「公共工事の積算で、交通誘導警備員の費用はどの費目にどう計上されるのか」「発注者の積算と、警備会社から届く見積の人数や金額が合わない」——公共工事の積算担当者や元請の現場代理人、そして警備会社に発注する立場の方が必ず突き当たる疑問です。検索して出てくるのは積算ソフトの操作解説や単価表の転載が中心で、「国の基準そのものに何と書いてあるか」を確認できる記事はほとんどありません。
実は、交通誘導警備員費の計上ルールはこの10年で大きく変わっています。労務費は共通仮設費から直接工事費への計上に見直され、交代要員(交替要員)は平成30年度の積算基準改定で割増係数方式が廃止されて「実人数×日数」の積み上げに変わりました。この経緯を知らないまま古い解説を参考にすると、積算と実費の乖離の原因が読み解けません。
この記事では、全国の警備会社を地域と業務内容で探せる「近くの警備会社ナビ」編集部が、国土交通省の現行通達(「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」国官技第455号)・平成30年度積算基準改定資料・令和8年3月適用の公共工事設計労務単価・全国警備業協会「警備料金の基礎知識」という一次資料だけを根拠に、発注者・受注者のどちらにも通用する公的ルールを中立に整理します。法令はe-Gov法令検索の現行条文と照合しています。
この記事でわかること
- 警備員費が公共工事の積算体系のどこに入るか(労務費は直接工事費に積み上げ計上)【図解表】
- 単価の物差し=公共工事設計労務単価(令和8年3月適用の交通誘導警備員A・B、都道府県別)
- 交代要員の計上ルール——平成30年度改定で割増係数を廃止し「交替要員も人数に含めて計上」へ
- 夜間・交替制勤務の労務費補正のかかり方(掛かるのは割増対象賃金部分だけ)
- 検定合格警備員(A単価)の配置義務は「場所ごとに1人以上」であって全員ではないこと
- 受注側が押さえる支払いルール——必要経費分を計上しない・値引くことは「不当行為」(国交省明記)
警備員費は積算体系のどこに入るか|労務費は「直接工事費」に積み上げ計上
国土交通省直轄の土木工事では、請負工事費は次の階層で積み上げられます(出典:国土交通省「土木工事工事費積算要領及び基準の運用」令和8年2月27日付 国官技第455号)。交通誘導警備員の費用がどの層に関係するかを重ねると、次の図解表になります。
| 積み上げの階層 | 何の費用か | 交通誘導警備員費との関係 |
|---|---|---|
| ①直接工事費 | 工事目的物の施工に直接必要な費用(労務費・材料費・機械経費) | ★警備員の労務費はここ。労務単価×配置人員×日数で積み上げ計上 |
| ②共通仮設費 (①+②=純工事費) |
運搬費・準備費・安全費・営繕費など施工に共通して必要な経費 | 警備員の雇用に伴う必要経費(安全管理費等)の計上先の一つ |
| ③現場管理費 (純工事費+③=工事原価) |
労務管理費・法定福利費・保険料など現場を管理する経費 | 法定福利費(事業主負担分)・研修訓練費等の計上先 |
| ④一般管理費等 (工事原価+④=工事価格) |
受注企業を継続運営するために必要な費用 | 警備会社を含む企業運営の経費に対応する層 |
| ⑤消費税等相当額 (工事価格+⑤=請負工事費) |
消費税等 | 最後に加算される |
ポイントは、交通誘導警備員の労務費が①直接工事費に「積み上げ」で計上されることです。全国警備業協会「警備料金の基礎知識」(2024年11月)は、この経緯を「交通誘導警備員の労務費は、平成28年度に国土交通省の『品確法改正を踏まえた基準等の充実』として、共通仮設費から直接工事費に計上方法が見直され、交通誘導警備員の労務費に対して共通仮設費並びに現場管理費が積算されることがより明確化されています」と説明しています(出典:全国警備業協会「警備料金の基礎知識」)。
現行の国交省通達にも、この扱いは明文で残っています。共通仮設費の準備費の項には「準備に伴い発生する交通誘導警備員の費用については、直接工事費に積上げ計上する」と定められており、準備段階の誘導業務であっても率計算の中に埋もれさせず、直接工事費として個別に数える建て付けです(出典:前掲・国官技第455号運用 第2章 工事費の積算 ②間接工事費 2.共通仮設費 2-3 準備費(1)5))。
一方、警備員の賃金以外に警備会社の雇用に伴って生じる必要経費(法定福利費の事業主負担分・労務管理費・安全管理費・宿舎費等)は、労務単価には含まれず、「公共工事の予定価格の積算においては、共通仮設費、現場管理費の中に計上されている」と労務単価の公表資料に明記されています(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。つまり「賃金は①、雇用の経費は②③、企業運営の経費は④」という役割分担が官積算の基本構造です。
単価の物差しは「公共工事設計労務単価」|交通誘導警備員A・B(令和8年3月適用)
直接工事費に積み上げる際の単価には、農林水産省・国土交通省が毎年公表する公共工事設計労務単価を使います。47都道府県・51職種別に設定され、警備業では「交通誘導警備員A」「交通誘導警備員B」の2職種が該当します。令和8年3月適用の全国加重平均は次のとおりです(出典:前掲・国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。
| 職種 | どういう警備員か | 全国加重平均(8時間当たり) | 前年からの伸び |
|---|---|---|---|
| 交通誘導警備員A | 交通誘導警備業務に係る一級または二級の検定合格警備員 | 18,911円 | +5.8% |
| 交通誘導警備員B | 交通誘導警備員A以外で交通の誘導に従事する警備員 | 16,749円 | +6.7% |
※金額は加重平均値、伸び率は単純平均値(公表資料の注記による)。
注意したいのは、この金額が全国の水準感を示す参考値にすぎないことです。積算に実際に使うのは都道府県別の単価で、地域によって金額はかなり違います。自分の県の単価は警備員の労務単価とは|47都道府県別一覧で確認できます。AとBの違いと使い分けの詳細は警備員AとBの違いをご覧ください。
A単価の人数を決める法令ルール|「場所ごとに1人以上」
A単価(検定合格警備員)を何人計上するかは、警備業法の配置義務と連動します。警備業法第18条は、国家公安委員会規則で定める種別の警備業務について、検定合格証明書の交付を受けた警備員に当該業務を実施させることを義務づけ、これを受けた「警備員等の検定等に関する規則」第2条の表は、高速自動車国道・自動車専用道路での交通誘導警備業務(五の項)と、公安委員会が危険防止のため必要と認めた路線での交通誘導警備業務(六の項)について、一級または二級の検定合格警備員を「交通誘導警備業務を行う場所ごとに、一人以上」配置するよう定めています(出典:警備業法第18条(e-Gov法令検索)・警備員等の検定等に関する規則第2条(e-Gov法令検索))。
義務は「場所ごとに1人以上」であって、現場の警備員全員が検定合格者である必要はありません。例えば指定路線上の現場に4人配置するなら、1人をA単価、3人をB単価で積算する構成があり得ます。どの道路が対象になるかは検定合格警備員の配置路線、配置義務の全体像は交通誘導員の配置基準で詳しく解説しています。
労務単価に「含まれていないもの」を押さえる
公共工事設計労務単価は所定労働時間内8時間当たりの賃金相当額で、次のものを含みません(出典:前掲・労務単価公表資料)。
- 時間外・休日・深夜労働の割増賃金
- 現場管理費(法定福利費の事業主負担分、研修訓練等に要する費用等)および一般管理費等の諸経費——資料は「例えば、交通誘導警備員の単価については、警備会社に必要な諸経費は含まれていない」と職種名を挙げて注記しています
この「含まれていないもの」が、後述する受注側の支払いルール(不当行為の禁止)に直結します。
交代要員の計上ルール|平成30年度改定で「実人数×日数」の積み上げに
交代要員(国交省資料の表記は「交替要員」)とは、休憩・休息の間も交通誘導を止められない現場で、交代で持ち場に入るための要員です。労働基準法第34条は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を労働時間の途中に与えることを使用者に義務づけており(出典:労働基準法第34条(e-Gov法令検索))、一般交通を規制したまま休憩で誘導が空白になる事態は避けられないため、交代要員の確保は現場運営上の必然です。
この交代要員の積算方法は、平成30年度の積算基準改定で大きく変わりました。国土交通省の改定資料は、現道上の工事で「現場の配置に要した費用と官積算の計上額に乖離がある」ことを理由に、「現場の実態に即した積算を可能とするため、交替要員が必要な工事における割増係数による積み上げを廃止し、交替要員も含めた必要な配置人数を必要日数計上」すると明記しています(出典:国土交通省「平成30年度 国土交通省土木工事・業務の積算基準等の改定」平成30年3月20日)。
| 平成29年度まで(旧方式) | 平成30年度から(現行方式) | |
|---|---|---|
| 計上方法 | 割増係数による積み上げ(例:昼間勤務・交替要員有りは単価×1.2×日数×配置人員) | 交替要員も配置人数に含めて、実人数×必要日数で積み上げ |
| 資料が示した乖離の例 | 誘導警備員4人×1.2=4.8人/日と計上 | 現場実態は誘導警備員4人+交替要員1人=5.0人/日(改定後はこれを計上。旧方式では0.2人/日の乖離が生じていた) |
| 交替要員を計上する条件 | 「休憩・休息時間についても交通誘導を行う場合」(新旧共通) | |
改定後の基準は「当該工事の制約条件を勘案した交通規制パターン等による1日当たりの交通誘導警備員の配置人員を基に、工事期間内で配置される人数を計上する。なお、休憩・休息時間についても交通誘導を行う場合には、交替要員も交通誘導警備員の人数に含めて計上する」という文言です(出典:前掲・平成30年度改定資料)。発注者側は「交代要員は係数で自動的に見込まれている」という古い理解のままだと過少計上になり、受注者側は交代要員の必要性を規制パターンから説明できれば積算根拠を持って協議できる、双方にとって重要な改定です。
夜間・交替制勤務は「労務費の補正」で対応する
夜間勤務や交替制勤務を行う場合は、人数の話とは別に労務費の補正を行います。現行の運用では、通常勤務時間帯を超える時間外は「基準額×割増対象賃金比×1.25」、深夜時間(22時〜5時)の時間外は「同×1.50」、2交替・3交替制の所定労働時間内の深夜部分は「同×0.25」の加算と定められています(出典:前掲・国官技第455号運用 第2章 工事費の積算 ①直接工事費 3.労務費(3)夜間工事の労務単価)。
ここで見落とされがちなのは、係数が掛かる相手が「割増対象賃金比」を介した賃金部分だけだという点です。「夜間だから単価総額が25%増し」という理解は誤りで、実際の上乗せ幅は割増対象賃金の比率に左右されます。詳しくは夜間警備の割増料金の仕組みで解説しています。
「歩掛」との関係|警備員費は率や係数ではなく配置計画から積み上げる
歩掛(ぶがかり)とは、ある作業を単位量こなすのに必要な労務・機械・材料の標準量を示す係数で、直接工事費の労務費は基本的に「歩掛×単価」で計算されます。では交通誘導警備員に固有の歩掛表があるかというと、国土交通省直轄の土木工事における現行の計上方法は、前章のとおり「交通規制パターン等による1日当たりの配置人員×工事期間内の日数」を直接積み上げる方式です。舗装何平方メートル当たり何人という歩掛率で自動計算されるのではなく、規制計画そのものが積算根拠になります。
したがって積算の精度は「規制パターンをどれだけ現実的に設定するか」で決まります。片側交互通行なら停止位置ごとの要員、出入口があれば出入口要員、歩行者動線があれば歩行者用の要員というように、配置図から人数を数える発想です。1日に必要な人数の考え方は警備員の必要人数の決め方、建設現場での手配実務は建設現場の警備の基礎知識で整理しています。人数と日数から総額の目安を自分で試算する手順は工事現場の警備員費用の計算方法が使えます。
なお、ここで示したのは国土交通省直轄土木工事の基準です。都道府県・市町村などの発注機関は多くが国の基準に準拠しつつも、それぞれの積算基準を持っています。個別工事の歩掛・計上方法の最終的な根拠は、その工事の発注機関の積算基準と設計図書ですので、疑義があれば発注機関に確認するのが確実です。
受注者・元請が押さえる支払いルール|必要経費分の値引きは「不当行為」
積算の構造を下請取引に引き写すときに、国土交通省がはっきり線を引いているルールがあります。労務単価の公表資料の冒頭に、次の一文があります(出典:前掲・労務単価公表資料)。
公共工事設計労務単価には、事業主が負担すべき人件費(必要経費分)は含まれていません。よって、下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為です。
つまり「交通誘導警備員B=16,749円だから、警備会社への支払いは1人日16,749円でよい」という計算は、国の資料が明示的に否定する読み方です。労務単価はあくまで警備員本人が受け取るべき賃金相当額であり、警備会社への支払額には雇用に伴う必要経費と企業運営の経費を載せる必要があります。
その積み上げ構造について、全国警備業協会は労務費(公共工事設計労務単価)を100%としたとき、①労務費→②事業主が負担すべき必要経費(労務費比約48%。うち法定福利費が約16%)→③一般管理費等の順に積算したものが警備員1人当たりの業務価格(工事価格)となり、これに消費税相当額を加えたものが予定価格になると解説しています(出典:前掲・全国警備業協会「警備料金の基礎知識」および同解説集)。①と②だけで止めず、③一般管理費等と消費税まで含めて初めて積算水準になる点に注意してください。
もう一つ実務で漏れやすいのが資機材です。全警協は、道路標識車やカラーコーン等の保安資機材を警備業者から建設業者へ貸し出す場合の費用は直接工事費に該当するため、警備員の人件費とは別に積算して発注者側へ請求する必要があるとしています(出典:同前)。見積書で人件費と資機材費が分かれているかは、警備の見積書の内訳の読み方で確認できます。1人日の請求単価の目安はガードマンの単価相場をご覧ください。
【チェックリスト】積算と実費の乖離を生む6つの確認ポイント
発注者・元請・警備会社の三者で認識がずれやすい点を、確認する順にまとめました。
- □ 交代要員の要否——休憩・休息時間も交通誘導を続ける現場か。続けるなら交代要員も配置人数に含めて計上されているか(平成30年度改定後のルール)
- □ 検定合格警備員(A単価)の人数——高速道路・自動車専用道路・公安委員会の指定路線か。該当するなら「場所ごとに1人以上」がA単価で計上されているか。逆に、義務のない現場で全員分をA単価にする必要はない
- □ 単価は自県のものか——労務単価は都道府県別。全国加重平均を物差しにしていないか
- □ 夜間・交替制の補正——補正が掛かるのは割増対象賃金部分だけ。「一律25%増し」で見積もっても「補正ゼロ」で見積もっても乖離が出る
- □ 資機材の計上——道路標識車・カラーコーン等の貸出費用が人件費と別立てになっているか
- □ 悪天候等で中止になった場合の扱い——積算とは別に、契約上のキャンセル条件を事前に取り決めておく(警備のキャンセル料の相場と考え方参照)
よくある質問
Q. 現場の警備員は全員、検定合格者(A単価)で積算しないといけませんか?
いいえ。検定合格警備員の配置義務は、高速自動車国道・自動車専用道路と公安委員会が指定する路線での交通誘導警備業務について「警備業務を行う場所ごとに、一人以上」です(警備業法第18条・検定規則第2条五・六の項)。それ以外の警備員はB単価で積算するのが通常で、全員をA単価にする法令上の義務はありません。
Q. 交代要員の分は、警備会社の見積に入れてもらえるのですか?
休憩・休息時間も交通誘導を行う現場であれば、国の積算基準上も交代要員を配置人数に含めて計上する扱いです(平成30年度改定)。民間工事や下請契約では自動的には決まらないため、見積依頼の段階で「休憩中も誘導を継続するか」を規制計画と合わせて伝え、交代要員の人数を明示した見積をもらうのが確実です。複数社の見積を比べる際の観点は警備の相見積もりの取り方にまとめています。
Q. 公共工事設計労務単価は民間工事の発注でも使えますか?
労務単価は公共工事の積算用に設定されるものですが、令和8年3月適用版の留意事項では、建設業法第34条第2項に基づき勧告された「労務費に関する基準」における適正な労務費の計算基礎として、公共・民間を問わず確保されるべき水準と位置づけられています。民間工事でも「賃金相当額の物差し」として使えますが、そのままの金額が請求単価になるわけではない点は本文のとおりです。警備料金全体の相場観は警備費用の相場まとめをご覧ください。
まとめ|積算ルールを知れば、見積の妥当性は自分で確かめられます
公共工事の警備員費は、①労務費は直接工事費に配置人員×日数で積み上げ、②雇用の必要経費は共通仮設費・現場管理費に計上、③交代要員は平成30年度改定から実人数で計上、④検定合格警備員は対象路線の「場所ごとに1人以上」、⑤下請代金で必要経費分を削るのは不当行為——という公的ルールで動いています。いずれも国土交通省・全国警備業協会の公開資料で原典を確認できるものばかりです。
実際に交通誘導を依頼する警備会社を探すなら、お住まいの都道府県から都道府県別の警備会社一覧で絞り込めます。どの区分の警備をどう頼めばよいか迷う場合は、【無料】警備依頼先診断で最短1分の質問に答えるだけで、依頼内容の整理から始められます。
