「夜間だけ、警備員に施設を見回りに来てほしい。いくらかかるのか」——事務所ビル・店舗・工場・倉庫・駐車場の管理でこう考えて調べると、出てくるのは警備会社ごとにばらばらの料金表か、「1時間あたり◯円」という断片的な情報ばかりです。巡回警備の料金が何で決まり、自分の条件ならどの程度の水準になるのかを、根拠つきで示した情報はほとんどありません。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、官公庁施設の警備委託の積算にも使われる国土交通省「建築保全業務労務単価」を根拠に、1巡回あたりの費用水準と、巡回回数別の月額を試算しました。計算式をすべて開示しているので、自社の条件に置き換えて概算できます。なお、巡回警備の業務内容そのもの(何を頼めるか・常駐との違い)は巡回警備とは|常駐との違い・巡回頻度と料金の考え方で解説しています。本記事は「費用」に絞った各論です。
本文中の金額はいずれも目安です。実際の料金は地域・施設の条件・契約内容で変わります。
この記事でわかること
- 巡回回数別の月額の目安【早見表】(毎晩1回・毎晩2回・週2〜3回)
- 巡回警備の料金の仕組み——「1巡回あたり単価×回数」か「月額固定」
- 費用の根拠——国土交通省の労務単価(警備員A・B・C)と必要経費の構造
- 時間帯(日中/深夜)で単価がどう変わるか
- 機械警備との併用で月額を抑える組み合わせパターン【比較表】
- 見積書で確認すべき費用面のチェックリスト
巡回警備の月額の目安【早見表】|巡回回数別
結論の早見表です。深夜帯(22時〜翌5時)に1巡回30分〜1時間(現地での点検・記録を含む)を行う場合の、施設1か所あたりの月額の目安を示します。試算の前提と計算式は次章以降で開示します。
| 巡回頻度 | 月間回数の目安 | 月額の目安(深夜帯・1巡回30分〜1時間) |
|---|---|---|
| 週2回 | 約8〜9回 | 約1.5万〜3万円 |
| 週3回 | 約13回 | 約2万〜4.5万円 |
| 毎晩1回 | 約30回 | 約5万〜10万円 |
| 毎晩2回 | 約60回 | 約10万〜20万円 |
※編集部試算。国土交通省「建築保全業務労務単価」(令和8年度・全国平均)の警備員C相当の賃金水準に、深夜の割増賃金分と、事業主が負担する必要経費(後述)を見込んだ時間単価ベースの水準の幅です(一般管理費・消費税・車両費等の実費は含みません)。巡回警備の料金に公的な統計はなく、実際の見積は最低受託料金の設定、営業所からの距離、複数施設のルート化の可否、報告書の仕様などで上下します。
ポイントは、巡回警備が「必要な回数分だけを買う」方式だという点です。常駐警備(日勤のみでも月額35万〜50万円程度が目安。試算は施設警備の費用相場|月額いくら?)に比べて、無人時間帯の見守りをひと桁小さい月額から組めます。
料金の仕組み|「1巡回あたり単価×回数」または月額固定
巡回警備の料金体系は会社ごとに異なりますが、大きくは①1巡回あたりの単価×月間回数、②回数・内容を決めたうえでの月額固定(パッケージ)の2つに分かれます。どちらの体系でも、金額を動かす要素は共通で、次の6つです。
- 巡回回数:月額は回数にほぼ比例します。毎晩1回と週2回では単純に3倍以上の差になります
- 時間帯:深夜帯(原則22時〜翌5時)は割増賃金が必要な時間帯のため、単価が上がります(詳細は後述)
- 1巡回あたりの滞在時間・点検項目:外周のみの目視か、建物内に立ち入って施錠・火気・設備まで確認するか
- 施設の規模・棟数:面積や確認箇所が多いほど1巡回の所要時間が延びます
- 立地とルート化の可否:警備会社の拠点や既存の巡回ルートに組み込みやすい立地は、移動コストを他の契約と按分できるため有利です
- 付帯条件:鍵の預託(開錠しての建物内点検)、異常時の駆けつけ対応、報告書の様式・頻度など
なお、官公庁が警備委託費を積算するときも構造は同じです。国の建築保全業務の積算基準では、直接人件費を「数量(回数等)×標準歩掛×労務単価」で算出すると定めており、「何回行うか」に単価を掛ける組み立ては公的積算でも共通です(出典:国土交通省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」)。つまり、見積を検討するときは「1巡回あたりいくらか」に分解して比較するのが正攻法です。
費用の根拠|公的単価から「1巡回あたりの水準」を導く
物差しは国土交通省「建築保全業務労務単価」
巡回警備は警備業法第2条第1項第1号の1号警備業務(施設警備)の一形態です(出典:警備業法第2条(e-Gov法令検索))。施設警備系の賃金水準の公的な物差しが、官公庁施設の警備・清掃等の委託費積算に使われる建築保全業務労務単価で、令和8年度の警備員の単価(全国平均)は次のとおりです。
| 区分 | 定義(技術者区分) | 全国平均(1日8時間あたり) | 時間換算 |
|---|---|---|---|
| 警備員A | 施設警備1級の検定資格を有する者、または高度な技術力・判断力・作業の指導等の総合的な技能を有する者(実務経験おおむね6年以上程度) | 19,590円 | 約2,450円 |
| 警備員B | 施設警備2級の検定資格を有する者、または作業の内容判断ができる技術力と必要な技能を有する者(実務経験おおむね3〜6年程度) | 16,720円 | 約2,090円 |
| 警備員C | 警備員A・Bの指示に従って作業を行う能力を有する者(実務経験3年未満程度) | 14,810円 | 約1,850円 |
※出典:国土交通省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」。日割基礎単価は「正規の勤務時間内に業務を行う場合の1日(8時間)当たりの単価」と定義されています。警備員全体の全国平均は17,040円(前年度比+9.1%)で、全職種平均は14年連続の上昇です。
2つ注意があります。第一に、この単価は警備員本人に支払われる賃金相当額で、法定福利費の事業主負担分・研修訓練費などの業務管理費や一般管理費等の諸経費を含みません(同資料の留意事項に明記)。警備会社への支払額はここに諸経費と利潤が乗ります。参考として、全国警備業協会の発注者向け資料「警備料金の基礎知識(解説集)」は、公共工事設計労務単価の例で、業務価格が①労務費(100%)+②事業主が負担すべき必要経費(約48%)+③一般管理費等で構成され、さらに消費税が加わるとする構造を示しています(出典:全国警備業協会「警備料金の基礎知識(解説集)」)。この48%はあくまで公共工事設計労務単価を基礎とした比率で、本記事が用いる建築保全業務労務単価にそのまま掛けられるものではありません。そのため以下では特定の倍率は使わず、必要経費を見込んだ「目安」として時間単価を示します。
第二に、この単価は全国10地区別に設定されており、地区差が大きいことです。警備員Aで16,600円〜22,300円、警備員Cで12,600円〜16,900円の幅があります。上の全国平均はあくまで水準感の目安であり、「全国平均を下回る見積は不当」という物差しにはなりません。自社の地域の水準は、複数社の見積を並べて掴むのが確実です。
時間帯で単価はどう変わるか|深夜帯は割増
労働基準法第37条第4項により、深夜帯(原則22時〜翌5時)の労働には25%以上の割増賃金が必要です(出典:労働基準法第37条(e-Gov法令検索))。夜間の防犯巡回はまさにこの時間帯に重なるため、日中の巡回より単価が上がります。
ただし「料金も25%上がる」と考えるのは早計です。官公庁の積算では、深夜の上乗せは賞与等を含まない「割増基礎単価」を基礎に計算されるため、時間単価全体で見た上乗せはおおむね2割程度になります(仕組みの詳細は夜間警備の料金はなぜ高い?割増の仕組み)。これを警備員C(全国平均)に当てはめると、時間単価の水準は次のとおりです。
| 時間帯 | 賃金相当(時間換算) | 事業主の必要経費を見込んだ時間単価の目安 |
|---|---|---|
| 日中(5時〜22時) | 約1,850円 | 約2,700円 |
| 深夜(22時〜翌5時) | 約2,200円 | 約3,300円 |
※労務費(賃金相当)に、法定福利費・労務管理費など事業主が負担する必要経費を見込んだ時間単価の目安です。一般管理費・消費税・車両費等の実費は含みません(実際の請求額にはこれらが別途加算されます)。編集部試算(警備員C・全国平均ベース)。検定合格者など警備員B相当を指定すれば1〜2割上がります。
試算|1巡回あたりの費用水準
1巡回あたりの拘束時間(現地での点検・記録。移動時間をどこまで含めるかは会社によります)を30分〜1時間と置くと、1巡回あたりの労務費ベースの目安は次のように導けます。
- 日中の巡回:約2,700円/時 × 0.5〜1時間 = 約1,400〜2,700円
- 深夜の巡回:約3,300円/時 × 0.5〜1時間 = 約1,700〜3,300円
つまり「1巡回あたり数千円規模」が労務費ベースの出発点で、これに車両費や報告書作成、鍵管理などの実費・手数が乗るのが実際の見積です。冒頭の早見表は、この深夜の1巡回単価(約1,700〜3,300円)に月間回数を掛けたものです。逆に、この水準から極端にかけ離れて安い見積は、巡回の滞在時間や点検内容が想定と違う可能性があるため、内訳の確認をおすすめします(見方は警備の見積書の内訳の見方)。
機械警備との併用で月額を抑える【パターン比較】
巡回警備の費用対効果を高める定番が、機械警備(センサー・通報装置による監視と異常時の駆けつけ。警備業法第2条第5項に定める、警備業務用機械装置を使用して行う1号警備業務)との併用です。機械警備の対象施設は342万3,470施設(令和6年12月末現在・前年比5.9%増)と拡大が続いています(出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」)。
| パターン | 仕組み | 費用のかかり方 | 向くケース |
|---|---|---|---|
| 巡回のみ | 決めた回数だけ人が点検 | 回数に比例(前掲の早見表) | 侵入リスクよりも施錠・火気・設備の目視点検が主目的 |
| 機械のみ | センサーで24時間監視・異常時に駆けつけ | 初期費用+月額固定 | 完全無人の時間が長く、侵入検知が主目的 |
| 機械+巡回の併用 | 侵入検知は機械、目視点検は週数回の巡回 | 機械の月額+巡回数回分 | 侵入検知と目視点検の両方を、常駐より安く実現したい施設 |
| 常駐警備 | 警備員が配置時間中つねに滞在 | 配置時間の人件費まるごと(日勤のみで月35万円前後〜) | 受付・出入管理や即時対応が必要な施設 |
併用の考え方はシンプルで、「24時間の侵入監視」は機械に任せて人の巡回回数を絞り、巡回は機械では分からない点検(施錠忘れ・火気・水漏れ・設備の異音・敷地の異変)に特化させる——これで巡回回数を毎晩から週2〜3回に減らせれば、前掲の早見表のとおり巡回部分の月額は数分の一になります。機械警備に対応する会社は機械警備に対応する警備会社一覧から探せます。
見積書で確認する費用面のチェックリスト
巡回警備の見積は会社ごとに書き方が違うため、次の点をそろえて比較してください。
- □ 料金体系:1巡回あたり単価か月額固定か。月間回数は明記されているか
- □ 1巡回の内容:滞在時間の目安、点検箇所(外周のみか建物内まで含むか)
- □ 時間帯:巡回時間帯はどこか。深夜割増は単価に込みか別建てか
- □ 時刻の指定:時刻固定か、防犯上望ましいランダム巡回か
- □ 実費:車両費・交通費・機材費が別途かかるか
- □ 鍵預託・緊急対応:開錠しての点検や異常時の駆けつけは基本料金に含むか、出動ごとの課金か
- □ 最低条件:最低受託料金・最低契約期間の定めはあるか
- □ 報告:巡回報告書の様式と提出頻度(異常なしの記録も管理資料になります)
- □ 解約条件:中途解約・キャンセルの扱い(考え方は警備のキャンセル料の相場と決まり方)
- □ 書面と認定:契約前後の書面交付(警備業法第19条で義務づけ)があるか。公安委員会の認定番号を確認したか
同一条件で2〜3社から見積を取り、総額ではなく「1巡回あたり単価」と内訳で比較するのが基本です(手順は警備の相見積もりの取り方)。
よくある質問
Q. 巡回警備は1回あたりいくらが相場ですか?
A. 巡回警備の料金に公的な統計はありません。公的単価(建築保全業務労務単価の警備員C・全国平均)に事業主が負担する必要経費を見込んだ水準では、1巡回30分〜1時間で日中約1,400〜2,700円・深夜約1,700〜3,300円が労務費ベースの出発点です(一般管理費・消費税・実費は別途)。実際は最低受託料金・移動距離・点検内容で変わるため、複数社の見積で自地域の水準を掴んでください。
Q. 夜間・深夜の巡回はどのくらい高くなりますか?
A. 深夜帯(原則22時〜翌5時)は労働基準法第37条第4項により25%以上の割増賃金が必要な時間帯です。ただし割増の計算基礎の関係で、時間単価全体で見た上乗せはおおむね2割程度が積算上の水準です。詳しくは夜間警備の料金はなぜ高い?割増の仕組みをご覧ください。
Q. 週何回にすべきか分かりません。
A. 回数は「守りたいリスク」から逆算します。侵入検知が目的なら機械警備を軸に巡回は週2〜3回、施錠・火気など目視点検が目的なら無人になる日のみ、迷惑行為の抑止なら発生する曜日・時間帯に集中——という設計です。設計の考え方は巡回警備とはで詳しく解説しています。
Q. 費用を抑える方法はありますか?
A. 効果が大きい順に、①機械警備と併用して巡回回数を絞る、②巡回時間帯をリスクの高い曜日・時間帯に集中させる、③複数施設をまとめて契約しルート化してもらう、④同一条件の相見積で単価と内訳を比較する——の4つです。単価の値切りだけで下げるのは、滞在時間や点検の質に跳ね返るためおすすめしません。
Q. マンションの共用部の巡回も同じ考え方ですか?
A. 料金の構造(回数×時間帯×滞在時間)は同じです。管理組合特有の論点(管理員の巡回管理との違い、管理会社経由か直接契約か、理事会での進め方)はマンションの巡回警備|管理組合向けの費用と依頼の手順にまとめています。
まとめ|「1巡回あたり単価×回数」に分解すれば適正か判断できる
巡回警備の費用は、①公的単価(建築保全業務労務単価・警備員C全国平均で時間換算約1,850円)を物差しに、②深夜割増と必要経費の目安を乗せて1巡回あたり数千円規模の出発点を掴み、③月間回数を掛ける——この3ステップで概算できます。深夜・毎晩1回なら月5万〜10万円程度、機械警備と併用して週2〜3回に絞れば月1.5万〜4.5万円程度が試算上の目安です。見積を受け取ったら「1巡回あたりいくらか」に分解し、滞在時間・点検内容・割増や実費の扱いをそろえて比較しましょう。
条件が整理できたら、複数社の比較が適正価格への近道です。
- 【無料】警備依頼先診断|条件に合う警備会社のタイプがわかります
- 施設警備・巡回に対応する警備会社を探す/機械警備に対応する警備会社を探す/都道府県から探す
- 関連記事:巡回警備とは|常駐との違い・巡回頻度と料金の考え方/施設警備の費用相場|月額いくら?/警備会社の料金相場まるわかり
【出典・参考】
・国土交通省「令和8年4月から適用する建築保全業務労務単価について」(警備員A・B・Cの単価と技術者区分の定義、日割基礎単価の定義、単価に諸経費・割増賃金が含まれない旨、10地区別の設定、直接人件費の積算構造)
・一般社団法人全国警備業協会「警備料金の基礎知識(解説集)」(業務価格は①労務費のほか②事業主が負担すべき必要経費・③一般管理費等・消費税で構成される旨。同資料の必要経費48%は公共工事設計労務単価に対する構成比で、本記事の建築保全業務労務単価とは基礎が異なるため、本記事では倍率を用いず必要経費を定性的に見込んでいます)
・警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条第1項第1号・第2条第5項・第19条)
・労働基準法(昭和22年法律第49号)|e-Gov法令検索(第37条第4項・深夜割増)
・警察庁「令和6年における警備業の概況」(巡回業務の実施業者数、機械警備業務対象施設数)
※単価・法令・統計は2026年7月時点で各一次情報と照合しています。本文中の金額はいずれも編集部試算による目安であり、実際の料金は個別の見積によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する助言ではありません。
