省の資料では、交通誘導警備員A・Bは次のとおり定義されています。

職種 定義(国土交通省資料より) 全国加重平均(1日8時間) 前年比
交通誘導警備員A 警備業者の警備員(警備業法第2条第4項に規定する警備員をいう)で、交通誘導警備業務に従事する交通誘導警備業務に係る一級検定合格警備員又は二級検定合格警備員 18,911円 +5.8%
交通誘導警備員B 警備業者の警備員で、交通誘導警備員A以外の交通の誘導に従事するもの 16,749円 +6.7%

※金額は加重平均値、伸率は単純平均値(国土交通省公表資料の注記による)。

差額は1日あたり約2,162円(約2,200円)。高速自動車国道・自動車専用道路と、都道府県公安委員会が必要と認めた道路での交通誘導警備業務では、検定合格警備員(A相当)の配置が義務づけられています(警備業法第18条、警備員等の検定等に関する規則第2条)。ただし義務の内容は「警備業務を行う場所ごとに1人以上」であり、現場の全員が検定合格者である必要はありません。5人配置の現場なら1人がA、残り4人はBという構成でも適法です。見積を読むときは「A単価が何人日、B単価が何人日」の内訳で確認しましょう。

全職種の全国加重平均値は25,834円となり、初めて25,000円を超えました。伸び率は全国全職種の単純平均で前年度比+4.5%。必要な法定福利費相当額を加算する措置を行った平成25年度の改定から14年連続の上昇です。交通誘導警備員はA・Bとも全職種平均を上回る伸び率で引き上げられており、警備料金の上昇基調の直接の背景になっています。

労務単価に「含まれていない」ものに注意

ここが労務単価のいちばん重要な読み方です。国土交通省は資料の中で次の点を明記しています。

  • 労務単価は労働者に支払われる賃金(基本給相当額・基準内手当・臨時の給与・実物給与)に係るもの
  • 時間外・休日・深夜労働の割増賃金は含まれない
  • 現場管理費(法定福利費の事業主負担分、研修訓練等の費用)や一般管理費等の諸経費は含まれない——「例えば、交通誘導警備員の単価については、警備会社に必要な諸経費は含まれていない」と職種名を挙げて注記
  • 「労務単価には、事業主が負担すべき人件費(必要経費分)は含まれていません。よって、下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為です」

つまり「交通誘導警備員B=16,749円」をそのまま警備会社への支払額と考えるのは誤りで、労務単価はあくまで警備員本人の賃金相当額です。発注額への換算方法は後述します。

【47都道府県別】交通誘導警備員A・Bの労務単価一覧

労務単価は都道府県ごとに異なります。令和8年3月から適用される単価表から、交通誘導警備員A・Bを一覧にしました(出典:農林水産省・国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価表」)。自社の県の水準を確認し、見積を読む物差しにしてください。

都道府県 交通誘導警備員A 交通誘導警備員B 都道府県 交通誘導警備員A 交通誘導警備員B
北海道 18,700円 15,500円 滋賀県 18,400円 15,600円
青森県 17,300円 14,900円 京都府 18,500円 15,000円
岩手県 18,300円 15,600円 大阪府 18,200円 15,900円
宮城県 20,100円 16,800円 兵庫県 18,700円 15,600円
秋田県 17,500円 14,800円 奈良県 18,800円 15,800円
山形県 19,800円 16,600円 和歌山県 18,200円 15,600円
福島県 20,200円 16,900円 鳥取県 18,100円 14,600円
茨城県 19,300円 18,500円 島根県 18,200円 15,600円
栃木県 19,200円 17,500円 岡山県 18,900円 16,500円
群馬県 18,000円 16,800円 広島県 18,700円 16,000円
埼玉県 19,200円 18,000円 山口県 18,500円 15,500円
千葉県 19,700円 18,100円 徳島県 17,900円 16,000円
東京都 20,500円 18,700円 香川県 18,200円 16,300円
神奈川県 20,200円 18,700円 愛媛県 17,100円 14,500円
山梨県 18,700円 17,300円 高知県 16,200円 13,800円
長野県 17,100円 15,300円 福岡県 18,200円 16,300円
新潟県 19,400円 17,500円 佐賀県 18,200円 16,100円
富山県 19,600円 18,300円 長崎県 18,500円 17,200円
石川県 20,400円 18,200円 熊本県 17,700円 15,500円
岐阜県 21,100円 17,600円 大分県 18,200円 14,900円
静岡県 21,800円 17,400円 宮崎県 18,200円 14,400円
愛知県 22,400円 17,800円 鹿児島県 19,300円 16,700円
三重県 21,400円 17,200円 沖縄県 16,800円 14,300円
福井県 19,100円 16,800円

※令和8年3月適用の公共工事設計労務単価表(農林水産省・国土交通省、令和8年2月公表)より編集部が転記。転記ミス防止のため主要都県は複数の公表資料と突合していますが、積算等に使用する際は必ず国土交通省の公表資料(原典)をご確認ください。労務単価は毎年3月に改定されます。

県別単価から読み取れる3つのポイント

  • 最高と最低で1.3倍以上の開き:Aの最高は愛知県22,400円、最低は高知県16,200円。同じ「交通誘導警備員1名」でも、県が違えば適正価格は大きく変わります。見積比較は同一県内で行うのが基本です。
  • 都市部=最高値とは限らない:Aは中部圏(愛知・静岡・三重・岐阜)が東京都を上回っています。地域の需給を反映した実勢調査の結果であり、「東京より高いから不当」とは言えません。
  • AとBの差も県によって異なる:愛知県では差が4,600円ある一方、茨城県では800円。検定合格者の指定が必要な現場では、自県のA単価を基準にしましょう。

施設警備の物差し「建築保全業務労務単価」(警備員A・B・C)

施設警備(1号警備)には、官庁施設の保全業務の積算に使われる建築保全業務労務単価が物差しになります。令和8年度単価では、警備員の全国平均は17,040円(前年度比+9.1%)。全国を10地区に区分して設定されており、主要地区の日割基礎単価(1日8時間あたり)は次のとおりです。

地区 警備員A
(施設警備1級検定合格者又は実務6年以上程度)
警備員B
(施設警備2級検定合格者又は実務3〜6年程度)
警備員C
(A・Bの指示で業務・実務3年未満程度)
東京 22,300円 19,100円 16,900円
愛知 21,400円 18,300円 16,200円
大阪 20,900円 17,800円 15,800円
福岡 17,800円 15,200円 13,500円

※出典:国土交通省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」。日割基礎単価には時間外・休日・深夜の割増賃金や諸経費は含まれません。宿直単価は全国一律5,000円/回。

施設警備の月額試算への落とし込み方は施設警備の費用相場|月額いくら?で詳しく解説しています。

労務単価から発注額を逆算する|「×1.48+一般管理費」の構造

労務単価が「賃金相当額のみ」である以上、警備会社への発注額はこれに必要経費を上乗せした金額になります。業界団体の一般社団法人全国警備業協会は、発注者向け資料「警備料金の基礎知識」(解説集2026年5月・第3版)で次の構成を示しています。

  • ①公共工事設計労務単価=100%(警備員本人が受け取るべき賃金)
  • ②事業主(警備会社)が負担すべき必要経費=労務単価の48%(うち法定福利費が労務単価の約16%。ほかに労務管理費等・現場作業経費)
  • ③さらに一般管理費等(会社運営の経費と適正利潤)が加わり、消費税を加えて請負価格になる

(出典:全国警備業協会「警備料金の基礎知識」

①+②で、警備会社が警備員1人を1日雇用するのに必要な経費の水準が出ます。これは請負価格ではなく原価の下限に近い数字で、実際の請求額にはさらに③一般管理費等と消費税が乗ります(編集部試算・全国加重平均ベース)。

  • 交通誘導警備員B:16,749円 × 1.48 ≒ 約24,800円/1人1日
  • 交通誘導警備員A:18,911円 × 1.48 ≒ 約28,000円/1人1日

民間工事の実勢はこれより低いことも珍しくありません。労務単価は最低基準ではなく実勢賃金の平均値なので、これを下回る見積が直ちに不当というわけではありません。ただし労務単価を大きく下回る場合は、賃金・法定福利費・教育費のどこにしわ寄せが行っていないかを確認する材料にはなります。区分別の相場全体は警備会社の料金相場まるわかりで整理しています。

積算ルールも「実態に合わせて」改定されてきた

公共工事の積算では、交通誘導警備員の扱いが次のように見直されてきました。年々「警備員のコストを正当に計上する」方向で改定されています。

民間の発注で労務単価を使うときの注意点

  1. 労務単価は民間契約を拘束しない:あくまで公共工事の積算基準です。ただし警備員の賃金水準の実態調査に基づく数値なので、民間でも「適正価格の物差し」として十分機能します。
  2. 「労務単価=請求単価」と誤解しない:前述のとおり賃金相当額のみ。労務単価ちょうどの見積は、むしろ必要経費が確保されていない可能性があります。
  3. 割増は別建て:深夜(原則22時〜翌5時)は労働基準法第37条第4項により25%以上の割増賃金が義務のため、夜間の警備は労務単価ベースより高くなります。
  4. 毎年3月に数値が変わる:見積書の日付と適用単価の年度がずれていないか確認しましょう。14年連続で上昇しており、昨年度の相場観のままだと「高くなった」と感じやすい点にも注意です。
  5. 比較は同一条件・同一県で:複数社比較のコツは警備の相見積もりの取り方をご覧ください。

よくある質問

Q. 労務単価は民間工事の警備にも適用されますか?

A. 法的な適用はありません。ただし全国の警備員の賃金実態調査に基づく公的数値のため、民間の見積が適正水準かを判断する物差しとして使えます。

Q. 交通誘導警備員AとBはどちらを頼めばいいですか?

A. 高速自動車国道・自動車専用道路と、都道府県公安委員会が指定する路線での交通誘導は、検定合格警備員(A相当)の配置が警備業法第18条により義務づけられています。それ以外の現場はB(検定資格なし)でも法令上は問題ありません。該当するかは警備会社または所轄警察署に確認しましょう。

Q. 警備員本人には労務単価どおりの賃金が支払われているのですか?

A. 労務単価は「支払われるべき賃金相当額」の積算上の基準であり、個々の警備員の賃金は各社の雇用契約によります。国土交通省は下請代金から必要経費分を値引くことを不当行為と明記しており、極端に安い発注は警備員の処遇悪化につながる構造です。

Q. 最新の単価はどこで確認できますか?

A. 国土交通省ホームページの「公共事業労務費調査・公共工事設計労務単価について」のページで、毎年2月頃に翌3月適用の単価が公表されます。建築保全業務労務単価も同省から毎年公表されます。

まとめ|労務単価は「見積を読む物差し」として使う

警備員の労務単価は、交通誘導なら公共工事設計労務単価(A 18,911円・B 16,749円/全国加重平均)、施設警備なら建築保全業務労務単価が公的な基準です。これは賃金相当額であり、発注額はおおむね「×1.48+一般管理費等」の水準になる——この構造さえ押さえれば、見積の妥当性は自分で判断できます。

労務単価は都道府県別に設定されています。自県の水準を踏まえて、地域の警備会社を比較してみてください。


【出典・参考】
国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(交通誘導警備員A・Bの単価・定義、全職種平均25,834円、14年連続上昇、必要経費が含まれない旨の注記)
・農林水産省・国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価表」(47都道府県別単価。国土交通省 公共工事設計労務単価ページ
国土交通省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」(警備員A・B・Cの地区別単価、警備員平均17,040円・+9.1%、宿直単価)
国土交通省「交通誘導警備員の積算基準の改定について」(平成30年度・交替要員の計上方式への改定)
一般社団法人全国警備業協会「警備料金の基礎知識」(本編・解説集2026年5月第3版)(必要経費48%・法定福利費約16%の構成)
警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第18条)/労働基準法第37条第4項(深夜割増25%以上)
※法令・単価は2026年7月時点で各一次情報と照合しています。本文中の試算はいずれも目安であり、実際の金額は個別の見積によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する助言ではありません。