警備会社から届いた見積書に、「交通誘導警備員A ○名」「交通誘導警備員B ○名」と書かれていて、単価が違うのはなぜだろう——そう感じたことはありませんか。AとBは何が違い、なぜBより高いAが混じっているのか。そして「うちの現場はAを何人入れないといけないのか」。発注者にとってはコストに直結する疑問です。

検索して出てくる解説の多くは「A=資格あり、B=資格なし」で止まっており、あるいは警備員(求職者)向けの給料・資格の取り方の記事です。「発注する側」が知りたい——単価差の根拠・都道府県ごとの相場・Aを何人配置すれば適法か——に正面から答えるものは多くありません。

この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、発注者(建設会社・工事元請・施設管理者)の目線で警備員A・Bの違いを整理しました。法令の記述はe-Gov法令検索の現行条文と、単価は国土交通省の公表資料(一次情報)と照合しています。

この記事でわかること

  • 警備員A・Bの違いは「検定資格の有無」だけ(法令上の定義)
  • 令和8年3月適用の最新単価と、A・Bの単価差の理由
  • 単価は都道府県別——最高県と最低県の具体例【比較表】
  • Aの配置が「義務」になる現場と、”全員A”は不要である理由(警備業法第18条・検定規則第2条)
  • 見積書のA・B欄をチェックする5つの視点【チェックリスト】

警備員AとBの違いは「検定資格の有無」の一点

まず結論です。交通誘導警備員のA・Bを分けるのは「交通誘導警備業務の検定に合格しているかどうか」だけで、それ以外の違い(できる業務の範囲など)はありません。国土交通省の公共工事設計労務単価は、両者を次のとおり定義しています。

区分 定義(国土交通省・労務単価の職種定義より) ひとことで言うと
交通誘導警備員A 警備業者の警備員(警備業法第2条第4項に規定する警備員)で、交通誘導警備業務に従事する一級検定合格警備員又は二級検定合格警備員 交通誘導警備業務検定(1級または2級)の合格者
交通誘導警備員B 警備業者の警備員で、交通誘導警備員A以外の交通の誘導に従事するもの その検定を持たない警備員

(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」

ここでいう「警備員」は、警備業法第2条第4項が定める「警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事するもの」です(出典:警備業法第2条(e-Gov法令検索))。A・Bとも警備会社に雇用された警備員であり、当サイトは警備員の派遣・紹介を行うものではありません。違いはあくまで検定資格の有無です。

検定は、警備員等の検定等に関する規則により、交通誘導警備業務を含む6種別×1級・2級に区分して行われます(同規則第1条・第4条。第1条第4号が「交通誘導警備業務」)。制度全体は検定合格警備員とは|資格の種類と発注時の指定方法で解説しています。

なぜA・Bで単価が違うのか|労務単価の仕組み

A・Bの単価差の根拠として最も確かなのが、国が毎年公表する公共工事設計労務単価です。これは全国の賃金実態調査(公共事業労務費調査)に基づき、47都道府県別・職種別に設定される「賃金の物差し」で、警備業では交通誘導警備員A・Bの2職種が該当します。令和8年3月適用の全国加重平均は次のとおりです。

区分 全国加重平均(1日8時間) 前年比 A・Bの差額
交通誘導警備員A(検定合格者) 18,911円 +5.8% 2,162円/1人1日
交通誘導警備員B(検定なし) 16,749円 +6.7%

※金額は加重平均値、伸率は単純平均値(国土交通省公表資料の注記による)。

差はおよそ1人1日あたり2,000円強。この差は「Aのほうが偉い」からではなく、賃金実態調査で検定合格者の賃金がBより高い水準だった、その実態が単価に反映された結果です。検定合格者は専門的な知識・能力を身につけており、後述の一定の現場では配置が法律上義務づけられているため、労働市場でも相応の賃金がついています。

ちなみに令和8年3月適用単価では全職種の全国加重平均が25,834円となり、初めて2万5千円を超えました。必要な法定福利費相当額を加算する措置を行った平成25年度の改定から14年連続の上昇で、交通誘導警備員A・Bともこの上昇基調のなかにあります(前年比+5.8%・+6.7%はいずれも全職種単純平均+4.5%を上回る伸び)。警備料金が年々上がって見える背景には、この単価改定があります。

単価は「都道府県別」|全国平均を物差しにしない

ここが誤解の多いポイントです。上の18,911円・16,749円は全国の加重平均であって、実際の単価は都道府県ごとに設定されています。同じ「交通誘導警備員A 1名」でも、県が違えば適正水準は大きく変わります。令和8年3月適用単価から、高い県・低い県の例を挙げます。

都道府県 交通誘導警備員A 交通誘導警備員B A・B差額 メモ
愛知県 22,400円 17,800円 4,600円 Aが全国最高
静岡県 21,800円 17,400円 4,400円 中部圏は高水準
東京都 20,500円 18,700円 1,800円 Bが全国最高・A/B差は小
神奈川県 20,200円 18,700円 1,500円 Bが東京と並ぶ
大阪府 18,200円 15,900円 2,300円 全国平均に近い
沖縄県 16,800円 14,300円 2,500円 低水準
高知県 16,200円 13,800円 2,400円 A・Bとも全国最低
(全国加重平均) 18,911円 16,749円 2,162円 物差しの基準値

※令和8年3月適用の公共工事設計労務単価表より編集部が抜粋。積算等に使用する際は必ず国土交通省の公表資料(原典)をご確認ください。全47都道府県の一覧は警備員の労務単価とは|A・Bと見積の関係に掲載しています。

この表から発注者が押さえておきたいのは次の3点です。

  • 最高と最低で1.3倍以上の開き:Aは愛知県22,400円に対し高知県16,200円。全国平均(18,911円)を「これを下回れば不当」の物差しにしてはいけません。高知や沖縄では1万6千円台のA単価が適正水準であり、それを基準に地方の警備会社を「安すぎる=怪しい」と疑うのは誤りです。比較は自県の単価を基準に行います。
  • 都市部=最高値とは限らない:Aは中部圏(愛知・静岡)が東京都を上回ります。地域の需給を反映した実勢調査の結果であり、「東京より高い=ぼったくり」とは言えません。
  • A・Bの差は県で異なる:愛知県では4,600円差、東京都では1,800円差。「Aを入れるといくら高くなるか」の感覚も、県によって違います。

「Aは高いから良い」ではない|配置義務のある現場だけAが必須

単価が高いAを、どの現場でも多く入れる必要はありません。Aの配置が法律上の義務になるのは、限られた現場だけです。警備業法第18条は、専門的知識・能力を要し事故時に不特定または多数の者へ危険が生じうる「特定の種別の警備業務」について、合格証明書の交付を受けた警備員に実施させることを警備業者に義務づけています(出典:警備業法第18条(e-Gov法令検索))。交通誘導警備業務の具体的な配置基準は、検定規則第2条の表に定められています。

交通誘導の現場 必要な資格者 配置の単位
高速自動車国道・自動車専用道路での交通誘導 交通誘導警備業務検定 1級または2級(=A相当) 交通誘導警備業務を行う場所ごとに1人以上
公安委員会が指定する道路(危険防止のため必要と認めた路線)での交通誘導 同上(1級または2級・A相当) 同上(場所ごとに1人以上
上記以外の一般道の交通誘導 資格の指定なし(Bでも適法)

(出典:警備員等の検定等に関する規則第2条(e-Gov法令検索)

🔴 いちばんの誤解|「全員A」は必要ありません

配置基準の文言は「交通誘導警備業務を行う場所ごとに、一人以上」です。ここを「現場の警備員は全員Aでなければならない」と読むのは誤りで、発注者が過大な支払いをしてしまう典型的な原因です。

  • たとえば高速道路の1つの現場に警備員を5人配置する場合、義務を満たすのはそのうち1人がA(検定合格者)であればよく、残り4人はBでも適法です。
  • したがって適正な見積は、たとえば「交通誘導警備員A 1名+交通誘導警備員B 4名」のようにA・Bが混在した内訳になります。全員をA単価で計上した見積を見たら、その現場に本当に全員分のA配置義務があるのか確認しましょう。
  • 逆に、一般道の工事なら検定合格者でなくても違法ではありません。「無資格の誘導員=違法」ではない点も正確に理解しておきましょう(ただし警備会社には、資格の有無にかかわらず全警備員への教育義務が別途あります)。

「この現場は高速・自専道か、公安委員会の指定路線に当たるか」で、Aが必須かどうかが決まります。指定路線は都道府県ごとに異なるため、判断がつかないときは見積依頼時に「この場所は指定路線に当たりますか。Aは何名必要ですか」と警備会社に確認するのが確実です。この回答の的確さは、法令を理解している会社かどうかの見極めにも使えます。法令・警察・国交省ルールを通した全体像は交通誘導員の配置基準で整理しています。

労務単価は「請求単価」ではない|見積の読み方

もう一つ大切な注意点です。単価表の「A 18,911円/B 16,749円」を、そのまま警備会社への支払額と考えるのは誤りです。国土交通省は資料の中で、労務単価に次のものは含まれないと明記しています。

  • 時間外・休日・深夜の割増賃金(夜間の交通誘導は別途上乗せになります)
  • 現場管理費(法定福利費の事業主負担分、研修訓練等に要する費用)
  • 一般管理費等の諸経費

資料には「例えば、交通誘導警備員の単価については、警備会社に必要な諸経費は含まれていない」と職種名を挙げた注記があります。つまり労務単価は警備員本人が受け取る賃金相当額であり、警備会社への発注額はこれに法定福利費・管理費・適正利潤・消費税が上乗せされた金額になります。業界団体の資料では、必要経費(法定福利費等)が労務単価の約48%とされ、実際の請求単価はさらに一般管理費等が乗ります。発注額への換算の詳しい構造は警備員の労務単価とは|A・Bと見積の関係で解説しています。

そしてもう一点。労務単価は「最低基準」でも「下限規制」でもなく、実勢賃金の平均値です。労務単価を下回る民間見積が直ちに違法・不当というわけではありません。ただし大きく下回る見積は、賃金・法定福利費・教育費のどこかにしわ寄せが行っていないかを確認する材料にはなります。労務単価は「見積を読む物差し」として使うのが正しい姿勢です。

見積書のA・B欄をチェックする5つの視点【チェックリスト】

  1. A・Bの人数と単価が分かれて明記されているか:資格者と一般で単価が違うため、内訳に「A ○名×単価/B ○名×単価」と示されている見積は信頼しやすいと言えます。
  2. Aの人数が現場の配置義務と整合しているか:義務は「場所ごとに1人以上」。全員がAになっていないか、逆に指定路線なのにAが0名になっていないかを確認します。
  3. 単価が自県の労務単価と大きくかけ離れていないか:全国平均ではなく自県のA・B単価を基準に見ます。極端に低ければ内訳の妥当性を、極端に高ければ根拠を尋ねます。
  4. 夜間・早朝の割増が別建てになっているか:深夜(原則22時〜翌5時)は割増賃金の対象で、労務単価に含まれません。夜間現場で割増が計上されていない見積は要確認です。
  5. 見積の適用単価が最新年度か:労務単価は毎年3月に改定されます。古い相場観のままだと「急に高くなった」と感じやすい点にも注意しましょう。

複数社を比べるときの進め方は警備の相見積もりの取り方、区分別の相場全体は警備会社の料金相場まるわかりをご覧ください。

よくある質問

Q. AとBで、できる業務に違いはありますか?

A. 交通誘導警備業務そのものは、A・Bどちらも行えます。違いは検定資格の有無だけで、業務範囲の差ではありません。ただし高速自動車国道・自動車専用道路や公安委員会が指定する道路での交通誘導は、A相当(検定合格者)を「場所ごとに1人以上」配置することが警備業法第18条・検定規則第2条で義務づけられています。

Q. 現場の警備員は全員Aにしないといけないのですか?

A. いいえ。配置義務は「交通誘導警備業務を行う場所ごとに1人以上」です。たとえば5人配置の現場なら、1人がA(検定合格者)で残り4人がBでも適法です。全員分をA単価で計上した見積は、本当に全員分の配置義務があるのか確認しましょう。

Q. Bだけで頼むのは違法ですか?

A. 一般道の交通誘導など、配置義務のない現場ではBのみでも違法ではありません。配置義務があるのは高速・自動車専用道路、公安委員会の指定路線に限られます。該当するかどうかは所轄警察署または警備会社に確認してください。

Q. AはBより必ず高いのですか?県によって差はありますか?

A. 労務単価上はAがBを上回ります(全国加重平均でA18,911円・B16,749円、差は約2,162円)。ただし差額は都道府県で異なり、愛知県では約4,600円、東京都では約1,800円です。自県の単価で確認しましょう。

Q. 労務単価どおりの金額で発注できますか?

A. できません。労務単価は警備員本人の賃金相当額で、法定福利費の事業主負担分・管理費・適正利潤・消費税は含まれていません。発注額はこれらを上乗せした金額になります。労務単価は請求額そのものではなく、見積の妥当性を測る物差しとして使ってください。

まとめ|A・Bの違いは資格の有無。カギは「場所ごとに1人以上」

交通誘導警備員A・Bの違いは「交通誘導警備業務検定の合格者かどうか」の一点で、単価差(全国加重平均でA18,911円・B16,749円)は検定合格者の賃金実態が反映された結果です。単価は都道府県別なので、全国平均ではなく自県の水準を物差しにします。そしてAの配置が義務になるのは高速・自専道・指定路線に限られ、その場合も「場所ごとに1人以上」でよく、全員をAにする必要はありません。この3点を押さえれば、見積書のA・B欄を根拠を持って読み解け、過不足のない発注ができます。

自県の相場観に合った警備会社を、お近くのエリアから比較してみてください。


【出典・参考】
警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条第4項=警備員の定義/第18条=特定の種別の警備業務の実施)
警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)|e-Gov法令検索(第1条第4号=交通誘導警備業務/第2条=配置基準「場所ごとに1人以上」/第4条=1級・2級の区分)
国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(交通誘導警備員A・Bの定義・単価18,911円/16,749円・前年比、全職種平均25,834円・14年連続上昇、労務単価に諸経費が含まれない旨の注記)
・農林水産省・国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価表」(国土交通省 公共工事設計労務単価ページ/都道府県別単価)
※法令・単価は2026年7月時点でe-Gov法令検索および国土交通省の公表資料と照合しています。本文中の金額・試算は目安であり、実際の金額は個別の見積によります。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する法的助言ではありません。配置義務の個別判断は所轄警察署・警備会社にご確認ください。