「自社ビルの防犯に警備を入れたい」「マンションや商業施設の管理で警備会社を探している」——施設の管理者が警備の依頼を検討し始めると、まず出てくるのが1号警備(施設警備)という言葉です。ところが検索してみると、警備員になりたい人向けの求人・仕事内容の記事や、各社のサービス案内が大半で、「発注する側が何を頼めるのか」「常駐と巡回はどう違うのか」「有資格者は必須なのか」といった、依頼者がいちばん知りたい点がはっきりしません。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、依頼する側(建設会社・施設管理者・オーナー)の目線で1号警備(施設警備)を整理しました。法令の記述はe-Gov法令検索の現行条文、統計は警察庁の公表資料と照合しています。警備業務全体(1〜4号)のざっくりした違いを先に知りたい方は、警備業務の種類まるわかり|1号〜4号の違いからご覧ください。本記事はそのうち1号(施設警備)に特化した解説です。
この記事でわかること
- 1号警備(施設警備)とは何か(警備業法第2条第1項第1号の条文と対象施設)
- 1号警備の4つの形態——常駐・巡回・保安・機械の違い【比較表】
- どんな施設で使われるか、主な業務内容は何か
- 施設警備業務検定(1級・2級)と「配置義務」の正しい理解(有資格者は全施設に必須ではない)
- 警備員の「権限」の限界と、費用の考え方
- 依頼の流れと、発注前に確認したいチェックリスト
1号警備(施設警備)とは|警備業法第2条第1項第1号の業務
1号警備とは、施設における盗難などの事故を警戒し、防止する警備業務のことです。一般に「施設警備」と呼ばれます。根拠は警備業法第2条第1項第1号で、条文は次のように定めています(出典:警備業法第2条(e-Gov法令検索))。
事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務(警備業法第2条第1項第1号)
ポイントは、条文が施設を「事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等」と例示にとどめ、末尾を「等」で締めていることです。つまり列挙されたもの以外にも幅広く当てはまり、オフィスビル・商業施設・工場・倉庫・病院・学校・マンション・データセンターなど、実務で警備を入れる施設の多くがこの1号警備の対象になります。警備業法はこうした対象施設をまとめて「警備業務対象施設」と呼びます。
1号警備は、警備業のなかで最も基盤的な区分です。警察庁「令和6年における警備業の概況」によると、令和6年12月末時点で1号警備業務を行う警備業者は6,974業者(警備業者全体の64.5%)、うち施設に常駐して行う「施設」区分だけでも6,774業者(同62.7%)にのぼります。全国の警備業者のおよそ3社に2社が施設警備を扱っている計算で、依頼先の選択肢は多い分野だといえます(出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」)。
1号警備(施設警備)の4つの形態|常駐・巡回・保安・機械【比較表】
「施設警備」とひとことで言っても、実務では大きく4つの形態に分かれます。警察庁の統計も、1号警備業務を次のように内訳で集計しています(いずれも令和6年12月末・重複計上あり)。
| 形態 | 内容 | 警備員の常駐 | 業者数(令和6年末) |
|---|---|---|---|
| 施設(常駐警備) | 対象施設に警備員が常駐し、出入管理・巡回・監視などで盗難等を警戒・防止 | あり(常駐) | 6,774業者 |
| 巡回警備 | 常駐せず、複数の施設を車両等で回って点検・警戒する | なし(巡回時のみ) | 2,875業者 |
| 保安(店内保安) | 店舗等で万引き・置引き等の店舗内犯罪を警戒・防止 | あり(店内) | 1,535業者 |
| 機械警備 | センサー・防犯カメラで異常を検知し、警備員が駆けつける | なし(検知+駆けつけ) | 542業者 |
※上表のほか、空港で航空機の強取等を警戒する「空港保安」(79業者)も1号の内訳ですが、一般の発注者が頼む場面はまれです。1社が複数の形態に該当する場合は各形態に重複して計上されているため、内訳の合計は1号警備の総数(6,974業者)とは一致しません(出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」)。
それぞれの特徴と向くケースを、もう少し実務目線で整理します。
- 常駐警備(施設):警備員が現場に常駐する形態です。出入管理・受付・防災センターの監視まで幅広く任せられる一方、配置時間分の人件費がかかるため費用は高めになります。人の出入りが多いビル・工場・病院などに向きます。
- 巡回警備:常駐せず、車や徒歩で施設を回って点検します。無人になる時間帯や、複数拠点をまとめて見回りたい場合に適します。警察庁の定義でも「警備業務対象施設に常駐せずに盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務」とされています。詳しくは巡回警備とは|常駐との違い・巡回頻度と料金の考え方、マンションでの活用はマンションの巡回警備をご覧ください。
- 保安(店内保安):店舗で万引き・置引き等を警戒する業務で、私服で行われることも多い形態です。小売店・商業施設に向きます。詳しくは保安警備とは|万引き対策・店内保安を依頼する基礎知識で解説しています。
- 機械警備:警備業法第2条第5項が定める「警備業務用機械装置を使用して行う第1項第1号の警備業務」で、機械警備も分類上は1号警備の一形態です。センサー・カメラで検知し、異常時に警備員が駆けつける仕組みで、無人時間帯が長い施設に向きます。対応会社は機械警備に対応する警備会社を探すから探せます。
実際には「日中は常駐、夜間は機械警備」「本社は常駐、支店は巡回」のように、形態を組み合わせて設計することがよくあります。まずは施設の稼働時間・無人になる時間帯・守りたい対象(人・物・情報)を整理してから相談すると、過不足のない提案を受けやすくなります。
どんな施設で使われるか|1号警備の対象施設の具体例
前述のとおり、1号警備の対象は「事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等」と幅広く定められています。実務でよく依頼される施設を挙げると、次のようになります。
- オフィス・事務所系:オフィスビル、本社ビル、貸しビル、データセンター
- 商業・集客施設:ショッピングモール、百貨店、スーパー、専門店、ホテル、劇場・ホール(興行場)
- 住宅系:分譲・賃貸マンション、大規模住宅団地
- 生産・物流系:工場、倉庫、物流センター、プラント
- 公共・準公共系:病院、学校、官公庁施設、美術館・博物館
- その他:駐車場、遊園地・テーマパーク、競技場・スタジアム
なお、警備業法が規制する警備業務は「他人の需要に応じて」行うもの(=請け負って提供するもの)です。自社の従業員が自社施設を自ら警備する「自主警備」は、他人の需要に応じて行うものに当たらず、警備業法の規制対象外です。「自主警備だから違法」ではありません。この線引きは自主警備とは|警備業法の対象になる場合・ならない場合で整理しています。
1号警備(施設警備)の主な業務内容
契約で定める範囲によりますが、常駐型の施設警備で代表的な業務は次のとおりです。
- 出入管理:通用口・受付での入退館チェック、来訪者の受付・記録、部外者の侵入防止
- 巡回:館内・敷地内を定期的に巡回し、施錠状況・異常の有無を点検
- 施解錠(開閉):始業・終業に合わせた出入口や区画の開錠・施錠
- 防災センター監視:防災盤・監視カメラのモニタリング、火災・設備異常の早期把握
- 緊急時の初動対応:不審者・盗難・火災・急病などの発見時に、状況確認・関係先への連絡・避難誘導などの初動を行う
- 報告:警戒状況・発見事案の記録と報告(管理資料として活用できます)
どこまでを警備に含めるか(受付業務・鍵管理・立哨の有無など)は施設によって異なります。見積もりを比較するときは、この業務範囲を同じ条件にそろえることが、金額を正しく比べるコツです。
施設警備業務検定と「配置義務」の誤解|有資格者は全施設に必須ではない
施設警備には、警備員の技能を公的に認める施設警備業務検定(1級・2級)があります。「警備員等の検定等に関する規則」に基づく国家資格で、検定はこの規則の各種別ごとに1級・2級に区分して行われます(出典:警備員等の検定等に関する規則(e-Gov法令検索))。
ここで誤解が生じやすいのが「配置義務」です。一般のオフィスビルや商業施設の施設警備に、検定合格警備員を必ず置かなければならないという法律上の義務はありません。
検定合格警備員の配置が法律で義務づけられるのは、警備業法第18条が定める「実施に専門的知識及び能力を要し、かつ、事故が発生した場合には不特定又は多数の者の生命、身体又は財産に危険を生ずるおそれがあるもの」として、国家公安委員会規則で指定された種別の業務に限られます(出典:警備業法第18条(e-Gov法令検索))。施設警備業務でこれに該当するのは、検定規則が定める空港に係る施設警備業務と、核燃料物質等(防護対象特定核燃料物質)を取り扱う施設に係る施設警備業務の2つに限られます。通常のビルや店舗の施設警備は、この配置義務の対象外です。
つまり「施設警備=有資格者を全員配置しなければならない」というのは誤りで、一般施設では検定合格者の配置は法的な必須要件ではありません。とはいえ、警備業者にはその警備員に対して警備業務を適正に実施させるための教育を行う義務があり(警備業法第21条第2項)、施設警備業務検定の合格者が在籍しているかどうかは、その会社の教育体制・技能水準を見るうえでの有力な目安になります。「法的に必須ではないが、質を見る指標にはなる」と理解しておくとよいでしょう。
チェックリスト:施設警備を依頼する前に確認したいこと
- 都道府県公安委員会の認定を受けているか(警備業法第4条。確認方法は後述)
- 依頼したい形態(常駐/巡回/機械/これらの組み合わせ)が明確か
- 守りたい対象と時間帯(無人になる時間・重点警戒したい場所)を整理したか
- 業務範囲(出入管理・受付・鍵管理・防災監視・緊急対応など)を書き出したか
- 教育体制や検定合格者の在籍状況を確認したか
- 配置時間・人数・業務範囲をそろえて複数社から見積もりを取ったか
警備員の「権限」の範囲|できること・できないこと
発注者が誤解しやすいのが、警備員の「権限」です。結論から言うと、警備員に警察官のような特別な権限はありません。警備業法第15条は、警備業者と警備員は「警備業務を行うに当たつては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない」と定めています(出典:警備業法第15条(e-Gov法令検索))。
施設警備員ができるのは、あくまで一般市民に認められる範囲の行為です。たとえば、施設の管理権に基づく入退館のルール運用や、犯罪を現に発見したときの現行犯逮捕(この場合は直ちに警察へ引き渡す)などは行えますが、身柄の強制的な取り調べや、令状のない捜索といった警察官固有の権限は持ちません。警備は施設の安全性を高めるための備えであり、あらゆる事故や被害を完全に防ぐことを保証するものではない点も、依頼側として押さえておきたいところです。権限の詳細は警備員の権限とできること・できないことで解説しています。
1号警備(施設警備)の費用の考え方
施設警備の料金は、常駐型であれば一般に「警備員1人あたりの時間単価×配置時間×人数」で組み立てられ、次の要素で大きく変わります。公的な料金統計は存在しないため、以下は費用が動く要因の整理です。断定的な金額はここでは示しません。
- 配置時間・体制:日勤のみか、24時間体制(交代要員が必要)か
- 人数と施設規模:延床面積、出入口の数、警戒すべき区画の広さ
- 時間帯:深夜帯(原則22時〜翌5時。労働基準法第37条第4項により25%以上の割増賃金が必要な時間帯)を含むか
- 形態:常駐か、巡回か、機械警備(月額制が中心)か、その組み合わせか
- 業務範囲:警備のみか、受付・鍵管理・防災監視まで含むか
金額は条件で大きく変わるため、配置時間・人数・業務範囲を同一条件にそろえて複数社から見積もりを取り、比較することをおすすめします。相場観のつかみ方は施設警備の費用相場|月額いくら?日勤・24時間体制別に試算、相見積もりの進め方は警備の相見積もりの取り方を参考にしてください。
依頼の流れ|問い合わせから警備開始まで
- 問い合わせ・ヒアリング:施設の用途・所在地・稼働時間・守りたい対象・過去のトラブルを伝えます
- 現地調査・提案:警備会社が施設を確認し、常駐/巡回/機械の別、配置時間・人数、業務範囲を提案します
- 見積・比較:配置時間・人数・業務範囲を同一条件にそろえ、複数社を比較します
- 契約:警備業法第19条により、警備会社には契約締結前の概要書面と締結後の契約書面の交付が義務づけられています。業務範囲・報告方法・対応の限界が書面に明記されているか確認しましょう(書面は同条第3項により、依頼者の承諾があれば電磁的方法での提供も認められています。メールでの交付を提案されても、それ自体は適法です)
- 警備開始・見直し:開始後は報告に目を通し、配置や巡回頻度の過不足を定期的に見直します
依頼先は、都道府県公安委員会の認定を受けた警備業者であることが大前提です(警備業法第4条)。認定業者かどうかは、会社のウェブサイトや見積書・契約書面に記載された認定証番号で確認できます。確認手順は警備業の認定番号の確認方法で解説しています。
よくある質問
Q. 1号警備と2号警備は何が違いますか?
A. 1号警備は「施設における盗難等の事故の警戒・防止」(施設警備)、2号警備は「人や車両が雑踏・通行する場所での負傷等の事故の警戒・防止」(雑踏警備・交通誘導警備)です。守る対象と場所が異なります。工事現場やイベント会場の安全誘導は2号、ビル・商業施設・マンション等の常駐管理は1号にあたります。全体像は警備業務の種類まるわかりをご覧ください。
Q. 常駐警備と巡回警備、どちらを選べばいいですか?
A. 人の出入りが多く、受付や継続的な監視が必要な施設は常駐警備が向きます。無人になる時間帯の点検や、複数拠点をまとめて見回りたい場合は巡回警備が適します。費用は一般に常駐のほうが高くなります。両者を時間帯で使い分ける設計も一般的です。
Q. 施設警備には検定合格警備員の配置が必須ですか?
A. 一般のオフィスビルや商業施設の施設警備に、検定合格警備員を配置する法的義務はありません。配置義務がかかるのは、警備業法第18条と検定規則が定める空港や核燃料物質等を扱う特定施設に限られます。ただし、施設警備業務検定の合格者が在籍しているかどうかは、その会社の教育体制・技能水準を見る目安になります。
Q. 機械警備だけでも施設は守れますか?
A. 機械警備(センサー・カメラによる検知+駆けつけ)は、無人時間帯やコストを抑えたい施設に有効です。一方、その場での声かけ・来訪者対応・継続的な監視は常駐警備でなければできません。施設の稼働状況に応じて、常駐・巡回・機械を組み合わせるのが合理的な場面が多くあります。
Q. マンションの管理も1号警備ですか?
A. マンション(住宅)における盗難等の警戒・防止は1号警備(施設警備)にあたります。常駐管理のほか、複数棟を巡回する形態も選べます。マンションでの巡回の考え方はマンションの巡回警備を参考にしてください。
まとめ|1号警備(施設警備)は「守る場所」で選ぶ
1号警備(施設警備)は、警備業法第2条第1項第1号が定める「事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等における盗難等の事故の警戒・防止」を指す、警備業のなかで最も基盤的な区分です。実務では常駐・巡回・保安・機械の4つの形態に分かれ、施設の稼働時間や守りたい対象に応じて選び、組み合わせます。一般施設に検定合格警備員の法定配置義務はありませんが、教育体制や有資格者の在籍は会社選びの目安になります。警備員に特別な権限はなく、効果を保証するものでもないため、認定業者であることを確認したうえで、業務範囲をそろえて複数社を比較して決めましょう。
施設警備(1号)に対応する警備会社は、お近くのエリアから探せます。
- 施設警備(1号)に対応する警備会社を探す/機械警備に対応する警備会社を探す
- 都道府県から警備会社を探す/迷ったら【無料】警備依頼先診断
- 関連記事:警備業務の種類まるわかり/巡回警備とは/保安警備とは/施設警備の費用相場/警備員の権限とできること・できないこと
【出典・参考】
・警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条第1項第1号・第2条第5項・第4条・第15条・第18条・第19条・第21条)
・警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)|e-Gov法令検索(施設警備業務検定の種別・級・配置基準)
・労働基準法(昭和22年法律第49号)|e-Gov法令検索(第37条第4項・深夜割増)
・警察庁「令和6年における警備業の概況」(1号警備業務の業者数・内訳=施設/巡回/保安/空港保安/機械)
※法令・統計は2026年7月時点でe-Gov法令検索および警察庁公表資料と照合しています。本文中の費用に関する記述はいずれも目安であり、実際は個別の見積によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する法的助言ではありません。
