「見積書を見たら、資格を持っていない警備員が含まれているようだ。このまま工事を進めて問題にならないか」——交通誘導を手配する発注者から、こうした不安の声をよく聞きます。

先に結論をお伝えします。交通誘導警備業務に、検定資格を持たない警備員が従事すること自体は、原則として違法ではありません。配置が義務づけられるのは、警備業法第18条と「警備員等の検定等に関する規則」(以下「検定規則」)が限定列挙した現場だけで、交通誘導では2種類の道路に限られます。しかも義務は「現場の警備員全員」ではなく「その場所ごとに1人以上」です。

ただし、「無資格」は「無教育」を意味しません。検定資格がない警備員でも、警備業法は現場に出す前の新任教育と毎年度の現任教育を警備業者に義務づけており、時間数も教える中身も条文で決まっています。この記事では「近くの警備会社ナビ」編集部が、依頼する側が判断できる形で「資格が要る現場・要らない現場」を切り分けます。法令の記述はすべてe-Gov法令検索の現行条文と照合しました。

この記事でわかること

  • 交通誘導は検定資格がなくても原則として適法である理由(警備業法第18条の建て付け)
  • 「無資格」と「無認定」はまったく別の話であること【比較表】
  • 配置義務がかかる2つの現場【一覧表】と、義務は「場所ごとに1人以上」であること
  • 資格がなくても法定義務である教育——新任20時間以上・現任年10時間以上の根拠条文
  • 契約・仕様書で有資格者が求められるケースと、発注者の判断フロー

結論|交通誘導は検定資格がなくても原則として適法です

まず法律の建て付けです。警備業法第18条は次のように定めています(出典:警備業法第18条(e-Gov法令検索))。

警備業者は、警備業務(中略)のうち、その実施に専門的知識及び能力を要し、かつ、事故が発生した場合には不特定又は多数の者の生命、身体又は財産に危険を生ずるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める種別のものを行うときは、(中略)その種別ごとに(中略)合格証明書の交付を受けている警備員に、当該種別に係る警備業務を実施させなければならない。

ポイントは「国家公安委員会規則で定める種別のものを行うとき」という限定です。法律は「交通誘導の警備員は資格が必要」とは書いておらず、規則(=検定規則)が指定した業務にだけ配置義務がかかる構造です。

検定規則第1条は対象となる6種別(空港保安・施設・雑踏・交通誘導・核燃料物質等危険物運搬・貴重品運搬の各警備業務)を定義し、第2条がその実施基準を表で定めています。交通誘導警備業務についてこの表が挙げているのは2つの場合だけです(出典:警備員等の検定等に関する規則第1条・第2条(e-Gov法令検索))。

その2つに当たらない一般の道路工事現場・建築現場・商業施設の出入口・イベントの車両誘導などでは、無資格の警備員が交通誘導を行っても警備業法上の違反にはなりません。こちらに当たる現場も少なくありません。検定制度の仕組みは検定合格警備員とはで解説しています。

「無資格」と「無認定」はまったく別の話です

必ず区別したいのが、警備員個人の「資格(検定)」警備会社の「認定」です。

項目 検定資格(警備員個人) 認定(警備会社)
根拠 警備業法第18条・検定規則第1条/第2条 警備業法第4条
義務の中身 特定の現場で有資格者を配置する(警備業者の義務) 警備業を営む前に公安委員会の認定を受ける
ないとどうなるか 対象外の現場なら問題なし。対象現場で欠くと法第48条の指示・第49条の営業停止の対象 無認定営業は違法。100万円以下の罰金(法第57条第1号)
発注者の確認 現場が配置義務の対象かをまず判定する すべての依頼で必須。認定証番号を確認する

つまり、「無資格の警備員がいる」ことは通常問題になりませんが、「無認定の業者に頼む」ことは業者側の違法行為に加担する形になります。認定業者は認定を示す標識を主たる営業所の見やすい場所に掲示する義務があります(法第6条第1項)。確認方法は警備業の認定番号の確認方法、制度の全体像は警備業の認定制度とはをご覧ください。

資格が必要になるのは2つの現場だけ【一覧表】

検定規則第2条の表のうち、交通誘導警備業務に関するのは五の項と六の項です。

区分 対象となる現場 必要な資格 配置人数 指定は必要か
五の項 高速自動車国道(高速自動車国道法第4条第1項)または自動車専用道路(道路法第48条の4)で行う交通誘導警備業務 交通誘導警備業務に係る1級または2級の検定合格警備員 業務を行う場所ごとに1人以上 不要(条文上、当然に義務)
六の項 道路又は交通の状況により、都道府県公安委員会が道路における危険を防止するため必要と認めるものに限る交通誘導警備業務 同上(1級または2級 業務を行う場所ごとに1人以上 必要(公安委員会の告示による指定)
上記以外 一般の道路工事・建築現場・私有地・商業施設の出入口など 法令上の配置義務なし

①高速自動車国道・自動車専用道路(五の項)

高速自動車国道と自動車専用道路での交通誘導警備業務は、公安委員会の個別の指定を待たず、条文上そのまま配置義務の対象です(高速道路上の車線規制などが典型)。なお条文は「一級検定合格警備員又は二級検定合格警備員」と並列で規定しており、2級でも要件を満たします。「高速道路だから1級が必須」ということはありません(雑踏警備業務など他の種別では、1級と2級で求められる配置が異なる項もあります)。

②都道府県公安委員会が必要と認めた路線・区間(六の項)

もう一つが、いわゆる「資格者配置路線」です。検定規則第2条の表の六の項を受けて、都道府県公安委員会が告示で具体的な路線を指定しています。指定の仕方は都道府県ごとに異なり、一般国道・県道・市道の路線名を列挙する形式が一般的です。

たとえば愛知県公安委員会は、六の項に基づき一般国道16路線・県道76路線・名古屋市道1路線を指定しています。国道と県道の区間はいずれも「愛知県の全域」、名古屋市道(名古屋環状線)は「名古屋市の全域」です(愛知県公安委員会告示第10号・令和2年12月11日、令和3年7月1日施行)。東京都では東京都公安委員会告示(平成30年4月2日第130号、平成30年10月1日施行)が指定路線を定めています。

該当するかどうかは都道府県警察のウェブサイトで公表されている告示で確認できます。指定は改正されることがあり、区間単位で定められている場合もあるため、現場住所だけで判断せず、工事区間を伝えて警備会社に確認してもらうのが確実です。

義務の中身は「場所ごとに1人以上」|現場全員ではありません

ここは金額を大きく左右するポイントです。検定規則第2条の表は、五の項・六の項ともに人数欄を「交通誘導警備業務を行う場所ごとに、一人以上」と定めています。「その現場に配置する警備員が全員有資格者でなければならない」という意味ではありません。したがって資格者配置路線の1か所に警備員を4人配置する場合、そのうち1人が検定合格警備員であれば法令上の要件を満たし、残る3人が無資格でも違反にはなりません。「全員を有資格者にしてください」と発注者側から求めると、必要のない費用が上乗せされます。人数の考え方の全体像は交通誘導員の配置基準で整理しています。

なお法第18条に直罰は設けられておらず、公安委員会による指示(法第48条)や営業停止命令(法第49条第1項)の対象となる仕組みです。ただし営業停止命令に違反すれば1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(法第56条第2号)となるため、通常は警備会社側が判断して配置します。

資格がなくても「無教育」ではない|警備業法が課す教育義務

「無資格の警備員=訓練を受けていない素人」ではありません。警備業法は検定資格の有無にかかわらず警備業者に警備員教育を義務づけています。根拠は第21条第2項です。「警備業者は、その警備員に対し、警備業務を適正に実施させるため、この章の規定によるほか、内閣府令で定めるところにより教育を行うとともに、必要な指導及び監督をしなければならない」と定められています。この「内閣府令で定めるところ」に当たるのが警備業法施行規則第38条です(出典:警備業法施行規則第38条(e-Gov法令検索))。同条第1項により、警備員教育は①基本教育、②業務別教育、③必要に応じて行う知識・技能の向上のための教育で構成されます。

現場に出す前に20時間以上|新任教育(施行規則第38条第4項)

新たに従事させようとする警備員の教育時間数は施行規則第38条第4項の表が定めています。同表の一の項——合格証明書も指導教育責任者資格者証も持たず、直近3年間の実務経験もない、まったくの新人——は次のとおりです。

教育の種類:基本教育及び業務別教育/教育時間数:二十時間(施行規則第38条第4項の表の一の項)

同項の柱書は「同表の下欄に掲げる教育時間数以上行うものとする」としており、20時間は下限です。経験に応じて短縮される区分もあります。

区分(施行規則第38条第4項の表) 教育の種類 時間数
一の項:二〜七の項に当たらない警備員(=合格証明書も直近3年の実務経験もない、まったくの新人) 基本教育及び業務別教育 20時間
六の項:最近3年間に同じ区分の警備業務に通算1年以上従事した者 基本教育及び業務別教育 7時間
七の項:最近3年間に別区分の業務に通算1年以上従事した者、または警察官の職に通算1年以上あった者 基本教育及び業務別教育 13時間

※このほか、合格証明書等を持つ者をその種別以外の業務に就かせる場合(二の項・10時間、三の項・3時間)の区分もあります。同項の柱書の括弧書きにより、当該種別の合格証明書を持つ警備員をその種別の業務に従事させる場合は新任教育の対象外です。

毎年度10時間以上|現任教育(施行規則第38条第5項)

現に従事させている警備員にも毎年度の教育が義務づけられています。根拠は施行規則第38条第5項の表で、同表の一の項(二の項に当たらない警備員)は次のとおりです。

教育の種類:基本教育及び業務別教育/教育時間数:十時間(施行規則第38条第5項の表の一の項・毎年度)

注意したいのは、現任教育がまるごと免除されるのは当該種別の1級検定合格警備員だけという点です。第5項の柱書が対象から除くのは「合格証明書(国家公安委員会が定めるものに限る。)の交付を受けている警備員で当該合格証明書に係る種別の警備業務に従事させているもの」=当該種別の1級合格者で、2級の検定合格警備員は二の項に当たり、毎年度6時間以上の業務別教育が必要です(警視庁「警備員に対する教育時間」も2級合格者の現任教育を「年度ごとに6時間以上」としています)。なお同表の備考により、新任教育を行った年度は、その分の現任教育を行わなくてもよいとされています。

この時間数は2019年(令和元年)の施行規則改正で見直されました(改正前は新任30時間・現任は前期後期各8時間の計16時間)。古い数字のままのページも残っているためご注意ください。

何を教えるかも条文で決まっています(同条第2項・第3項)

教育の中身も規則が定めています。新任の基本教育は、施行規則第38条第2項の表の一の項により次の5項目です。

  • 警備業務実施の基本原則に関すること
  • 警備員の資質の向上に関すること
  • 警備業法その他警備業務の適正な実施に必要な法令に関すること
  • 事故の発生時における警察機関への連絡その他応急の措置に関すること
  • 護身用具の使用方法その他の護身の方法に関すること

そのうえで、交通誘導が属する2号警備業務(警備業法第2条第1項第2号)の業務別教育として、同条第3項の表が次の事項を定めています。

  • 当該警備業務を適正に実施するため必要な道路交通関係法令に関すること
  • 車両及び歩行者の誘導の方法に関すること
  • 人又は車両の雑踏する場所における雑踏の整理の方法に関すること
  • 当該警備業務を実施するために使用する各種資機材の使用方法に関すること
  • 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生に際してとるべき措置に関すること
  • その他当該警備業務を適正に実施するため必要な知識及び技能に関すること

業務別教育は原則として講義と実技訓練の両方の方法により、その区分の指導教育責任者等が行うものとされています(同条第3項の備考)。また、受講者本人・受講状況・知識の習得状況の確認と質疑応答の機会の確保という4要件を満たせば、講義は電気通信回線を使用する方法(オンライン)でも実施できます。同条第2項の備考三が「前号及び次項の講義の方法は」と定めているとおり、これは基本教育だけでなく業務別教育の講義にも及びます(オンラインが認められるのは講義の方法であり、実技訓練は別です)。

教育の記録は営業所への備付けが義務(法第45条)

警備業法第45条は営業所ごとに警備員の名簿その他の書類の備付けを義務づけており、施行規則第66条第1項第1号ロは名簿の記載事項として「当該警備員に対して行つた警備員教育に係る実施年月日、内容、時間数及び実施者の氏名」を挙げています。同項第5号は年度ごとの教育計画書の備付けも求めています。

発注者にこれらの書類を閲覧する権利はありませんが、「教育計画に沿って新任・現任教育を実施しているか」を打ち合わせで質問することはできます。即答できる会社とそうでない会社では体制の差が表れます。なお、警備業法第14条第1項は「18歳未満の者又は第3条第1号から第7号までのいずれかに該当する者は、警備員となつてはならない」と定めており、検定資格がなくても、警備員になれる人の範囲そのものが法律で絞られている点も押さえておいてください。

もう一つのレイヤー|契約・仕様書で有資格者が求められる場合

ここまでは「法令上の義務」の話でした。実務ではもう一つ、法令とは別の層にある契約上の要求があります。公共工事では、発注機関の積算・設計図書が交通誘導警備員を「交通誘導警備員A」(検定合格者)「交通誘導警備員B」(それ以外)に区分し、人数を指定することがあります。この場合、法令上は配置義務がない現場でも契約の条件としてAの配置が求められることになります。逆に、設計上Bで足りる現場に思い込みでAを求めれば、その分だけ費用が増えます。A・Bの区分は警備員AとBの違い、単価の見方は警備員の労務単価とはで解説しています(労務単価は都道府県別の実勢賃金の平均値で、請求金額でも最低基準でもありません)。

民間発注でも、施主やゼネコンの仕様書・安全協定が有資格者の配置を求めているケースがあります。「法令で必要か」と「契約で求められているか」は別々に確認する——これが過不足のない発注の基本です。なお、いずれにも定めがなくても現場条件から有資格者や増員が望ましい場合があり、その判断は警備計画書に表れます。

発注者の判断フロー|この現場に有資格者は要るか

  1. 依頼先は認定を受けた警備業者か(警備業法第4条)→ NOなら依頼しない。例外なく必須です
  2. 現場は高速自動車国道・自動車専用道路か → YESなら検定合格警備員を場所ごとに1人以上(検定規則第2条の表 五の項)
  3. 現場は都道府県公安委員会が指定した路線・区間か → YESなら同じく場所ごとに1人以上(同表 六の項)
  4. 設計図書・仕様書で「交通誘導警備員A」等が指定されているか → YESなら契約上その人数を配置(法令とは別)
  5. いずれもNO法令上の資格要件はありません。無資格の警備員のみの配置でも適法です。ただし無資格の警備員であっても、新任教育・現任教育の履行は必ず必要です(法第21条第2項・施行規則第38条)。以後は経験・教育体制・現場適性で選びます

契約時に交付される書面もあわせて確認しましょう。警備業務を行う日及び時間帯(施行規則第33条第1項第1号ロ)と警備員の人数及び担当業務(同号ニ)は、書面に明記すべき事項として規則が定めています(法第19条第1項・第2項)。書面は紙に限られず、第19条第3項により依頼者の承諾を得れば電磁的方法(メール等)でも適法です。

依頼の進め方は警備依頼の流れ、会社の見極め方は良い警備会社の見極めチェックリストをご覧ください。

よくある質問

Q. 自社の社員に現場の車両誘導をさせるのは問題ありませんか?

A. 自社の従業員が自社の工事・イベントのために行う誘導は、警備業法第2条第1項の「他人の需要に応じて行うもの」に当たらないため警備業法の規制対象外です(いわゆる自主警備)。警備業法上の資格・認定は問題になりません。ただし、道路使用許可の条件として警備員の配置が付されている場合や、発注者の仕様書で警備会社への委託が求められている場合はそれに従う必要があり、安全管理上の責任は自社が負います。詳しくは自主警備とはをご覧ください。

まとめ|「資格が要る現場」は限定列挙。判断は3層に分けて

有資格者の配置が義務づけられるのは、①高速自動車国道・自動車専用道路と、②公安委員会が告示で指定した路線・区間だけ(検定規則第2条の表 五・六の項)。義務の中身は「場所ごとに1人以上」です。一方、資格がないことは無教育を意味せず、新人でも従事前に20時間以上・従事中は毎年度10時間以上の教育が義務です。確認すべきは「資格の有無」ではなく、①依頼先が認定業者か、②現場が配置義務の対象か、③契約・仕様書で有資格者が求められていないか——この3層です。

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【出典・参考】
警備業法(昭和47年法律第117号)|e-Gov法令検索(第2条第1項・第4条・第6条第1項・第14条・第18条・第19条・第21条第2項・第45条・第48条・第49条・第56条・第57条)
警備業法施行規則(昭和58年総理府令第1号)|e-Gov法令検索(第33条第1項第1号ロ・ニ=書面記載事項/第38条=警備員教育。新任は第4項の表の一の項「二十時間」、現任は第5項の表の一の項「十時間」〔毎年度〕・二の項「六時間」。教育事項は第2項・第3項、記録は第66条第1項第1号ロ・第5号)
警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)|e-Gov法令検索(第1条第4号=交通誘導警備業務の定義/第2条の表 五の項・六の項=配置基準)
警視庁「警備員に対する教育時間」(一般警備員:新任20時間以上・現任10時間以上/当該種別の1級合格者は免除、2級合格者の現任は年度ごとに6時間以上)
愛知県公安委員会告示第10号「検定合格警備員配置義務指定路線の制定」(令和2年12月11日・令和3年7月1日施行/一般国道16路線・県道76路線・名古屋市道1路線)
東京都公安委員会告示第130号「交通誘導警備業務の検定合格警備員の配置が必要な路線」(平成30年4月2日・平成30年10月1日施行)
※法令は2026年7月時点でe-Gov法令検索の現行条文と照合しています。資格者配置路線の指定は都道府県ごとに異なり改正されるため、最新の告示をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別案件に関する法的助言ではありません。