オフィスビル・商業施設・工場・マンションなどに警備員を置きたいとき、気になるのは「月額でいくらかかるのか」です。ところが施設警備の料金を調べても「1時間あたり◯円」「1日あたり◯円」の情報ばかりで、月額ベースの目安を計算式つきで示した情報はほとんどありません。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、官公庁施設の警備委託の積算にも使われる国土交通省「建築保全業務労務単価」を根拠に、日勤のみ・夜間のみ・24時間体制の3パターンで月額を試算しました。計算式をすべて開示しているので、自社の条件に置き換えて概算できます。
なお、本文中の金額はいずれも目安です。実際の料金は施設の規模・地域・業務範囲・契約条件で変わります。
この記事でわかること
- 施設警備の月額相場早見表(日勤のみ/夜間のみ/24時間体制)
- 月額の根拠——国土交通省の労務単価(警備員A・B・C)と必要経費の構造
- 24時間体制が「1人分×3」では済まない理由(要員数の考え方)
- 月額を左右する5つの条件
- 品質を落とさずに月額を圧縮する現実的な方法
施設警備の月額相場早見表|体制別の目安
結論の早見表です。警備員1名を配置(1ポスト)する場合の月額の目安を、体制別に示します。試算の前提と計算式は次章で開示します。
| 体制 | 配置時間 | 月間延べ人日(8時間換算) | 月額の目安 |
|---|---|---|---|
| 日勤のみ(平日) | 平日 8時間 × 約21日 | 約21人日 | 約35万〜50万円 |
| 日勤のみ(毎日) | 毎日 8時間 × 約30日 | 約30人日 | 約50万〜70万円 |
| 夜間のみ(毎日) | 毎日 12時間(例:18時〜翌6時) | 約46人日 | 約75万〜110万円(深夜割増を含む) |
| 24時間365日(1ポスト) | 毎日 24時間 | 約91人日 | 約135万〜200万円 |
※編集部試算。国土交通省「建築保全業務労務単価」(令和8年度・全国平均)の警備員C〜B相当の賃金水準に、業界団体資料が示す必要経費の目安を加味した幅です。受付・防災センター業務の兼務、資格者配置、都市部の施設などでは上振れします。
月額の根拠|公的単価から積み上げる
物差しは国土交通省「建築保全業務労務単価」
施設警備の賃金水準の公的な物差しが、国土交通省が毎年公表する建築保全業務労務単価です。官公庁施設の警備・清掃・設備管理などの業務委託費を積算するための参考単価で、令和8年度(令和8年4月適用)の警備員の全国平均は次のとおりです。
| 区分 | 定義(技術者区分) | 全国平均(1日8時間あたり) |
|---|---|---|
| 警備員A | 施設警備業務検定1級合格者、またはこれと同程度の高度な技能を有する者(実務経験おおむね6年以上程度) | 19,590円 |
| 警備員B | 施設警備業務検定2級合格者、またはこれと同程度の技能を有する者(実務経験おおむね3〜6年程度) | 16,720円 |
| 警備員C | 警備員A・Bの指示に従って業務を行う者(実務経験3年未満程度) | 14,810円 |
(出典:国土交通省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」。警備員全体の全国平均は17,040円・前年度比+9.1%で、全職種平均は14年連続の上昇)
注意したいのは、この単価が警備員本人に支払われる賃金相当額であり、法定福利費の事業主負担分や管理費などの諸経費を含まないことです。警備会社への支払額(警備料金)は、ここに諸経費と適正利潤が上乗せされた金額になります。全国警備業協会の発注者向け資料では、公共工事設計労務単価を例に必要経費は労務単価の48%程度という構成が示されています(出典:全国警備業協会「警備料金の基礎知識」)。
試算①|日勤のみ・平日(月21日)の月額
受付時間帯だけ警備員を置くオフィスビルなどの標準パターンです。
- 賃金相当:警備員C 14,810円 × 21日 = 約31.1万円
- 必要経費(+48%)を加味した積算水準:約46万円
実勢の見積は競争環境によりこれより低い場合もあるため、月額35万〜50万円程度が目安です。警備員B相当(検定2級・経験者)を指定すれば、賃金相当が16,720円×21日≒35.1万円となり、月額の目安も1割ほど上がります。
試算②|夜間のみ・毎日12時間の月額
「営業時間中は自社対応、夜間だけ警備員」というパターンです。毎日12時間(月間約365時間=8時間換算で約46人日)の配置に加えて、深夜帯(原則22時〜翌5時)は労働基準法第37条により25%以上の割増賃金が必要になるため(出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」)、時間あたりコストが昼間より上がります。
- 賃金相当:警備員C換算 約46人日 × 14,810円 ≒ 約68万円 + 深夜割増分
- 必要経費を加味した目安:月額75万〜110万円程度
試算③|24時間365日(1ポスト)の月額
「警備員1名が常にいる」状態でも、費用は1人分ではありません。1人の労働時間は原則1日8時間(労働基準法第32条)ですから、24時間を切れ目なく埋めるには最低でも3交替、週休や年次有給休暇を考慮すると実務上は4人前後の要員が必要です。ここが施設警備の月額でもっとも誤解されやすいポイントです。
- 月間延べ配置時間:24時間 × 約30.4日 = 約730時間 = 8時間換算で約91人日
- 賃金相当:91人日 × 警備員C 14,810円 ≒ 約135万円(+深夜割増分)
- 必要経費(+48%)を加味した積算水準:約200万円
したがって24時間有人1ポストの月額は、おおむね135万〜200万円のレンジで考えておくのが現実的です。「24時間で月額50万円」のような見積は、賃金相当額すら下回る計算になるため、体制や法令順守の面から内容の確認が必要です。
月額を左右する5つの条件
- 配置時間と日数:月額は配置時間にほぼ比例します。「何時から何時まで、週何日必要か」の精査が最大のコスト要因です。
- 業務範囲:立哨(出入管理)だけか、受付・電話対応・防災センター業務・巡回・鍵管理まで含むかで、必要なスキルと単価が変わります。
- 資格者の指定:施設警備業務検定の合格者(警備員A・B相当)の配置を求めると単価は上がります。なお警備業法第18条により、空港など一定の施設では検定合格警備員の配置が法令上義務づけられています(根拠:警備業法第18条(e-Gov法令検索))。
- 地域:建築保全業務労務単価は地域別に設定されており、都市部ほど高い傾向があります。同じ仕様でも地域で月額が変わります。
- 複数名配置・繁忙対応:商業施設の週末増員、イベント時のスポット増員などは月額に加算されます。
品質を落とさずに月額を抑える4つの方法
- ① 有人の時間帯を絞り、無人時間帯は機械警備にする:もっとも効果が大きい方法です。たとえば「日中は有人+夜間は機械警備」に切り替えると、夜間の人件費(試算②の部分)を大きく圧縮できます。機械警備は警備業法第2条第5項に定める1号警備(施設警備)の一形態で、対応会社は機械警備に対応する警備会社一覧から探せます。
- ② 業務を整理して仕様書に落とす:「なんとなく常駐」ではなく、出入管理・巡回回数・報告頻度を仕様として明確にすると、過剰な体制を避けられ、複数社の比較もしやすくなります。
- ③ 相見積もりを取る:同一条件で2〜3社から見積を取り、総額ではなく内訳(労務費・法定福利費・管理費)で比較します。手順は警備の相見積もりの取り方をご覧ください。
- ④ 現行契約の見直し・切り替えを検討する:長年同じ会社に任せきりの場合、体制と料金が現状に合っていないことがあります。切り替えの段取りは警備会社の変更・乗り換え手順で解説しています。
一方で、単価の値切りだけで月額を下げるのはおすすめできません。施設警備の費用の大半は人件費と法定福利費・教育費であり、無理な値下げは隊員の質や欠員時の補充体制に影響するおそれがあります。
よくある質問
Q. 小さな事務所ビルでも常駐警備を頼めますか?
A. 依頼自体は可能ですが、日勤のみでも月額35万円前後からとなるため、小規模施設では機械警備や巡回警備との組み合わせのほうが費用対効果が高いことが多いです。警備業務の種類で方式の違いを確認のうえ、複数の方式で見積を取り比べるのがおすすめです。
Q. マンションの警備も同じ相場ですか?
A. 基本の考え方(配置時間×単価+諸経費)は同じです。管理員業務と警備業務は契約上別のものなので、どこまでを警備会社に委託するかで金額が変わります。
Q. 警備員の人数はどう決まりますか?
A. 施設警備の配置人数に一律の法定基準はなく、施設の規模・出入口の数・リスクに応じて警備会社が現地調査を踏まえて提案します。複数社の提案人数が大きく異なる場合は、根拠を確認して比較してください。施設の種類ごとの配置の考え方は、たとえば病院の警備で解説しています。
Q. 月額はなぜ年々上がるのですか?
A. 賃金の物差しである建築保全業務労務単価が上昇を続けているためです(令和8年度は警備員全体で前年度比+9.1%、全職種平均で14年連続の上昇)。人手不足も続いており、契約更新時に値上げ要請を受けるケースは今後も見込まれます。
Q. 契約時に確認すべき書面はありますか?
A. 警備業法第19条により、警備会社は契約締結前に概要書面、締結後に業務内容・対価・契約解除に関する事項等を記載した書面を交付する義務があります。書面を出さない業者との契約は避けてください。
まとめ|月額は「配置時間×公的単価+必要経費」で自分で概算できる
施設警備の月額は、①配置時間(月間延べ人日)を数え、②建築保全業務労務単価(警備員C 14,810円〜A 19,590円)を掛け、③必要経費(労務単価の約5割)を上乗せする——この3ステップで概算できます。日勤のみなら月35万〜50万円程度、24時間1ポストなら月135万〜200万円程度が目安です。見積を受け取ったら、この物差しと照らして内訳を確認しましょう。
条件が整理できたら、複数社の比較が適正価格への近道です。
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【出典・参考】
・国土交通省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」(警備員A・B・Cの全国平均単価、単価に諸経費が含まれない旨)
・一般社団法人全国警備業協会「警備料金の基礎知識」(必要経費48%の構成)
・警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条・第18条・第19条)
・厚生労働省「確かめよう労働条件」時間外・休日労働と割増賃金(労働基準法第32条・第37条)
※単価・法令は2026年7月時点で各一次情報と照合しています。本文中の月額はいずれも編集部試算による目安であり、実際の金額は個別の見積によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する助言ではありません。
