「警備を依頼したいが、どの会社なら安心して契約できるのか分からない」——建設現場の交通誘導やイベントの雑踏警備を初めて手配する担当者の多くが、この不安を抱えます。調べても出てくるのは「評判の悪い会社はどこか」といった求職者向けの記事や匿名の悪評ばかりで、発注する側が契約前に自分で確かめられる観点がまとまっていません。

そこでこの記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、「避けたい警備会社」に共通しやすい特徴を、警備業法の条文に基づく12項目のチェックリストにまとめました。特定の実在業者を名指しで批判するものではなく、あくまで依頼者が発注前に確認すべきポイントを法的な裏づけとともに整理したものです。法令の記述はe-Gov法令検索の現行条文と照合しています。

ここで大切なのは、「当てはまったら即・悪徳業者だ」と決めつけないことです。一つひとつは「質問して、納得のいく説明が返ってくるか」を確かめる観点にすぎません。誠実に答えてくれるかどうかが、信頼できる会社を見分ける手がかりになります。

この記事でわかること

  • 発注前に確認したい「避けたい警備会社」の特徴チェックリスト12項目【表】
  • 各項目の法的な裏づけ(警備業法・施行規則の条番号つき)と、具体的な確認方法
  • 「認定」「書面交付」「教育・指導教育責任者」「検定配置」の法令上の位置づけ
  • 見積の内訳・極端な安値・追加請求・保険・再委託で見るべきポイント
  • 「怪しいと感じたとき」に慌てず確認するための手順【判断フロー】

「契約NG」とは「違法業者」という意味ではありません

最初に、この記事の立場をはっきりさせます。以下の12項目は、「該当したら違法・悪徳」という意味ではありません。繁忙で説明が後回しになっていただけの誠実な会社もあります。ただし警備業には、公安委員会の認定を受けること、契約前後に書面を交付すること、警備員に教育を行うことなど、警備業法が業者に義務づけた最低限のルールがあります。この法定義務についてすら曖昧な回答しか返らない場合は、慎重になるべきだと言えます。同じ質問を複数社に投げれば、対応の違いは自然と見えてきます(手順は警備の相見積もりの取り方を参照)。

発注前チェックリスト12項目【一覧表】

まず全体像です。次の12項目を、問い合わせ・見積・契約の各段階で確認していきます。「根拠」欄が「法令上の義務」のものは、警備業法などが業者に課している事項です。

No. 確認したいポイント 根拠 確認する段階
1 公安委員会の認定を確認できる(認定証番号・標識を示せる) 法令上の義務(法第4条・第6条) 問い合わせ時
2 契約前に概要書面、契約後に契約書面を交付する 法令上の義務(法第19条) 契約前後
3 教育警備員指導教育責任者の体制を説明できる 法令上の義務(法第21条・第22条) 提案・契約時
4 検定が必要な業務で検定合格警備員の配置(場所ごとに1人以上)を説明できる 法令上の義務(法第18条) 提案時
5 見積の内訳(人件費・必要経費・一般管理費)を示せる 取引の透明性 見積時
6 極端な安値の根拠を説明できる(自県の労務単価を大きく下回る場合) 取引の透明性 見積時
7 追加請求が発生する条件を書面に明記する 取引の透明性 契約前
8 損害賠償・保険に関する事項を書面で確認できる 法令上の記載義務(施行規則第33条)+任意加入の保険 契約前
9 現地調査・警備計画の説明がある 適正な業務遂行の実務 提案時
10 連絡体制・欠員時の代替の基準が明確 実務・SLA 提案・契約時
11 再委託(下請け)の有無と管理体制を説明できる 法令上の記載義務(施行規則第33条) 契約前
12 契約を急がせず、質問に書面で答える 取引の誠実さ 全段階

以下、12項目を「①法令・資格」「②見積・費用」「③体制・対応」の3グループに分けて解説します。

【グループ1】法令・資格まわりの4項目|ここが曖昧なら要注意

1〜4は、警備業法が業者に義務づけている事項です。ここを説明できない会社は、法令順守の姿勢そのものに疑問符が付きます。

①公安委員会の「認定」を確認できない・標識や番号を示さない(法第4条・第6条)

警備業を営むには、都道府県公安委員会の認定が必要です。警備業法第4条は「警備業を営もうとする者は、(中略)都道府県公安委員会(中略)の認定を受けなければならない」と定めています。認定を受けずに警備業を営むことは違法です(出典:警備業法第4条(e-Gov法令検索))。

さらに第6条第1項は、認定を受けた業者に対し、認定を示す標識を主たる営業所の見やすい場所に掲示するとともに、事業規模が著しく小さい場合等を除き、ウェブサイト等で公衆の閲覧に供することを義務づけています(出典:警備業法第6条(e-Gov法令検索))。したがって、認定業者であれば認定証番号を答えられるのが当たり前です。

確認方法:見積書・契約書面・会社のウェブサイトに記載された認定証番号(「○○県公安委員会 第○○号」の形式)を確認します。番号を尋ねても曖昧にはぐらかす、書面に一切記載がない場合は特に注意が必要です。認定番号の見方と照合の手順は警備業の認定番号の確認方法で解説しています。

②契約前の概要書面・契約後の契約書面を交付しない(法第19条第1項・第2項)

警備業法第19条は、警備業者に2種類の書面交付を義務づけています。契約を締結するまでに交付する概要書面(第1項)と、契約締結後に遅滞なく交付する契約書面(第2項)です(出典:警備業法第19条(e-Gov法令検索))。

これらの書面には記載すべき事項が施行規則で細かく定められ、業務の内容・期間・料金・損害賠償・再委託に関する事項などが含まれます(警備業法施行規則第33条・第34条)。「口約束だけで書面を出さない」「見積書だけで契約書面を交わさない」という進め方は、この義務に反します。

なお、書面は紙に限りません。第19条第3項により、依頼者の承諾があれば電磁的方法(メール・電子データ等)での提供も適法です。ポイントは「紙かデータか」ではなく「書面が交付されるかどうか」です。確認方法:「契約前に概要書面をいただけますか」「契約書面には何が記載されますか」と尋ね、すぐ応じてくれるかを見ます。

③教育・指導教育責任者の体制が不明(法第21条・第22条)

警備員は、配置の前後に法定の教育を受けることになっています。警備業法第21条第2項は、警備業者に対し「その警備員に対し、警備業務を適正に実施させるため、(中略)教育を行うとともに、必要な指導及び監督をしなければならない」と定めています(出典:警備業法第21条(e-Gov法令検索))。

加えて第22条第1項は、営業所ごと・警備業務の区分ごとに、資格者証の交付を受けた者から「警備員指導教育責任者」を選任することを義務づけています(出典:警備業法第22条(e-Gov法令検索))。教育と指導教育責任者は、警備の品質を支える土台です。

確認方法:「教育はどのように実施していますか」「指導教育責任者は選任されていますか」と質問します。制度の存在すら把握していない場合は慎重に。検定合格者や指導教育責任者の在籍状況は会社の質を見る目安になります(検定の位置づけは警備員の検定資格とはを参照)。

④検定が必要な業務で「検定合格警備員の配置」を説明できない(法第18条)

一定の警備業務では、検定に合格した警備員の配置が法律で義務づけられています。警備業法第18条は、専門的知識・能力を要し事故時の危険が大きい種別として国家公安委員会規則で定める業務について、その種別ごとに合格証明書の交付を受けた警備員に実施させなければならない、と定めています(出典:警備業法第18条(e-Gov法令検索))。対象は、交通誘導・雑踏・貴重品運搬・空港保安・施設警備などのうち、規則で定める場所・条件のものです。

ここで非常に誤解されやすい点があります。配置義務は「その現場の警備員全員が有資格でなければならない」という意味ではありません。「警備員等の検定等に関する規則」が定める配置基準は、原則として場所ごとに1人以上です。たとえば1つの現場に5人配置する場合、1人が検定合格者であれば、残り4人が検定を持たない警備員でも適法なケースがあります。

このため、「全員が有資格だから高い」「他社は無資格ばかりだから危険」といった説明は、それ自体が正確でない可能性があります。逆に、検定配置が必要な現場なのに「資格者はいりません」と説明する会社も要注意です。確認方法:「この現場は検定配置が必要ですか。必要なら何人配置しますか」と具体的に尋ねます。

【グループ2】見積・費用まわりの4項目|安さの理由を説明できるか

5〜8はお金に関わる4項目です。金額そのものより「その根拠を説明できるか」が判断の軸になります。

⑤見積の内訳が不透明(人件費・必要経費・一般管理費の別が示されない)

警備の料金は、大きく分けて人件費(警備員に支払う賃金)・必要経費(保険料・装備・交通費・教育費等)・一般管理費(会社運営の費用)で構成されます。全国警備業協会も、警備料金は人件費にこれらを加えて算定されるべきものとしています。

これらの別が示されない「警備一式 ○○円」だけの見積は、比較のしようがなく、後から追加請求が生じても検証できません。内訳を示せるかは、その会社が原価を把握して適正に価格設定しているかの表れでもあります。

確認方法:「人件費・必要経費・一般管理費の内訳を教えてください」と依頼します。内訳の読み解き方は警備の見積書の内訳の見方で解説しています。

⑥極端な安値の根拠を説明できない(自県の労務単価を大きく下回る)

相場より極端に安い見積には注意が必要な場合がありますが、ここで誤解してはいけない大原則があります。

第一に、安いこと自体は違法ではありません。企業努力や稼働状況で適正に安く提供できる会社もあります。第二に、判断の物差しにする公共工事設計労務単価は「最低賃金」でも「下限規制」でもなく、実勢賃金の平均値です。第三に、労務単価は都道府県別で、交通誘導警備員の単価も都道府県によって大きく異なります。地方では都市部より低い水準が適正な場合があり、全国平均を一律の閾値にすると適法な地方の会社を不当に疑うことになります

見るべきは「全国平均より安いか」ではなく、「自県の水準を大きく下回るなら、その理由を説明できるか」です。安値の裏に法定教育の省略や社会保険料の未計上が隠れていないかを、内訳とあわせて確認します(単価の考え方は警備員の単価の相場と決まり方を参照)。

⑦追加請求が発生する条件が書面に明記されない

「基本料金は安かったが、当日に延長料金・深夜割増・追加人員費が次々に加算された」というトラブルは、条件が書面に明記されていないことから生じます。深夜帯(原則22時〜翌5時)の割増や延長時の単価など、追加費用が発生する条件と単価を、契約前に書面で確認しておきましょう。確認方法:「延長・深夜・増員が発生した場合の料金は、どこにどう書かれますか」と尋ねます。

⑧損害賠償・保険に関する事項を確認できない(施行規則第33条)

警備中に事故や物損が起きたときの損害賠償の取り決めは、契約書面の記載事項として施行規則第33条・第34条に定められており、書面で賠償の範囲や免責に関する事項を確認できます。なお、賠償責任保険への加入は法律上の義務ではありませんが、万一に備えて加入している会社が多く、加入の有無や補償内容を確認しておくと安心です。「事故が起きても弁償しません」という会社は慎重に検討しましょう。確認方法:「賠償責任保険には加入していますか。補償の範囲は書面のどこに書かれますか」と尋ねます。

【グループ3】体制・対応まわりの4項目|当日きちんと機能するか

9〜12は、契約後に警備が確実に機能するかを見る4項目です。実務と誠実さの問題ですが、当日のトラブルを防ぐ意味で重要です。

⑨現地調査・警備計画の説明がない

適正な警備は、現場の状況を踏まえた警備計画があって初めて成り立ちます。交通誘導なら道路の形状・交通量・時間帯、施設警備なら出入口や死角、イベントなら来場想定と動線——これらを確認せず「人数だけ」を提案してくる場合、現場で計画倒れになるリスクがあります。確認方法:「事前に現地を見てもらえますか」「警備計画はどう立てますか」と尋ね、現場に即した提案かを確認します。

⑩連絡体制・欠員時の代替の基準が不明

警備員が急病等で欠けたときにどのくらいの時間で連絡が来て、どう補充されるのか。この基準が曖昧だと、当日に穴が空いても打つ手がありません。「何分以内に連絡」「何時間以内に代替要員を配置」といった補充のルールや代替要員の資格条件、緊急時の連絡窓口(24時間対応か等)を契約段階で確認しておきましょう。

⑪再委託(下請け・丸投げ)の有無と管理体制が不透明

警備業務を他社に再委託(下請け)すること自体は禁止されていません。ただし再委託に関する事項は契約書面の記載事項として施行規則第33条・第34条に定められており、依頼者は再委託の有無を書面で確認できます。注意したいのは、受注した会社が実務を丸ごと別の会社に投げ、管理責任があいまいになるケースです。誰が現場を管理し教育に責任を持つのかが不透明だと、品質のばらつきやトラブル時の責任の所在が問題になります。確認方法:「この業務は御社の警備員が担当しますか、それとも再委託されますか。管理はどちらが行いますか」と尋ね、書面での明記を求めます。

⑫契約を過度に急がせる・質問に書面で答えたがらない

最後は、11項目を貫く「姿勢」の問題です。「今日中に決めれば安くする」と過度に急がせる質問への回答を口頭で済ませ書面に残したがらない認定番号や内訳を尋ねると不機嫌になる——こうした対応が重なる場合は、立ち止まって別の会社の見積も取ることをおすすめします。誠実な会社ほど、確認事項に嫌な顔をせず書面で答えてくれます。

「怪しいと感じたとき」の確認手順【判断フロー】

チェックの途中で「なんとなく引っかかる」と感じたら、感覚で断じず、次の順で事実を確認しましょう。多くの場合、この手順を踏めば、誤解だったのか本当に避けるべきかがはっきりします。

  1. 認定を確認する(客観的な事実):まず認定証番号を尋ね、書面やウェブサイトの記載と照合します。ここが確認できれば、少なくとも無認定の違法業者ではありません(認定番号の確認方法)。
  2. 書面を求める(義務の履行を見る):「概要書面をください」と依頼します。法定の義務なので、応じられない・出せないという時点で大きな注意信号です。
  3. 内訳と追加条件を質問する(透明性を見る):見積の内訳と、追加請求の条件を尋ねます。説明の丁寧さと具体性が、そのまま会社の姿勢を映します(見積の内訳の見方)。
  4. 同じ質問を他社にもする(相対化する):1社だけで判断せず、同条件で複数社に相見積を取り、回答を比べます。対応の差は歴然と出ます(相見積もりの取り方)。
  5. それでも不安なら見送る:法定義務すら曖昧・質問にまともに答えない状態が重なるなら、無理に契約せず別の会社を検討します(すでに契約中の場合は警備会社の乗り換え・変更手順を参照)。

ネット上の匿名の評判は真偽を確かめられないため、判断の根拠にはせず、自分が確認した事実(認定・書面・内訳)で決めましょう

よくあるご質問

Q. 認定番号を教えてくれない会社は、違法な業者ですか?

A. 認定業者であれば認定証番号を答えられるのが通常です(警備業法第6条で標識掲示・公衆閲覧が義務づけられています)。ただし、担当者がその場で番号を把握していないだけ、という場合もあります。「書面やウェブサイトで確認したいので番号を教えてください」と依頼し、それでも一切示さない・はぐらかす場合は、無認定の可能性も含めて慎重に判断してください。無認定で警備業を営むことは違法です(第4条)。

Q. 見積が他社より安いだけで避けるべきですか?

A. 安いこと自体は問題ではありません。企業努力で適正に安く提供できる会社もあります。判断の物差しになる公共工事設計労務単価は最低賃金ではなく実勢賃金の平均値で、しかも都道府県別です。全国平均を一律の基準にすると、適法な地方の会社を不当に疑うことになります。見るべきは「自県の水準を大きく下回るなら、その理由(内訳)を説明できるか」です。法定教育や社会保険料が省かれていないかを内訳で確認しましょう。

Q. 現場の警備員は「全員が検定合格者」でないといけませんか?

A. いいえ。検定合格警備員の配置義務(警備業法第18条)は、「その現場の全員が有資格」という意味ではありません。「警備員等の検定等に関する規則」が定める配置基準は、原則として場所ごとに1人以上です。5人配置する現場で1人が検定合格者なら、残りが無資格でも適法なケースがあります。「全員有資格だから高い」という説明は正確でない可能性があるため、必要な配置人数を具体的に確認しましょう。なお、契約書面がメール等で送られてきても手抜きではありません。第19条第3項により、承諾があれば電磁的方法での提供が認められています。

まとめ|「疑う」ためでなく「確認する」ためのチェックリスト

避けたい警備会社の特徴は、突き詰めると「法律で決まっていること(認定・書面・教育・検定配置)を説明できない」「お金の根拠(内訳・追加条件・保険)を示せない」「体制(現地調査・代替・再委託)が不透明」の3つに集約されます。逆に、これらを尋ねてきちんと答えてくれる会社には、それだけで信頼の土台があります。

大切なのは、一つの違和感で決めつけず、認定番号・書面・見積の内訳という「確認できる事実」で裏を取り、同条件で複数社を比べることです。匿名の評判ではなく、自分が確認した事実で判断すれば、後悔のない発注に近づきます。どの区分の会社に、どの観点を重点的に確認すべきか迷ったら、無料の診断で整理してみてください。


【出典・参考】
警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第4条・認定/第6条・標識掲示と公衆閲覧/第18条・検定合格警備員の配置/第19条・書面の交付/第21条・教育/第22条・警備員指導教育責任者)
警備業法施行規則(昭和58年国家公安委員会規則第1号)|e-Gov法令検索(第33条・概要書面の記載事項/第34条・契約書面の記載事項/再委託・損害賠償に関する事項/第36条・電磁的方法による提供)
警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)|e-Gov法令検索(検定合格警備員の配置基準)
・国土交通省「公共工事設計労務単価」(労務単価は都道府県別の実勢賃金の平均値であり、最低賃金・下限規制ではありません)
・全国警備業協会「警備料金の基礎知識」(本編2024年11月/解説集2026年5月第3版)(警備料金は人件費・必要経費・一般管理費等で構成されるとの考え方)
※法令は2026年7月時点でe-Gov法令検索の現行条文と照合しています。本記事は特定の事業者を批判するものではなく、発注者が自ら確認するための一般的な情報提供です。個別案件に関する法的助言ではありません。費用に関する記述はいずれも目安であり、実際は個別の見積によります。