警備会社とやり取りをしていると、「この現場は検定合格警備員の配置が必要です」「有資格者だと単価が変わります」といった説明を受けることがあります。検定合格警備員とは何の資格で、どの現場で必要になり、発注者はどう指定すればよいのでしょうか。

検索して出てくる解説の多くは「資格の取り方・手当」といった警備員(求職者)向けの記事で、依頼する側の疑問——「うちの現場は資格者が義務なのか」「見積でどう頼めばいいのか」——に正面から答えるものはほとんどありません。

この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、発注者(建設会社・イベント主催者・施設管理者)の目線で検定制度を整理しました。法令の記述はすべてe-Gov法令検索の現行条文と照合しています。

この記事でわかること

  • 検定合格警備員の法律上の定義(警備業法第23条・第18条)
  • 検定6種別×1級・2級の全体像【一覧表】
  • 配置が「法律上の義務」になる現場の早見表(検定規則第2条)
  • 公安委員会の「指定路線」の調べ方
  • 発注時に検定合格者を指定する5ステップと、料金への影響の目安

検定合格警備員とは|国家公安委員会規則に基づく検定の合格者

警備業法第23条第1項は、公安委員会が「警備業務の実施の適正を図るため、警備業務の種別に応じ、警備員又は警備員になろうとする者について、その知識及び能力に関する検定を行う」ことを定めています。この検定に合格し、合格証明書(同条第4項)の交付を受けた警備員が「検定合格警備員」です(出典:警備業法第23条(e-Gov法令検索))。

検定は、警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)第4条により、種別ごとに1級と2級に区分されています。警察庁「令和6年における警備業の概況」によれば、いずれかの検定合格証明書を保有する警備員は令和6年12月末現在で全国17万1,424人。警備員全体(58万7,848人)の約3割で、有資格者は限られた存在であることが分かります(出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」)。

重要なのは、検定が単なる「腕前の証明」ではないことです。後述のとおり、一定の現場では検定合格者の配置が警備業法上の義務になっており、発注者にとっても「現場が成立するかどうか」に直結する制度です。

検定の種類は6種別×1級・2級【一覧表】

検定の種別は、警備員等の検定等に関する規則第1条に次の6つが定められています(出典:警備員等の検定等に関する規則第1条・第4条(e-Gov法令検索))。

検定種別 対象業務(概要) 発注者に関係する主なシーン
施設警備業務検定 施設の破壊等の事故を警戒・防止する業務 1級・2級 ビル・商業施設等の常駐警備で質の目安に。空港等では配置義務あり
交通誘導警備業務検定 工事現場等で交通の誘導により事故を警戒・防止する業務 1級・2級 高速道路・公安委員会の指定路線での工事は配置義務
雑踏警備業務検定 人の雑踏する場所で雑踏の整理により事故を警戒・防止する業務 1級・2級 祭り・花火大会・イベントの雑踏警備は配置義務
貴重品運搬警備業務検定 運搬中の現金・貴金属・有価証券等の盗難等を警戒・防止する業務 1級・2級 現金輸送車を使う運搬は配置義務
核燃料物質等危険物運搬警備業務検定 運搬中の核燃料物質等危険物の盗難等を警戒・防止する業務 1級・2級 特殊分野(一般の発注ではほぼ登場しません)
空港保安警備業務検定 空港での手荷物検査等により航空機強取等を警戒・防止する業務 1級・2級 特殊分野(空港運営者向け)

一般の発注で登場するのは、実質的に交通誘導・雑踏・施設・貴重品運搬の4種別です。種別は互いに独立しており、たとえば交通誘導2級の合格者を雑踏警備の資格者枠として配置することはできません。「イベント警備も工事の誘導も同じ警備員資格だろう」という誤解は、手配トラブルのもとになるので注意しましょう。

配置が「義務」になる現場|警備業法第18条と配置基準

警備業法第18条は、警備業務の実施に専門的知識・能力を要し、かつ事故が発生した場合に不特定多数の者に危険を生ずるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める「特定の種別の警備業務」について、合格証明書の交付を受けている警備員に実施させること、および基準に従い検定合格警備員を配置することを警備業者に義務づけています(出典:警備業法第18条(e-Gov法令検索))。

具体的な配置基準は検定規則第2条の表に定められており、発注者に関係が深い部分を整理すると次のとおりです(出典:警備員等の検定等に関する規則第2条(e-Gov法令検索)警視庁「検定合格警備員の配置基準」)。

現場の類型 必要な資格者 配置の単位
高速自動車国道・自動車専用道路での交通誘導 交通誘導警備業務検定 1級または2級 交通誘導警備業務を行う場所ごとに1人以上
公安委員会が指定する路線(指定路線)での交通誘導 交通誘導警備業務検定 1級または2級 同上(場所ごとに1人以上)
雑踏警備(祭り・イベント等) 雑踏警備業務検定 1級または2級 雑踏警備業務を行う場所ごと(2以上の区域に区分される場合は区域ごと)に1人以上。区域に区分される場合は、さらに場所ごとに1級を1人
現金の運搬(現金輸送) 貴重品運搬警備業務検定 1級または2級 現金を運搬する車両ごとに1人以上
空港・防護対象特定核燃料物質取扱施設等 各種別の1級・2級 施設・敷地等の単位で1級の配置義務を含む詳細基準あり(特殊分野のため省略)

押さえておきたいのは次の3点です。

  • 配置義務を負うのは警備業者(警備会社)です。発注者が計算・手続きをするものではありませんが、資格者が確保できなければ現場が動かせないため、発注者の工程・予算に直結します。
  • 一般道の交通誘導は、高速道路・指定路線に当たらなければ検定合格者でなくても違法ではありません。「無資格の誘導員=違法」ではない点は正確に理解しておきましょう。
  • 検定合格警備員には、業務従事中の合格証明書の携帯義務があり、関係人の請求があるときは提示させなければならないと定められています(検定規則第3条)。

「指定路線」かどうかの調べ方

交通誘導の配置義務で実務上つまずきやすいのが、工事場所が公安委員会の指定路線に当たるかどうかです。指定路線は「道路における危険を防止するため必要と認めるもの」として都道府県公安委員会が定めるもので、都道府県ごとに指定の有無も対象路線も異なります

調べ方は次の2つです。

  1. 都道府県警察・公安委員会の公表資料を確認する:各都道府県警察のWebサイトに指定路線の一覧や配置基準の解説が掲載されている例があります(例:警視庁「検定合格警備員の配置基準」)。
  2. 地元の警備会社に確認する:実務ではこれが早道です。地元で交通誘導を日常的に受けている警備会社は、県内の指定路線と運用を把握しています。見積依頼の際に「場所は〇〇。指定路線に当たりますか」と一言添えましょう。

発注時に検定合格者を指定する方法|5ステップ

発注者側から資格者配置を確実にする手順を、見積前〜当日の時系列で整理します。

  1. 【見積前】現場の該当性を整理する:高速道路・指定路線での工事か/祭り・イベント等の雑踏警備か/現金輸送か。該当しそうなら「配置義務のある現場」前提で動きます。判断がつかなくても、次のステップで警備会社に確認すれば大丈夫です。
  2. 【見積依頼時】場所・日時・業務内容を正確に伝え、資格者の要否を確認する:「この条件で検定合格者の配置は必要ですか。必要な場合、何名をどの配置に入れますか」と質問します。この回答の的確さは、法令を理解している警備会社かどうかの見極めにも使えます。
  3. 【見積比較】資格者の人数と単価が明記されているか確認する:検定合格者と一般警備員では単価が異なるため(次章)、内訳に「検定合格者〇名×単価」が示されている見積は信頼しやすいと言えます。複数社の比較手順は警備の相見積もりの取り方をご覧ください。
  4. 【契約時】契約書面で配置を確認する:警備業法第19条により、警備会社は契約締結前に概要書面、締結後に業務内容等を記載した書面を交付する義務があります。資格者の配置を求める場合は、この書面や仕様書に「交通誘導警備業務検定合格者〇名を配置」等と明記してもらいましょう。
  5. 【当日】必要に応じて合格証明書の提示を求める:前述のとおり、検定合格警備員は業務中の合格証明書携帯と、関係人の請求時の提示が義務づけられています(検定規則第3条)。配置を確認したい場合は、現場の隊長経由で申し出るとスムーズです。

料金への影響|検定合格者の単価差の目安

公的な単価の参考値として、国土交通省の公共工事設計労務単価(令和8年3月適用・全国加重平均)では、交通誘導警備員が資格の有無で2区分されています。

  • 交通誘導警備員A(交通誘導警備業務検定の合格者等):1日8時間当たり18,911円
  • 交通誘導警備員B(上記以外):1日8時間当たり16,749円

(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」

労務単価ベースで1人1日あたり2千円強の差があり、これに法定福利費(事業主負担分)や警備会社の管理費等が上乗せされるため、実際の請求単価の差はこれより大きくなるのが通常です。とはいえ、配置義務のある現場で資格者を欠けば警備業法違反となり現場自体が止まりかねません。資格者単価は「削る対象」ではなく、現場を適法に動かすための必要コストと考えるのが実務的です。区分別の相場全体は警備会社の料金相場まるわかりで解説しています。

よくある質問

Q. 検定を持っていない警備員に頼むのは違法ですか?

A. 違法ではありません。配置義務があるのは、高速道路・指定路線の交通誘導、雑踏警備、貴重品運搬など検定規則第2条に定める現場に限られます。それ以外の現場(一般道の交通誘導など)では、検定合格者でない警備員が業務を行っても法令違反ではありません。もっとも、警備業者にはすべての警備員への教育義務(警備業法第21条)があります。

Q. 1級と2級のどちらを指定すべきですか?

A. 配置基準の多くは「1級または2級」で満たせます。雑踏警備で場所が複数区域に区分される場合など、1級が必須になるケースは基準上限られます。実務では「基準を満たす配置+現場責任者クラスに1級または経験豊富な2級」といった提案を警備会社から受けて決めるのが現実的です。

Q. 資格者が配置されなかった場合、発注者も責任を問われますか?

A. 警備業法第18条の配置義務を負うのは警備業者であり、同法上の責任は基本的に警備会社側の問題です。ただし、資格者不足で警備が実施できなければ工事やイベントの工程に直接影響しますし、公共工事では発注条件・仕様として資格者配置が求められる場合もあります。契約段階での確認が自衛策になります。

Q. 検定合格者は指名すればすぐ来てもらえますか?

A. 検定合格証明書の保有者は警備員全体の約3割(令和6年12月末現在・17万1,424人)で、繁忙期には各社で取り合いになります。資格者が必要な現場ほど、日程が決まり次第早めに打診することをおすすめします。

まとめ|「うちの現場に義務があるか」を最初に確認する

検定合格警備員とは、警備業法第23条の検定(6種別×1級・2級)に合格し合格証明書の交付を受けた警備員で、高速道路・指定路線の交通誘導、雑踏警備、貴重品運搬などでは配置が法律上の義務です(警備業法第18条・検定規則第2条)。発注者としては、①現場の該当性を整理し、②見積時に資格者の要否と人数を確認し、③契約書面に配置を明記してもらう——この3点を押さえれば、直前の手配トラブルと余計なコストの両方を避けられます。

資格者の配置に慣れた警備会社を、お近くのエリアから探してみてください。


【出典・参考】
警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第18条・第19条・第21条・第23条)
警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)|e-Gov法令検索(第1条・第2条・第3条・第4条)
警視庁「検定合格警備員の配置基準」
警察庁「令和6年における警備業の概況」(検定合格証明書保有者数・警備員数)
国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(交通誘導警備員A・Bの単価)
※法令・統計・単価は2026年7月時点でe-Gov法令検索および各府省の公表資料と照合しています。本記事は一般的な情報提供であり、個別の案件に関する法的助言ではありません。配置義務の個別判断は所轄警察署・警備会社にご確認ください。