「この工事、交通誘導の警備員は何人頼めばいい?」——予算にも安全にも直結するのに、明確な答えが見つけにくい質問です。実は、法律が「何人配置せよ」と人数そのものを定めている場面は限られており、実際の人数は「法令の資格者基準」「道路使用許可の条件」「現場の物理条件」の3つの組み合わせで決まります。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、発注者(建設会社・工事担当者)目線で人数の決まり方・現場パターン別の目安・費用試算を整理しました。法令の記述はe-Gov法令検索の現行条文および警察・国土交通省の公表資料と照合しています。
この記事でわかること
- 法律が定めているのは「人数」ではなく「資格者の配置」であること(警備業法第18条)
- 検定合格警備員が必須になる2つのケースと「場所ごとに1人以上」のルール
- 現場パターン別の人数目安早見表(片側交互通行・出入口・通行止めなど)
- 人数が決まるまでの5ステップ(発注前チェックフロー)
- 人数×単価×日数による費用試算のやり方
まず結論|人数は「3つの要素」の掛け合わせで決まる
| 要素 | 決めるもの | 根拠・決め手 |
|---|---|---|
| ① 法令の資格者基準 | 検定合格警備員を置くべき場所と最低数(「場所ごとに1人以上」) | 警備業法第18条+警備員等の検定等に関する規則第2条 |
| ② 道路使用許可の条件 | 警察署が許可条件として求める誘導員の配置 | 道路交通法第77条(所轄警察署長の許可) |
| ③ 現場の物理条件 | 実際に安全確保に必要な人数(規制形態・出入口数・歩行者量など) | 警備会社の現地調査・警備計画 |
①②は「最低限守るべきライン」、③が実際の人数を決める部分です(①②の全体像は交通誘導員の配置基準で整理しています)。順に見ていきます。
① 法令の基準|「人数」ではなく「検定合格警備員の配置」が義務
警備業法第18条と検定規則第2条の関係
警備業法第18条は、実施に専門的知識・能力を要し、事故が発生した場合に不特定または多数の人に危険を生ずるおそれのある警備業務について、検定合格警備員に業務を実施させることを警備業者に義務づけています。具体的にどの業務か・何人かを定めているのが「警備員等の検定等に関する規則」(平成17年国家公安委員会規則第20号)第1条・第2条で、交通誘導警備業務については次の2つのケースが該当します(根拠:警備業法第18条(e-Gov法令検索)・警備員等の検定等に関する規則第2条(e-Gov法令検索))。
| ケース | 必要な資格者 | 必要数 |
|---|---|---|
| 高速自動車国道・自動車専用道路での交通誘導警備業務 | 交通誘導警備業務1級または2級の検定合格警備員 | 業務を行う場所ごとに1人以上 |
| 都道府県公安委員会が指定した道路・区間での交通誘導警備業務(道路または交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止するため必要と認めたもの) | 交通誘導警備業務1級または2級の検定合格警備員 | 業務を行う場所ごとに1人以上 |
ポイントは2つあります。
- 「全員が資格者」でなくてよい:義務は「場所ごとに1人以上」。例えば1現場に3人配置するなら、検定合格警備員1人+一般警備員2人という組み合わせが可能です(検定合格者は単価が高いため、この構成が費用面でも標準的です)。
- 指定は都道府県ごとに違う:どの道路・区間が対象かは各都道府県公安委員会が定めており、警視庁・各県警のホームページで公表されています(参考:警視庁「検定合格警備員の配置基準」)。現場の路線が該当するかは、依頼先の警備会社か所轄警察署に確認しましょう。
逆に言えば、上記以外の一般道の工事では「資格のない警備員による交通誘導」も違法ではありません。また、お祭りやイベント会場の雑踏警備には別の配置基準(雑踏警備業務の検定合格警備員)があります。イベント系の費用はイベント警備の料金相場をご覧ください。
② 道路使用許可の条件|警察署が配置を求めるケース
道路上で工事・作業を行う場合、道路交通法第77条に基づき所轄警察署長の道路使用許可が必要です。この許可には安全確保のための条件が付されることがあり、「誘導員を配置すること」が条件になる例は珍しくありません。許可条件で求められた配置は履行義務がありますから、人数計画の前提として必ず確認してください(申請は通常、施工業者側で行います)。
③ 現場パターン別|人数の目安早見表
法令と許可条件を満たしたうえで、実際の人数は規制形態と現場条件から積み上げます。次の表は、警察・行政の公表資料や警備会社が公開している警備計画の実務を編集部が整理した一般的な目安です(現場条件により増減します。最終的な人数は警備会社の現地調査で確定するものとお考えください)。
| 現場パターン | 人数の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 片側交互通行 | 最低2人(規制区間の両端に各1人) | 両端の警備員が無線等で連携して交互に車両を流す。規制区間が長い・見通しが悪い場合は中間に増員 |
| 車両出入口の誘導(工事車両の搬出入) | 出入口1箇所につき1人〜 | 歩道を横切って出入りする場合や歩行者が多い場合は、歩行者対応にもう1人 |
| 歩行者通路の切り回し・仮歩道 | +1人〜 | 車両誘導と歩行者誘導の兼任は事故リスクが高く、分けるのが原則 |
| 通行止め(迂回誘導) | 規制箇所ごとに1人〜 | 通行止め地点・迂回路の分岐点など、判断が必要な地点ごとに配置 |
| クレーン作業・生コン打設日 | 通常日+1〜2人(スポット増員) | 大型車両の出入りが集中する日だけ増やすと総費用を抑えられる |
| 夜間工事 | 昼間と同数以上 | 視認性低下のため減らさないのが原則。深夜帯(22時〜5時)の労働には労働基準法第37条第4項で25%以上の割増賃金が必要となるため、その分が単価に反映される(請求額がちょうど25%増になるという意味ではなく、交替要員や拘束時間の扱いによって変わる) |
忘れがちな「交替要員」——国の積算基準も人数に含める方式
交通誘導は持ち場を離れられない業務のため、休憩・休息の間も誘導を続ける現場では交替要員が必要です。国土交通省の土木工事の積算基準でも、平成30年度の改定で割増係数方式を廃止し、交替要員も含めた必要人数を計上する方式に改められています(出典:国土交通省「交通誘導警備員の積算基準の改定について」)。ただしこれは国の直轄土木工事の予定価格を積算するためのルールであり、民間工事に自動的に適用されるものではありません。民間案件では交替要員の扱いは契約次第なので、「配置ポスト数=発注人数」とは限らない点に注意し、見積時に交替要員の計上有無を必ず確認しましょう。
人数が決まるまでの5ステップ(発注前チェックフロー)
- 規制形態を確定する:片側交互通行か、通行止めか、出入口誘導のみか。施工計画とセットで決まります。
- 資格者の要否を確認する:現場が高速道路・自動車専用道路または公安委員会の指定路線に当たるか。当たるなら検定合格警備員(1級・2級)を場所ごとに1人以上。
- 道路使用許可の条件を確認する:許可条件に誘導員の配置が定められていないか。
- 歩行者・自転車の動線を洗い出す:通学路・商店街・駅前など歩行者が多い現場は車両誘導と別に人を置くのが原則です。
- 警備会社の現地調査で最終確定する:休憩・交替の要否、資機材(保安柵・誘導灯等)との組み合わせを含めて警備計画として確定します。複数社に同条件で相談すると、人数計画の妥当性も比較できます(相見積もりの取り方はこちら)。
費用試算|人数が決まれば概算はすぐ出せる
交通誘導警備の費用は、次の式で概算できます。
費用総額 ≒ 人数 × 1人1日あたり単価 × 日数 + 割増・諸経費
単価には「民間工事の実勢」と「公共工事の積算」の2つの物差しがあり、水準が異なります。民間の一般的な工事では日勤8時間でおおむね1.5万〜2.5万円が目安です。一方、公共工事の積算では、令和8年3月適用の公共工事設計労務単価が交通誘導警備員A(交通誘導警備業務の1級・2級検定合格者)18,911円・B(A以外)16,749円(全国加重平均・所定労働時間内8時間あたりの賃金相当額)で、これは警備員本人が受け取るべき賃金であって発注額ではありません。全国警備業協会の資料では、ここに事業主が負担すべき必要経費(労務費の48%)、さらに一般管理費等と消費税を加えたものが業務価格になるとされており、公共工事水準ではA級で1日3万円前後になることもあります(詳しくは警備会社の料金相場まるわかり)。
試算例(編集部試算):片側交互通行の道路工事、警備員3人(検定合格者1人+一般2人)× 15日間・日勤の場合——民間工事の実勢として検定合格者を1日22,000円、一般を1日18,000円と置くと、(22,000円 + 18,000円×2) × 15日 = 87万円程度が概算ベース。ここに延長時の割増や交替要員の要否を加味します。公共工事の積算基準で見る場合は、上記のとおり単価が上振れします。
なお、人数を減らすことは単価を値切るより総額への効果が大きい一方、安全確保に必要な配置を削ると事故時に施工者・発注者の管理責任が問われるおそれがあります。削るなら「日数・時間帯の圧縮」や「増員日をスポットに限定する」方向で調整するのが現実的です。
よくある質問
Q. 小さな水道工事でも警備員は2人必要ですか?
A. 片側交互通行にするなら、規制区間の両端に各1人の計2人が一般的な最低ラインです。車線を規制しない路肩作業などでは1人(または不要)となる場合もあります。道路使用許可の条件と警備会社の判断によります。
Q. 検定合格警備員は全員分必要ですか?
A. いいえ。義務があるのは高速道路等と公安委員会指定路線で、その場合も「業務を行う場所ごとに1人以上」です(警備員等の検定等に関する規則第2条)。残りは一般の警備員で構成できます。
Q. 交通誘導は資格がないと違法なのですか?
A. 一般道の多くの現場では、検定資格のない警備員による交通誘導も違法ではありません。義務があるのは上記の指定された道路のみです。なお警備員は警察官と異なり法的な交通整理の権限はなく、誘導はドライバーの任意の協力を得て行うものです。
Q. 雨で中止になったら人数分のキャンセル料がかかりますか?
A. 契約によります。全国警備業協会も「発注者と協議し、キャンセルポリシーを取り決めましょう」として、契約対象業務やキャンセルポリシーを事前に合意することを推奨しています(「警備料金の基礎知識」本編)。前日・当日連絡ほど料率が上がる設定が一般的なので、契約前に「何日前までなら無料か」「当日中止は何%か」を書面で確認しましょう。
Q. 人数は警備会社に任せておけばいいですか?
A. 最終的な警備計画は警備会社の専門判断ですが、発注者側も「なぜこの人数か」の説明を受けて根拠を理解しておくべきです。複数社の提案を比べると、過剰・過少の判断がしやすくなります。
まとめ|人数の根拠を説明できる警備会社を選ぶ
交通誘導の警備員の人数は、①検定合格警備員の配置義務(警備業法第18条・場所ごとに1人以上)、②道路使用許可の条件、③現場の物理条件——の3層で決まります。「規制形態ごとの目安」と「交替要員の扱い」を押さえて見積を取れば、人数の妥当性は発注者側でも判断できます。
人数計画と費用は警備会社によって提案が分かれるところです。複数社の警備計画を比較してみてください。
【出典・参考】
・警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第18条)
・警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)|e-Gov法令検索(第2条・検定合格警備員の配置基準)
・警視庁「検定合格警備員の配置基準」(配置基準の運用・指定路線)
・道路交通法(昭和35年法律第105号)第77条(道路使用許可)
・国土交通省「交通誘導警備員の積算基準の改定について」(交替要員を含めた人数計上への改定)
・国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(交通誘導警備員A・B単価)
・一般社団法人全国警備業協会「警備料金の基礎知識」(必要経費48%・キャンセルポリシー/解説集は2026年5月 第3版)
※法令・単価は2026年7月時点で各一次情報と照合しています。人数の目安は一般的な実務の整理であり、実際の配置は現場条件・許可条件・警備会社の警備計画によって確定します。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する助言ではありません。
