「道路工事に交通誘導員を頼みたいが、何人配置すればいいのか」「そもそも配置は義務なのか、任意なのか」——建設会社や工事の発注担当者がこの疑問を調べると、答えがなかなか一つに定まりません。「1人以上と決まっている」という説明もあれば、「工事規模による」「警察が決める」「発注者の仕様による」という説明も出てきて、どれが正しいのか分かりにくいのが実情です。

その分かりにくさには、はっきりした理由があります。交通誘導員の「配置基準」は、実は性質の違う3つの根拠が重なっているからです。①警備業法(検定合格警備員を置く義務)、②警察の道路使用許可(許可の条件として付される配置)、③国土交通省など発注者の積算・仕様(実際の人数)——この3層を分けて理解すると、混乱していた情報が一気に整理できます。

この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、発注する側の目線で交通誘導員の配置基準を3層に整理しました。法令の記述はe-Gov法令検索の現行条文、積算・単価は国土交通省の公表資料と照合しています。

この記事でわかること

  • 交通誘導員の「配置基準」を構成する3つの根拠(警備業法・警察・国交省)の整理【比較表】
  • 警備業法上の配置義務=「検定合格警備員」を場所ごとに1人以上(現場全員が有資格者という意味ではない)
  • 義務がかかる道路は2種類(高速・自動車専用道路/公安委員会が指定する「資格者配置路線」)
  • 警察の道路使用許可は、許可の”条件”として配置を付すことがある(道路交通法第77条)
  • 「1日◯人」という全国一律の法定人数基準は存在しない——人数は発注者の設計図書で決まる
  • 発注者のための「何人配置すべきか」確認フロー【判断フロー】と、A・B単価の考え方

結論:交通誘導員の「配置基準」は3つの根拠が重なっている

先に全体像を示します。交通誘導員の配置をめぐる情報が食い違って見えるのは、次の3つの層が別々のルールを持っているためです。それぞれ「誰が」「何を」決めるのかが違います。

根拠の層 誰が決めるか 何を定めるか 発注者への影響
①警備業法
(第18条+検定規則第2条)
国家公安委員会規則+都道府県公安委員会 一定の道路では検定合格警備員を「場所ごとに1人以上」配置する義務 資格者配置路線・高速等では有資格者が必ず要る=単価が上がる
②道路交通法
(第77条)
所轄警察署長(道路使用許可) 許可の“条件”として交通誘導・安全対策を付すことがある 道路工事は許可条件を満たす配置が必要になる
③積算・仕様
(国交省等の発注者)
発注者(設計図書・特記仕様書・共通仕様書) 実際の「配置人数・配置時間」 現場に何人置くかは最終的にここで決まる

ポイントは、①は「有資格者を混ぜる義務」、②は「許可の条件」、③が「実際の人数」を担っているという役割分担です。「1人以上」という表現は①の話であって、「現場は1人でよい」という意味ではありません。以下、層ごとに一次情報で確認していきます。

【根拠1】警備業法:検定合格警備員を「場所ごとに1人以上」

まず警備業法です。交通誘導警備業務は、警備業法第2条第1項第2号(人又は車両の通行に危険のある場所での負傷等の事故の警戒・防止)に位置づけられる業務です。「警備員等の検定等に関する規則」第1条第4号は、これを「工事現場その他人又は車両の通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務(交通の誘導に係るもの)」と定義し、交通誘導警備業務と呼んでいます(出典:警備員等の検定等に関する規則第1条(e-Gov法令検索))。

警備業法第18条は、一定の種別の警備業務について、検定に合格した警備員(合格証明書の交付を受けた警備員)にその業務を実施させなければならないと定めています。条文は次のとおりです。

警備業者は、警備業務(第二条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当するものに限る。(中略))のうち、その実施に専門的知識及び能力を要し、かつ、事故が発生した場合には不特定又は多数の者の生命、身体又は財産に危険を生ずるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める種別(中略)のものを行うときは、(中略)その種別ごとに(中略)合格証明書の交付を受けている警備員に、当該種別に係る警備業務を実施させなければならない。(警備業法第18条)

つまり交通誘導警備業務であっても、どんな道路でも検定資格者が必要になるわけではありません。義務がかかるのは、検定規則が具体的に指定する下記の道路に限られます(出典:警備業法第18条(e-Gov法令検索))。

義務がかかるのは2種類の道路(検定規則第2条 五・六の項)

検定規則第2条の表は、交通誘導警備業務について2つの区分で配置義務を定めています。いずれも配置数は「場所ごとに、一人以上」です。

区分(検定規則第2条) 対象 配置すべき警備員 人数
五の項 高速自動車国道又は自動車専用道路で行う交通誘導警備業務 1級又は2級の検定合格警備員 業務を行う場所ごとに、1人以上
六の項 道路又は交通の状況により、都道府県公安委員会が危険防止のため必要と認めた道路(=資格者配置路線)で行う交通誘導警備業務 1級又は2級の検定合格警備員 業務を行う場所ごとに、1人以上

「六の項」でいう資格者配置路線とは、各都道府県公安委員会が「この道路は検定合格警備員を配置すべき」と認定し、路線名・区域を公示している道路のことです。実務上は、主要な国道や、県道・市道のうち交通量の多い幹線道路が指定される傾向にあります。指定路線は都道府県ごとに異なるため、工事の場所がこれに当たるかはその都道府県警察・公安委員会の公示で確認してください(出典:警備員等の検定等に関する規則第2条(e-Gov法令検索)警視庁「検定合格警備員の配置基準」)。

「場所ごとに1人以上」=現場全員が有資格者ではない

ここは発注者が最も誤解しやすいところです。検定規則が求めているのは、「業務を行う場所ごとに、検定合格警備員を1人以上」混ぜることです。その現場の交通誘導員が全員、検定資格者でなければならないという意味ではありません

たとえば資格者配置路線の工事現場に交通誘導員を5人配置する場合でも、そのうち1人が検定合格警備員(A)であれば法的な配置義務は満たされ、残りの4人は検定資格を持たない警備員(B)でも適法です(各現場・各場所ごとに最低1人の有資格者、という考え方)。「5人全員をA単価で見積もられている」といった場合は、その根拠を確認する余地があります。有資格者の意味や違いは検定合格警備員とは|1級・2級の違いと配置義務で詳しく解説しています。

積算上の「A」と「B」の区分

この有資格者かどうかの違いは、公共工事の積算では職種名として区別されます。

  • 交通誘導警備員A:交通誘導警備業務の1級又は2級検定合格警備員。資格者配置路線・高速道路等で「場所ごとに1人以上」置くことが求められる警備員です。
  • 交通誘導警備員B:A以外の交通誘導を行う警備員(積算上の区分)。

資格者(A)は育成にコストがかかるため、後述する公共工事設計労務単価でもAのほうがBより高く設定されています。指定路線かどうかで、配置すべき人の内訳(AとBの組み合わせ)と費用が変わる、という関係です。

【根拠2】警察(道路使用許可):許可の”条件”として付される

2つ目の層は、警察(所轄警察署長)による道路使用許可です。道路交通法第77条第1項は、「道路において工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人」(同項第1号)などに、所轄警察署長の許可を受けることを義務づけています(出典:道路交通法第77条(e-Gov法令検索))。道路上での工事は、まずこの許可が必要になります。

そして、交通誘導員の配置が関わってくるのが第77条第3項です。同項は、許可をする場合において必要があると認めるときは、所轄警察署長は「当該許可に道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要な条件を付することができる」と定めています。さらに第4項で、特別の必要が生じたときは条件を変更し、又は新たに条件を付すこともできます。

つまり道路交通法は「交通誘導員を何人置け」と直接は書いていませんが、警察が道路使用許可の”条件”として、交通誘導員の配置や安全対策を求めることがあるという仕組みです。発注者・施工者から見れば、道路使用許可に付された条件は必ず守るべき配置の下限になります。許可申請時に警察と協議し、条件として示された内容(誘導員の配置、時間帯、保安施設など)を満たす計画を組む必要があります。

なお、道路上ではない工事(私有地内など)は、この道路使用許可自体が不要な場合があります。その場合の考え方は後述します。道路工事現場の警備全般は建設現場の警備|交通誘導の依頼と費用の考え方もあわせてご覧ください。

【根拠3】国交省(積算・仕様):実際の人数は発注者が決める

3つ目の層が、実務でいちばん知りたい「結局、何人配置するのか」です。ここで重要な事実を押さえてください。

「交通誘導員は1現場につき◯人」といった全国一律の法定人数基準は、存在しません。 警備業法が定めるのは「有資格者を場所ごとに1人以上混ぜる」という義務であって、総人数の下限を定めるものではありません。道路交通法も、許可の条件として個別に配置を求めるだけです。

では実際の人数はどう決まるかというと、公共工事では発注者の設計図書・特記仕様書・共通仕様書で定まります。国土交通省をはじめ各発注機関は、工事内容・交通量・現場条件に応じて交通誘導警備員の数量(A・Bの別と人数)を設計に計上し、受注者は監督員と協議しながら配置計画を組みます。人数は現場条件によって設計変更の対象になることもあります(参考:島根県「営繕工事における交通誘導員等の取扱い基準」では、工事規模・工事内容・周辺との協議内容等に応じて配置を定めるとされています)。

要するに、配置人数の”正解”は法律の表から引くものではなく、①有資格者を混ぜる義務(警備業法)と、②警察の許可条件を満たしたうえで、③発注者の仕様・現場の危険度に応じて決めるものだ、というのが実態です。人数の考え方は警備員の人数はどう決まる?現場ごとの考え方で具体例を紹介しています。

労務単価は「都道府県別」——全国平均を物差しにしない

費用の目安になるのが、国土交通省が毎年公表する公共工事設計労務単価です。ここには「交通誘導警備員A」「交通誘導警備員B」という職種が設けられ、単価は都道府県ごとに定められています。都市部と地方では水準が大きく異なり、同じ交通誘導警備員でもAはBより高く設定されています。

注意したいのは、この単価は都道府県別の実勢を反映した目安であり、全国平均を「これを下回る見積は不当」といった物差しにはできないことです。地方の適正水準は都市部より低く出るのが自然です。見積を評価するときは、必ず工事を行う都道府県の最新単価を基準にしてください。A・Bの別や労務単価の詳しい読み方は交通誘導警備員の労務単価と料金の考え方で解説しています。

発注者のための確認フロー|「何人配置すべきか」を決める手順

3つの層を踏まえ、発注者が配置を判断する手順を整理しました。上から順にたどれば、有資格者の要否と人数の決め方が見えてきます。

  1. その現場は「道路上」か?——道路上での工事・作業なら、まず所轄警察署長の道路使用許可が必要です(道路交通法第77条第1項第1号)。私有地内など道路以外なら、この許可は不要な場合があります。
  2. その道路は「高速・自動車専用道路」か「資格者配置路線」か?——該当すれば、検定合格警備員(A)を場所ごとに1人以上配置する義務があります(検定規則第2条五・六の項)。指定の有無は、その都道府県警察・公安委員会の公示で確認します。
  3. 道路使用許可の”条件”を確認する——警察が誘導員の配置・時間帯・保安施設などを条件として付すことがあります(同法第77条第3項)。付された条件は満たす必要があります。
  4. 公共工事なら設計図書・特記仕様書を確認する——交通誘導警備員の数量(A・Bの別と人数)が計上されています。ここが実際の配置人数の基準です。
  5. 民間工事・イベントなら、危険度から警備会社と相談して決める——法定の一律人数はないため、交通量・車線・作業範囲・視界などから必要人数を見積もります。開口部(出入口)・分岐・片側交互通行の箇所ごとに人を配置する、という考え方が基本です。
  6. 見積は条件をそろえて複数社比較——配置時間・人数・A/Bの別を同一条件にそろえて相見積もりを取ると、金額の妥当性を判断しやすくなります(手順は警備の相見積もりの取り方)。

この手順で押さえるべきは、「有資格者の要否(1・2の層)」と「総人数(3〜5の層)」は別々に決まるという点です。両者を混同すると、「全員を資格者単価で見積もられる」「必要な有資格者が入っていない」といった食い違いが起きます。

道路以外の工事現場(私有地・営繕)はどうなる?

敷地内の建築工事や解体工事など、道路を使用しない現場では、道路使用許可(道路交通法第77条)も、検定合格警備員の配置義務(検定規則第2条五・六の項=いずれも道路に関する規定)も、直接はかかりません。この場合、交通誘導員を置くかどうかは基本的に発注者・施工者の判断になります。

ただし「義務がない=置かなくてよい」とは限りません。敷地の出入口で工事車両が歩道を横切る、周辺道路にはみ出す作業がある、といった場合は、歩行者・通行車両の安全のために誘導員を配置するのが一般的です。安全配慮や近隣トラブルの防止の観点から、発注者が仕様として配置を求めるケースも少なくありません。「法的義務の有無」と「安全上・契約上の必要性」は別と考え、現場の危険度に応じて判断してください。

費用の考え方|A・Bの別と都道府県で変わる

交通誘導警備の費用は、一般に「警備員1人あたりの単価×配置人数×日数(時間)」で組み立てられ、次の要素で変わります。金額そのものは条件で大きく動くため、以下は費用が変わる要因の整理です。

  • A・Bの別:資格者配置路線・高速道路等では検定合格警備員(A)が必要で、B(それ以外)より単価が上がります。全員がAである必要はなく、必要数だけAを入れます。
  • 配置人数と日数:車線数、片側交互通行の有無、出入口・分岐の数などで必要人数が変わります。
  • 時間帯:深夜帯(原則として22時〜翌5時。労働基準法第37条第4項により25%以上の割増賃金が必要な時間帯)を含むと単価が上がります。
  • 地域:労務単価は都道府県別のため、同じ内容でも地域で水準が異なります。

費用を比較するときは、配置時間・人数・A/Bの別を同じ条件にそろえて複数社から見積を取るのが基本です。料金相場の全体像は警備費用の相場|業務区分別の料金の考え方、交通誘導に絞った単価の読み方は交通誘導警備員の労務単価と料金の考え方を参照してください。なお、依頼先は都道府県公安委員会の認定を受けた警備業者であることが大前提です(警備業法第4条)。認定番号の確認方法は警備業の認定番号の確認方法で解説しています。

よくある質問

Q. 交通誘導員の配置は法律で義務ですか?

A. 「交通誘導員を必ず置け」という一律の義務は法律にはありません。ただし、①道路上の工事は道路使用許可が必要で、警察が許可の条件として配置を求めることがあります(道路交通法第77条第3項)。②高速・自動車専用道路や、公安委員会が指定する資格者配置路線では、検定合格警備員を「場所ごとに1人以上」混ぜる義務があります(警備業法第18条・検定規則第2条)。③公共工事では発注者の設計図書で配置人数が定まります。これらが重なって「事実上の配置基準」を形づくっています。

Q. 交通誘導員は現場全員が資格を持っていないといけませんか?

A. いいえ。検定規則が求めるのは「業務を行う場所ごとに、検定合格警備員(A)を1人以上」です。現場全員が有資格者である必要はなく、たとえば5人配置なら1人がAで残り4人がBでも、法的な配置義務は満たされます。見積で全員がA単価になっている場合は、その根拠を確認するとよいでしょう。

Q. 「1日◯人」という全国共通の配置人数の基準はありますか?

A. ありません。人数は現場の交通量・車線・作業範囲や、公共工事なら発注者の設計図書・特記仕様書によって決まります。全国一律の法定人数基準は存在しないため、「基準では◯人」という説明を見たら、それが法令の話か、特定の発注者の仕様の話かを区別して確認してください。

Q. 資格者配置路線かどうかは、どこで確認できますか?

A. 各都道府県警察・公安委員会が路線名と区域を公示しています。工事を行う場所の都道府県警察のウェブサイトや、道路使用許可の申請窓口で確認できます。ほぼすべての国道と主要な幹線道路が指定される傾向にありますが、指定の範囲は都道府県ごとに異なります。

Q. 私有地内の工事にも交通誘導員は必要ですか?

A. 道路を使用しない工事には、道路使用許可も検定合格警備員の配置義務も直接はかかりません。配置するかどうかは発注者・施工者の判断です。ただし、出入口で工事車両が歩道・道路を横切るなど周辺の安全に影響する場合は、安全確保のために配置するのが一般的です。

まとめ|「有資格者の要否」と「総人数」を分けて考える

交通誘導員の配置基準は、単一のルールではなく、①警備業法(検定合格警備員を場所ごとに1人以上)/②道路交通法(道路使用許可の条件)/③発注者の積算・仕様(実際の人数)という3層が重なって決まります。混乱を避ける鍵は、「有資格者(A)を混ぜる義務」と「現場の総人数」を分けて考えることです。前者は指定道路で法的に必要、後者は許可条件と発注者の仕様・現場の危険度で決まり、全国一律の法定人数基準は存在しません。

費用面では、単価がA・Bの別と都道府県で変わるため、労務単価は自県の最新値を基準にし、配置時間・人数・A/Bの別をそろえて複数社を比較しましょう。適切な配置は、警備会社に現場条件(場所・道路種別・作業内容・交通量)を正確に伝えることから始まります。

交通誘導(2号警備)に対応する警備会社は、お近くの都道府県から探せます。


【出典・参考】
警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条・第4条・第18条)
警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)|e-Gov法令検索(第1条第4号・第2条 五の項・六の項)
道路交通法(昭和35年法律第105号)|e-Gov法令検索(第77条第1項・第3項・第4項)
労働基準法(昭和22年法律第49号)|e-Gov法令検索(第37条第4項・深夜割増)
警視庁「検定合格警備員の配置基準」(資格者配置路線・高速自動車国道等での配置)
国土交通省「公共工事設計労務単価」(交通誘導警備員A・B/都道府県別単価。最新値は各年公表資料で確認)
※法令・単価は2026年7月時点でe-Gov法令検索および公的資料と照合しています。本文中の費用に関する記述はいずれも目安であり、実際は個別の見積によります。資格者配置路線の指定内容は都道府県ごとに異なるため、必ず該当都道府県の公示でご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する法的助言ではありません。